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新しいクラシックの音楽会2025秋

投稿日:2025年11月01日 10:30

 今週はヴァイオリニストの廣津留すみれさんおすすめの「新しいクラシック音楽」をお届けしました。クラシックというと、どうしても何百年も前の作曲家の名前が思い出されますが、現在も多くの作曲家たちが新作を生み出しています。
 最初に演奏されたのは、アイスランドの作曲家オーラヴル・アルナルズによるNear Light(ニア・ライト)。抒情的な曲想から淡いノスタルジーが漂ってきました。曲の終わり方も、ふっと宙に消えるようで余韻が残ります。アルナルズはハードコア/メタルバンドのドラマーとして活躍した経歴を持ち、ポスト・クラシカルの旗手とみなされている音楽家です。伝統楽器によるアコースティックなサウンドにエレクトロニカの手法を融合させたポスト・クラシカルは、近年の一大潮流となっています。クラシックの老舗レーベルであるドイツ・グラモフォンがアルナルズらポスト・クラシカルのアーティストたちと契約していることからも、その注目度の高さがわかります。
 2曲目はアメリカの作曲家フィリップ・グラスによるEchorus(エコラス)。フィリップ・グラスは音楽界のレジェンドといえるような存在です。ミニマル・ミュージックの分野で先駆的な役割を果たし、クラシックのみならずロックやポップスの分野においても続く世代に多大な影響を与えています。Echorusという曲名はecho(エコー、こだま)に由来するのだとか。廣津留さんと和久井映見さんのおふたりが息の合ったところを見せてくれました。ゆったりとした反復的な楽想が静かな高揚感を生み出していました。
 おしまいはアメリカのジェレミー・キトルによるThe Boxing Reels(ザ・ボクシング・リールズ)。リールとはスコットランド/アイルランドの伝統舞曲の一種。カントリー風、フォーク風のテイストがあり、楽器編成も自由なら曲の長さも自由という楽曲です。開放的な気分で楽しむことができました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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絵画から生まれた合唱曲を楽しむ音楽会

投稿日:2025年10月25日 10:30

 今週は三善晃と間宮芳生の合唱曲を水戸博之指揮東京混声合唱団のみなさんによる演奏でお届けしました。ともに絵画に由来する作品という共通項を持っています。
 三善晃作曲の合唱組曲「クレーの絵本」は全5曲からなり、それぞれがパウル・クレーの絵画に紐づけられています。クレーは音楽一家に育ち、幼少時よりヴァイオリンを学んで音楽家を目指すほどの腕前でした。そんなこともあってか、よくクレーの絵画は音楽的だと言われます。
 といっても、この曲の場合、三善晃がクレーの絵画に直接的に触発されたのではなく、まず詩人の谷川俊太郎がクレーの絵画を題材に詩を書いて「クレーの絵本」を作り、その谷川の詩に三善が曲を付けるという経緯をたどっています。少し珍しい形で画家、詩人、作曲家のコラボレーションが実現しました。
 今回、この組曲から取り上げられたのは「階段の上の子供」「幻想喜歌劇『船乗り』から格闘の場面」「黄色い鳥のいる風景」の3曲。絵画に詩と音楽が加わることで一段と作品世界が広がったように感じます。音楽ファンにとって気になるタイトルは「幻想喜歌劇『船乗り』から格闘の場面」でしょう。あたかも「船乗り」というオペラがあるのかと思ってしまいますが、一般的なオペラのレパートリーにそのような作品は見当たりません。クレーにとっての想像上のオペラなのか、あるいは世に広く知られていないオペラがあったのか、そのあたりは判然としませんが、想像力を刺激する絵画です。
 間宮芳生作曲の合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画」は全4楽章からなる作品。本日はフィナーレの第4楽章をお届けしました。合唱が大笑いして始まる冒頭はインパクト抜群。作曲者は「ハヤシコトバによる構成という原則をとりながら、声と音の身振りによって可笑しさ、わらいをあらわす」ことに取り組んだといいます。宴、あるいは儀式を思わせる表現から、爆発的な生のエネルギーが伝わってきます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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16歳のトランペット奏者・児玉隼人の音楽会

投稿日:2025年10月18日 10:30

 今週はいま熱い注目を集める16歳のトランペット奏者、児玉隼人さんをお招きしました。昨年5月に「未来への扉!ニュースターの音楽会」でご紹介した児玉隼人さんですが、さらなる飛躍を遂げて、活動の場が一段と広がっています。2024年の第39回日本管打楽器コンクールトランペット部門では全部門を通じて史上最年少で優勝を飾り、今年はソロ・アルバムをリリース。現在はドイツに渡り、世界的トランペット奏者であるラインホルト・フリードリヒに師事。先生の家に住み込みで学んでいるというお話にもびっくりしましたが、その家が築500年以上のお城のような住居だといいますから驚きます。
 今回はトランペットのソロ、チェロとハープとの共演、金管五重奏と多彩な編成による楽曲をお届けしました。
 1曲目はジェルヴェーズ作曲、モーリス・アンドレ編曲による「アルマンド」。曲名は「ドイツ風」の意。バロック期の組曲によく使われた舞曲を指しています。澄んだ明るい音色から古雅な雰囲気が伝わってきました。
 2曲目はテオ・シャルリエの「36の超絶技巧練習曲」より第2番。愁いを帯びた曲想がノスタルジーを喚起します。「超絶技巧練習曲」の題にもかかわらず、技巧を感じさせない自然体の音楽になっているのがすばらしいと思いました。
 3曲目のラフマニノフ「ヴォカリーズ」の原曲は歌曲です。ヴォカリーズとは歌詞を用いない母音唱法のこと。さまざまな楽器のために編曲されている名曲ですが、今回はトランペット、チェロ、ハープという珍しい編成で。それぞれの楽器の持ち味が発揮された陰影豊かなラフマニノフでした。
 最後のアーノルドの金管五重奏曲第1番は、金管五重奏の定番曲。全曲のフィナーレである第3楽章を、10代の仲間たちと共演してくれました。みんな本当にうまい! 途中の「ヒソヒソ話」の部分がおもしろいですよね。小気味よく軽快で、金管五重奏ならではの爽快さがありました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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3曲でクラシックがわかる音楽会~フルート編〜

投稿日:2025年10月11日 10:30

 今週はシリーズ企画「3曲でクラシックがわかる音楽会」のフルート編。伊集院光さんを聞き手にお招きして、多久潤一朗さん、神田勇哉さん、梶原一紘さんにフルートの魅力がわかる3曲を演奏していただきました。
 冒頭に演奏されたのはビゼーの組曲「アルルの女」より「メヌエット」。フルートとハープの組合せは絶妙です。今回は多久さんの編曲でアルトフルート、バスフルートまで加わり、多彩なフルートの音色を楽しむことができました。
 ドビュッシーの「シランクス」は、本来は独奏フルートのための作品。こちらも多久さんによるハープとフルート3人のための編曲でお届けしました。耳なじみのよい曲ではありませんので「知らんくす」と言われても仕方のないところではありますが、フルート奏者にとっては超重要レパートリー。題のシランクスとは、ギリシャ神話に登場する美しいニンフの名に由来します。牧神パンに追いかけまわされたシランクスが、逃げ場を失って川のほとりで葦に姿を変えたところ、パンはその葦で笛を作りました。これがパンの笛、別名シランクス(シュリンクス)と呼ばれます。曲調からほのかな官能性と気だるさが伝わってきます。
 それにしてもコントラバスフルートの大きさと音の低さにはびっくりしました。他の木管楽器とはまた違った深みのある音色がします。フルートというと高い音を出す楽器というイメージですが、こういった低い音を出す楽器もあるんですね。
 チャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」に登場する「あし笛の踊り」もフルートが活躍する代表的な名曲です。今回の編曲ではフルートの音色がひとつに溶け合うところが聴きどころ。とても爽やかな「あし笛の踊り」になっていました。
 おしまいはリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」。本来はオペラ「サルタン皇帝の物語」の一場面で使われる曲だったのですが、今ではオペラ本体はめったに上演されず、もっぱら「熊蜂の飛行」のみが「速弾きの曲」として人気を博しています。すごい速さで熊蜂が飛んでいました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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7拍子でもっと楽しくなる音楽会

投稿日:2025年10月04日 10:30

 今週はタブラ奏者のユザーンさんをお招きして、7拍子の魅力について教えていただきました。以前にもユザーンさんをゲストにお招きして5拍子を特集しましたが、今回は7拍子。5拍子以上になじみの薄い拍子だと思います。
 拍子は強弱を伴う拍の周期的な連なりから生まれます。多くの曲は2拍子、3拍子、4拍子といった拍子で書かれているのですが、まれに5拍子や7拍子で書かれた曲があります。5拍子の有名曲といえば「テイク・ファイブ」や「ミッション・インポッシブル」(スパイ大作戦)のテーマ。それに比べると、7拍子でだれもが知っている曲はなかなか見当たりません。
 「7拍子を使った世界でいちばん有名かもしれない曲」とU-zhaanさんが語るのは、ビートルズ「愛こそはすべて」。前に「つんのめる」ような感覚があって、おもしろいですよね。スピッツの「美しい鰭」でも、7拍子の部分は「つんのめる」ようになっています。7拍目の後に1拍休符が入れば普通の曲になるのでしょうが、そこで休みが入らずに次に進むことで、背中を押されているような気分になります。ちなみにクラシックでは、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番の終楽章が7拍子で書かれた曲として知られています。楽章の頭からおしまいまで、ずっと7拍子が続くのですが、尋常ではない緊迫感があります。
 U-zhaanさんのお話で驚いたのは、7拍子の裏拍(バックビート)でノるというお話。7拍子の裏拍と言われても、いったいどこなのかと思いますよね。2拍目、4拍目、6拍目、7拍目で手を打てばいいのだとか。6拍と7拍で連続するところで、すっきりした気分になれます。
 おしまいの「ラーガ・ヤマン」は、インド伝統音楽における7拍子の定番曲なのだとか。ゆったりと、たゆたうように始まって、次第に熱を帯びて高揚していく様子がすばらしいと思いました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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“ニュー・クラシック”を演奏する音楽会

投稿日:2025年09月27日 10:30

 近年、映画やゲームのために書かれた音楽が、単独の楽曲としてくりかえし演奏される例が増えてきたように思います。もともとの映画やゲームが発表されてから時間が経っても、音楽はずっと演奏され続けている……となれば、これは一種のクラシックでは。番組ではこういった新たな名曲を「ニュー・クラシック」と呼びたいと思います。今週はギターの村治佳織さんと、フルートのCocomiさんに、お気に入りの「ニュー・クラシック」を演奏していただきました。
 1曲目は植松伸夫作曲のゲーム「ファイナルファンタジーX」より「ザナルカンドにて」。これは名曲ですよね。ゲームファンの間で名高いばかりではなく、「ファイナルファンタジーX」をプレイしたことがなくとも聴いたことのある方は少なくないでしょう。ノスタルジックな曲調はギターにもぴったり。最初からギターのために書かれた曲なのかと思ってしまうほどです。
 2曲目はヤン・ティルセン作曲の映画「アメリ」より「ある午後のかぞえ詩」。2001年公開のフランス映画「アメリ」は日本でも社会現象といえるブームを引き起こしました。音楽を担当したヤン・ティルセンは映画音楽の作曲家ではなく、ジャンルにとらわれない活動をする音楽家です。「ある午後のかぞえ詩」はピアノ学習者にも人気が高く、映画音楽の枠を超えた名曲となっています。
 3曲目はグスターボ・サンタオラヤ作曲のゲーム「The Last of Us」より「メインテーマ」。2013年発売のパンデミックにより崩壊した世界を舞台としたサバイバルアクションゲームのために書かれました。儚く切ない曲想が心にしみます。
 おしまいはベンジ・パセク&ジャスティン・ポール作曲の映画「グレイテストショーマン」より「タイトロープ」。2017年製作のミュージカル映画です。メロディはのびやかで流麗なのですが、どこか寂しげで、内省的な雰囲気をまとっているところが印象に残りました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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葉加瀬太郎が“坂本龍一”を弾く音楽会

投稿日:2025年09月20日 10:30

 今週は葉加瀬太郎さんが「僕にとってのアイドル」と語る坂本龍一の作品を演奏してくれました。ピアニストでもあった坂本龍一の作品をヴァイオリニストの葉加瀬さんが演奏するのは少し意外にも感じましたが、葉加瀬さんは「生前に彼自身が演奏していたものとは違う形になって、後世に残ってよいのではないか。現代におけるクラシック音楽ととらえたい」と語ります。
 クラシック音楽の作曲家たちもかつては自分で自分の作品を演奏していました。バッハもモーツァルトもベートーヴェンも、基本的には自分が演奏するために曲を作ったのです。しかし、作曲者が世を去った後も、残された作品を他人がさまざまなスタイルや解釈でくりかえし演奏することで、これらはやがて「クラシック音楽」になりました。今後、坂本龍一作品も多くのアーティストが演奏を重ねることで、新たなクラシック音楽とみなされるようになるのではないでしょうか。
 1曲目は「energy flow」。「ブラームスの弦楽四重奏のような」というお話があったように、4人の弦楽器奏者が繊細に絡み合いながら、しっとりとした情感豊かな音楽を紡ぎ出します。ラヴェルを思わせるようなフランス音楽の要素も感じられますね。
 2曲目は映画「ザ・シェルタリング・スカイ」のテーマ。ヴァイオリンと箏とクラリネットという意外性のある組み合わせで、幻想的で儚い世界を描き出します。クラリネットの寂しげな表情が印象的でした。
 3曲目は「TANGO」。タンゴと題されていますが、実際にはボサノヴァ調の楽曲。ヴァイオリンとチェロとアルトフルートが歌のパートを担当しました。ソロ楽器の対話が心地よく落ち着いたムードを作り出します。
 4曲目は「andata」。今回は弦楽四重奏にインドネシアのガムラン、シンセサイザーが加わって、西洋と東洋、過去と現代を結びつける実験的な試みが行われました。ガムランが見知らぬ土地へと誘ってくれるかのようでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2025 後編

投稿日:2025年09月13日 10:30

 今週は先週に続きまして、年に一度のスペシャル企画「夢響」の後半をお届けしました。オーディションを通過した4名が、田中祐子さん指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との共演を果たしました。
 テノールの大塚敦司さんは1990年のワールドカップ決勝戦前夜に開かれた「三大テノール」をきっかけに、オーケストラと共演する夢を持ったと言います。曲はパヴァロッティが得意としたプッチーニの「誰も寝てはならぬ」。パヴァロッティは甘く輝かしい声で一世を風靡しましたが、大塚さんも甘い声の持ち主ですよね。オーケストラの分厚いサウンドと一体となった、堂々たる歌唱でした。
 フルートの小針梓さんは、子育てでいったん離れていた音楽活動に復帰して、オーケストラと共演する夢をかなえました。仕事と家庭を両立させながら音楽に向き合う姿に共感した方も多いのではないでしょうか。曲はハチャトゥリアンのフルート協奏曲の第1楽章より。冴え冴えとして詩情豊かなフルートのソロを披露してくれました。
 立花輝さんは指揮に挑戦。高校の吹奏楽部でクラリネットと指揮を担当しているそうですが、オーディションではピアノも弾いてくれました。指揮は相手がいなければ本当の練習はできませんので、楽器や歌とは違った難しさがあったと思いますが、自信を持った指揮ぶりでプロのオーケストラを引っ張ってくれました。曲はマーラーの交響曲第1番「巨人」の第4楽章より。この部分はカッコいいですよね。勢いのあるサウンドが出てきました。
 チェロの松村皐生さんは9歳。フォーレの「エレジー」をのびのびと演奏して、自分の音楽を奏でてくれました。わずか9歳とは思えない立派な演奏で、クライマックスの部分では胸がいっぱいになりました。
 全員がすばらしかったので、今回の審査はひとりに絞るのが難しかったと思いますが、スペシャル・ドリーマー賞は、指揮に挑戦した立花輝さんに決まりました。立花さん、おめでとうございます!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2025 前編

投稿日:2025年09月08日 13:12

 今週は先週のオーディション編に続きまして、年に一度のスペシャル企画「夢響」の前編の模様をお届けしました。オーディションを通過した参加者たちが、ついに田中祐子さん指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との共演を果たします。
 トップバッターはピアノの春木穏流さん。まだ小学4年生です。昨年の参加者、久保壮希さんが客席からエールを送ってくれました。ふたりの友情が熱い! 曲は清塚信也さん作曲の「Brightness」より。みずみずしく高揚感にあふれた音楽が紡ぎ出されました。
 2番手はホルンの山路樹里さん。小中学校ではトランペットを吹いていたのに、高校では定員オーバーで、くじ引きでハズレをひいたことがホルンとの出会いになったとか。今ではホルンは自らの分身だといいます。応援団には師匠である元東京響楽団ホルン奏者の大和田浩明さんの姿も。曲はリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番の第1楽章より。この曲はホルン奏者の憧れの曲でしょう。冒頭のファンファーレ風主題がカッコよかったですよね。
 3番手はオーボエの伊藤由貴さん。ベルリン・フィル入団という大きな夢を抱いての参加です。現在は高校3年生。来年はドイツの大学に進学するといいますから、すごいですよね。送り出す親御さんの姿に、子を応援する気持ちや心配する気持ちなど、いろいろな思いが滲み出ていたと思います。曲はハイドンのオーボエ協奏曲の第1楽章より。のびやかで生き生きとしたソロを披露してくれました。本当にすばらしい演奏でした。
 4番手はピッコロの小松有更さん。赤いベストがきまってました。「大好きな曲」というハチャトゥリアンのフルート協奏曲(原曲はヴァイオリン協奏曲)の第3楽章に挑戦。ピッコロによる演奏でこの曲を聴いたのは初めてでしたが、軽快にして爽やか。この曲の新しい魅力を発見した思いです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2025 オーディション編

投稿日:2025年08月30日 10:30

 オーケストラと共演する夢をかなえる「夢響」が今年も開催されます。今回はそのオーディションの模様をお届けしました。オーディションには書類選考により選ばれた約100名が参加。審査員はチェリストの宮田大さんと指揮者の田中祐子さんです。オーディションの結果、8名の合格者が選ばれました。
 偶然ですが、フルートの小針梓さんとピッコロの小松有更さんが選んだのは、ハチャトゥリアン(ランパル編曲)のフルート協奏曲。この曲、原曲はヴァイオリン協奏曲ですが、名フルート奏者ランパルの編曲でフルート協奏曲としても親しまれています。フルートの小針さんは第1楽章、ピッコロの小松さんは第3楽章を演奏します。
 ホルンの山路樹里さんが選んだのは、リヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第1番。この曲は本当にカッコいいですよね。第1楽章の冒頭はしびれます。
 歌の大塚敦司さんが選んだのはプッチーニの「だれも寝てはならぬ」。パヴァロッティに憧れての選曲ですが、よくわかります。パヴァロッティの「だれも寝てはならぬ」は最高でした。
 チェロの松村皐生さんは小学3年生。フォーレの名曲「エレジー」を演奏してくれました。この大人びた選曲からしてすばらしいのですが、演奏からも熱い気持ちが伝わってきます。
 オーボエの伊藤由貴さんは高校3年生。オーボエは難しい楽器の筆頭格に挙げられますが、「難しい楽器というイメージは持っていない」と語ってくれました。見事な音色でした。
 ピアノの春木穏流さんは小学4年生。昨年は観客席で久保壮希さんの応援団を務め、今回は自身が「夢響」に参加することになりました。今までにない熱い展開です。
 指揮でエントリーしたのは高校2年生の立花輝さん。審査の田中さんのリクエストにこたえて、ピアノでリストの超絶技巧練習曲第1番を弾いたことで、道が開けました。音源に合わせて指揮棒を振るだけではわからない、音楽への向き合い方が伝わったのでしょう。夢の実現まで、あとわずかです!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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