今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」ソリスト科の前編をお届けしました。プロの実践的なノウハウを伝授する「題名プロ塾」ですが、今回はさらに一歩進んだ「ソリスト科」。主役を担える新世代のヴァイオリニストを育成するための指導が行われました。
多数の応募のなかから選ばれた受講生は、木村美宇さん、和久井映見さん、加藤光貴さんの3名。今回の課題曲はそれぞれロマ音楽、ジャズ、タンゴといった世界各地の大衆的な音楽にルーツを持ちつつ、クラシック音楽の世界でも知られる作品ばかり。クラシック音楽とポピュラー音楽の垣根を超えた楽曲が選ばれています。
最初にモンティの「チャールダーシュ」を弾いてくれたのは木村美宇さん。澄んだ音色で端正に弾いてくれましたが、葉加瀬さんは冒頭のメロディにロマの哀しみを求めます。「勝手に歌詞をつけていいから歌だと思って弾いてほしい」というアドバイスを受けた後の演奏は、格段に感情を揺さぶる演奏になっていました。
「チャールダーシュ」の後半部分では和久井映見さんがとても速いテンポで小気味よい演奏を披露。しかし葉加瀬さんはこのテンポを後にとっておけばよいとアドバイス。そして、音楽が転がらないようにするためのコツを提案します。アドバイス後の演奏のほうが、ぐっと引き込まれる音楽になっていました。
ガーシュインの「アイ・ガット・リズム」では、題名プロ塾第2弾にも出演した加藤光貴さんが再度のチャレンジ。とてもカッコよく弾いてくれたのですが、葉加瀬さんは、もともとこの曲についている歌詞に着目して、言葉のリズムを反映させるように求め、さらに説得力のある演奏を引き出します。「原曲の歌詞にはヒントが山のようにある」と教えてくれました。
ピアソラの「リベルタンゴ」では3人そろっての指導が行われました。三者三様の個性があらわれていましたが、葉加瀬さんの指導によって、3人がどんどんと変わっていく様子がよくわかります。次回は3人のなかから「首席」が選ばれることに。いったい誰が選ばれるのか、楽しみです。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)