今週は現在大活躍中の音楽家のみなさんに、現在の自分たちと同じ年齢だった頃の師の秘蔵映像を見ていただきました。師匠のみなさんの若き日の姿に思わず見入った方も多かったのではないでしょうか。
山田和樹さんの師は「炎のコバケン」こと、小林研一郎さん。映像に登場したのは、ベートーヴェンの「第九」を指導する47歳の頃の小林さん。若々しく情熱的な指揮ぶりはまさに「炎のコバケン」ですが、話しぶりは今とあまり変わりません。「ベートーヴェンの天国の心になってやってくれる?」といった言葉をはじめ、音楽の核心に切り込んでゆくような言葉が随所に聞かれました。そんな「伝える技術」の高さは、そのまま山田さんにも受け継がれているのではないでしょうか。
挾間美帆さんの師匠は山下洋輔さん。38歳の頃の山下さんがオーケストラと初共演した貴重な映像をご覧いただきました。曲は童謡「砂山」ジャズアレンジ。とてもスリリングで、底知れないパワーが画面から伝わってきます。挾間さんが当時の師匠の姿を嬉しそうに眺めながら、「ライバル心を持って、しっかり対抗していこうと思います」と宣言してくれたのが印象に残りました。
上野耕平さんの師匠は須川展也さん。須川さんはクラシック音楽界におけるサクソフォンの第一人者。須川さんの登場でサクソフォンのレパートリーは飛躍的に広がりました。上野さんは自分が憧れていた頃の師の年齢に自身が近づいていることを「恐ろしい」と表現します。こういった感覚は師弟ならではなのでしょう。
松井秀太郎さんの師は小曽根真さん。最初の授業で小曽根さんが語った「出来ないことは宝物」という言葉から、挑戦することの大切さを学んだと言います。49歳の頃の小曽根さんが弾くショパンのノクターンはいま見ても新鮮。楽器は異なりますが、師のスピリットは松井さんの中にしっかりと息づいていることでしょう。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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