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60周年記念企画③反田恭平・小林愛実・務川慧悟豪華共演! 3台ピアノの音楽会

投稿日:2024年06月15日 10:30

 今週は反田恭平さん、小林愛実さん、務川慧悟さんをお招きして、3台ピアノの音楽会をお送りしました。
 反田恭平さんと小林愛実さんのおふたりが共演するのは、ご結婚後、これが初めてだとか。最初に演奏してくれたのはシューマンの「小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品」より第12曲「夕べの歌」。本当に息の合ったピアノで、反田さんと小林さんが音で対話を交わしているような演奏でした。
 反田さんから見た小林さんは「自分の世界観を持った音楽家」。これには納得。小林さんの揺るぎないパーソナリティは聴衆にも伝わっていると思います。一方、小林さんから見た反田さんは「いつまでも少年っぽい音楽家」。おもしろい表現ですよね。その少年っぽさが音楽家としての反田さんの飽くなき探求心につながっているのかもしれません。
 続いて演奏されたのはモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」の第3楽章。モーツァルトはたくさんのピアノ・ソナタを書いていますが、2台のピアノのために書いた完成作はこの一曲のみ。「のだめカンタービレ」で主人公のだめと千秋がこの曲を演奏したことから、一段と広く知られるようになりました。この分野の貴重な傑作です。軽快で歯切れ良く、生命力にあふれたモーツァルトでした。
 務川慧悟さんは2012年の日本音楽コンクールで反田さんと並んで第1位を獲得。以来、反田さんとは同世代の盟友として信頼関係を築いています。反田さん、小林さん、務川さんによる3台ピアノで演奏したのは、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。この曲は、まず2台ピアノのための作品として作曲され、続いてオーケストラ版が作られました。構想時からブラームスはオーケストラの響きを念頭に置いていたようです。今回は3台ピアノという珍しい編成による演奏でしたが、シンフォニックでスケールが大きく、オーケストラ版をほうふつとさせました。フィナーレは壮麗でしたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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60周年記念企画③夢を実現する反田恭平の音楽会

投稿日:2024年06月08日 10:30

 今週は番組60周年記念企画第3弾といたしまして、ピアニスト、指揮者、経営者として、まさにボーダーレスな活躍をくりひろげる反田恭平さんをお招きいたしました。
 共演は反田さん自身が創設したジャパン・ナショナル・オーケストラ。オーケストラを運営するだけでも十分に大変なことですが、反田さんの真の目標は、30年後に音楽学校を設立することだと言います。オーケストラはそのための第一歩にすぎません。これまでにも反田さんは、海外から日本に留学してくるようなレベルの高い学校を作りたいという願いをたびたび口にしてきました。きっと夢を現実にするには、こういったロードマップを描いて、それを公言することが大切なのでしょう。これまでにも次々と夢を実現してきた反田さんだけに言葉に重みがあります。
 今回、反田さんとジャパン・ナショナル・オーケストラが演奏したのは、モーツァルトとシュトラウス・ファミリーの音楽。ともに近年の反田さんが力を入れるウィーンの音楽です。モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の第3楽章では、ピアノと指揮を兼ねる「弾き振り」を披露してくれました。以前、同じ曲を番組で反田さんが演奏してくれたことがありましたが、そのときはピアノの演奏のみに留まっていましたので、今回は指揮者としても活動し、音楽家としての幅を一段と広げた反田さんの姿を目にすることができました。終盤のピアニストのみが演奏するカデンツァの部分は、前回と同様、往年の巨匠ベネデッティ・ミケランジェリの演奏に基づいています。第2楽章の主題が引用されるところが素敵ですよね。
 おしまいに演奏されたポルカ・シュネル「小さな年代史」の作曲者はエドゥアルト・シュトラウス。有名なヨハン・シュトラウス2世の弟にあたります。とても珍しい曲でしたが、軽快かつ優美で、ウィーンの香りがふわりと漂ってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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新世代のイチ推し!新しいクラシックの音楽会

投稿日:2024年06月01日 10:30

 今回は宮田大さんと服部百音さんがおすすめする「新しいクラシック」をお楽しみいただきました。クラシック音楽を聴いているとつい忘れがちですが、どんな名曲であっても作曲された当時は最新の音楽だったはず。今回、演奏された曲は、いずれも現代の作曲家たちによる作品で「新しいクラシック」と呼ぶにふさわしい魅力を放っていたと思います。
 1曲目はノルウェー出身のラルフ・ラヴランド作曲の「ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン」。宮田大さんが「明るくも暗くも聞こえる」とお話ししていたように、さまざまなニュアンスに富んでいます。情感豊かで、初めて聴く人にも懐かしさを感じさせます。
 2曲目はポーランドのヴォイチェフ・キラル作曲の「オラヴァ」。キラルはポランスキー監督の「戦場のピアニスト」やコッポラ監督の「ドラキュラ」など、映画音楽の世界で成功を収めていますが、クラシックの分野にもたくさんの作品を残しています。この「オラヴァ」や交響詩「クシェサニ」などが、すでに日本のオーケストラでも演奏されており、まさに「新しいクラシック」と言ってよいでしょう。「オラヴァ」は躍動感にあふれて爽快。聴いていて広大な風景が目に浮かんでくるかのよう。
 3曲目はブラジルのハダメス・ニャタリ作曲の「チェロとギターのためのソナタ」第1楽章より。この曲はチェロとギターという楽器の組合せが斬新です。ラテン的なムードが色濃いのですが、即興部分が入るなど、先の予測がつかないおもしろさがありました。
 4曲目はトルコのファジル・サイによる「クレオパトラ」より。世界的ピアニストとして知られるサイですが、作曲活動も活発です。「クレオパトラ」は国際ヴァイオリン・コンクールの課題曲として委嘱されました。超絶技巧を用いたエキゾチックな楽想がイマジネーションを刺激します。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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川を感じるクラシック名曲の音楽会

投稿日:2024年05月25日 10:30

 今週は大井駿さん指揮による東京フィルの演奏で、川にまつわる名曲をお届けしました。大井さんによれば、当時のヨーロッパの人々にとって川は身近な存在で、飲料水を得るための生命線でもあったと言います。そのためか、クラシック音楽の名曲には川を題材にした曲が少なくありません。今回演奏されたベートーヴェンの「田園」とスメタナの「モルダウ」以外にも、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」やシューマンの交響曲第3番「ライン」、シューベルトの「冬の旅」や「ます」等々。
 ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」で描かれるのは自然の光景。第2楽章は「小川の情景」という標題が添えられています。弦楽器がさらさらと流れる小川を表現し、さらには小鳥の鳴き声も登場します。フルートがナイチンゲール、オーボエがウズラ、クラリネットがカッコウを模倣する場面は、まるで音の森林浴。散歩を日課としていたベートーヴェンにとって、自然がもたらす喜びは創作力の源になっていたのでしょう。
 ベートーヴェンが描いたのはごく小さな川でしたが、スメタナは交響詩「モルダウ」で大河を表現しました。山奥のふたつの源流が合流して、だんだんと大きな川になる様子が雄大なサウンドで表現されています。狩のホルンが聞こえたり、結婚式の踊りの音楽が登場したり、とても描写的な曲です。この曲は合唱曲としても親しまれていますし、さまざまな形でカバーされていますので、耳なじみのある方も多いのではないでしょうか。
 スメタナはチェコ国民楽派の創始者として知られる作曲家です。代表作は連作交響詩「わが祖国」。祖国の伝説や自然が題材になった全6曲からなる大曲で、その第2曲が「モルダウ」です。建国にまつわる神話や英雄たちの戦いなどと並んで、モルダウ川(ヴルタヴァ川)がとりあげられているのですから、川がその土地にとって大切なシンボルであることがよくわかります。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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「60周年記念企画②夢の対談が実現した音楽会」後編

投稿日:2024年05月18日 10:30

 今週は先週に続いて番組60周年記念企画第2弾といたしまして、「ボーダーレス」をテーマにピアニストの藤田真央さんと宇宙飛行士の野口聡一さんの対談をお送りいたしました。これから目指す道や人生観などについて、興味深いお話がいくつもあったと思います。
 藤田さんの言葉でとりわけ印象的だったのは、コンクールとのかかわり方。「いい意味でも悪い意味でも、典型的な演奏をしなければコンクールでは賞を獲れない」というお話がありました。中立的な採点が求められるコンクールの場では、どうしてもそうなってしまうのでしょう。しかし、藤田さんは20歳でチャイコフスキー国際コンクールの第2位を獲得しましたので、早い段階から今までになかった解釈での演奏にも取り組むことができるようになったと言います。「1小節1音ずつ考えることがいちばん重要」と語っていたように、真摯に楽譜に向き合う藤田さんの姿勢が、コンクール後の輝かしいキャリアの原動力になっているにちがいありません。
 野口さんのお話では宇宙飛行士ならではの「ボーダーレス」への視点がおもしろかったですよね。国ではなく大陸で人種を見るようになりアジア人としての自分を意識するようになったと言います。やがて人類が他の星に行くと、「地球人っぽい」という感覚が生まれるかもしれないという指摘には夢を感じました。
 藤田さんが演奏してくれたのは、セヴラック作曲の「セルダーニャ~5つの絵画的練習曲」より第2番「祭り(ピュイセルダの思い出)」。セヴラックはフランスの作曲家ですが、パリを中心とする楽壇からは距離をとり、生涯の大半を南フランスで過ごしました。南仏の土地に根差したローカル色豊かな作風が特徴とされています。セヴラックはスペインの作曲家アルベニスに師事し、両者は深い友情で結ばれていました。楽譜中でアルベニスとその娘について言及されるのは、そんなふたりの作曲家の結びつきがあったからなんですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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60周年記念企画②夢の対談が実現した音楽会〜前編

投稿日:2024年05月11日 10:30

 今週は番組60周年記念企画の第2弾といたしまして、ボーダーレスをテーマにピアニストの藤田真央さんと宇宙飛行士の野口聡一さんによる対談をお送りいたしました。国境を超えて世界中で活躍する藤田さんと、地球を飛び出し、日本人として宇宙でもっとも長い滞在時間を過ごした野口さん。まさにボーダーレスなおふたりです。
 5年前、モスクワで開催されたチャイコフスキー国際コンクールで藤田さんが第2位を獲得した際に、プライベートで会場を訪れていたという野口さん。本当に音楽が大好きな様子が対談から伝わってきました。宇宙飛行士から見たホルストの組曲「惑星」のお話がおもしろかったですよね。ホルストの作品では「火星」が激しく闘争的な曲調で、「木星」が穏やかで優しい曲調で描かれていますが、実際の惑星の姿はむしろ逆だと言います。たしかに火星の地表の写真を思い出してみると、砂漠のような荒れ地が広がるばかりで、静かな印象がありました。なにしろホルストがこの曲を書いたのは1916年のことですから、惑星が現実の姿よりも占星術的なイメージにもとづいて描かれるのは自然なことでしょう。
 藤田さんが演奏してくれた一曲目は、野平一郎作曲による「音の旅」より「舞踏会にて」。野平一郎さんは現在の日本を代表する作曲家のひとりです。パリ国立高等音楽院に学び、現代音楽の世界で国際的な活動をくりひろげています。そんな野平さんが、こどものためのピアノ曲集として作曲したのが「音の旅」。藤田さんが楽しそうに演奏している姿が印象的でした。
 二曲目はシューマンの大傑作、「クライスレリアーナ」の第5曲。曲名はE.T.A.ホフマンの著作に登場する「楽長クライスラー」に由来し、シューマンはこの架空の人物に結婚問題で苦しむ自分自身の姿を重ね合わせていました。
 最後の曲は藤田さん得意のモーツアルト。隅々まで生気にあふれた演奏で、ずっと聴いていたくなります。まさに「天衣無縫」という言葉がぴったりですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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未来への扉!ニュースターの音楽会2024

投稿日:2024年05月04日 10:30

 今週は注目の若手音楽家をいち早くご紹介するシリーズ企画の第2弾。ヴァイオリニストの東亮汰さんとトランぺッターの児玉隼人さんをゲストにお招きしました。
 東亮汰さんは現在24歳。2019年の第88回日本音楽コンクールで第1位を獲得しました。昨年、メジャー・デビューとなるアルバム「Piacere~ヴァイオリン小品集」をリリース。アニメ「青のオーケストラ」で主人公のヴァイオリンの吹き替えを担当したことでも話題を呼びました。
 東さんによるラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」第18変奏は情感豊か。原曲はピアノ曲ですが、ヴァイオリンで聴いても、やはりすばらしいですね。ブラームスのヴァイオリン協奏曲は日本音楽コンクールで第1位を獲得した際の演奏曲。気迫のこもったソロでオーケストラとともに雄大な音楽を紡ぎ出します。つややかで輝かしいヴァイオリンの音色も印象に残りました。
 極度のあがり症という東さんの秘策は、「本番前に全力ダッシュして心拍数を上げる」。いったん上げてしまえば、あとは自然に下がるだけという逆転の発想です。機会があったら試してみてもいいかも?
 児玉隼人さんは14歳のトランペッター。なんと小6で初のソロ・リサイタルを開き、オーケストラとの共演は10回を超えるというのですから驚きです。故郷の釧路で世界的トランぺッターのアンドレ・アンリが演奏会を開いた際に、楽屋を訪れて演奏を聴いてもらったことが運命の出会いとなりました。特定の先生につかず、ふだんはYouTubeを参考にして練習をしているというお話にもびっくりしました。
 久石譲作曲「天空の城ラピュタ」の「ハトと少年」では爽快な音色を堪能させてくれました。フンメルのトランペット協奏曲はトランペット奏者には欠かせないレパートリー。テクニックを要求される曲ですが、児玉さんの演奏はすこぶる軽快。晴れ晴れとした気分にしてくれます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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温泉地で生まれたクラシック名曲の音楽会

投稿日:2024年04月27日 10:30

 今週は温泉地で生まれたクラシックの名曲をお届けしました。温泉と聞くと、日本の温泉街のイメージが強いのですが、ヨーロッパにも温泉保養地がたくさんあるんですね。これらの温泉の多くは、上流階級の人々や文化人が長期滞在する社交場として発展してきました。モーツァルトが残した手紙には、奥さんのコンスタンツェが湯治に出かけていてたくさん費用がかかって大変だといった記述が残されています。
 ヘンデルやベートーヴェンが好んだ温泉地を実際に体験してきたのが、ピアニストで指揮者の大井駿さん。温泉地から生まれた4曲を演奏してもらいましたが、気のせいでしょうか、どの曲もとても心地よく、体がリラックスできたように感じられます。
 ヘンデルがドイツのアーヘンで療養した直後に作曲したのは歌劇「セルセ」。このオペラのなかでもっとも広く知られている曲が「オンブラ・マイ・フ」(懐かしい木陰よ)です。テレビCMなど、いろいろな機会で耳にする名曲です。高野百合絵さんの伸びやかで温かみのある声に癒されました。
 ベートーヴェンも好んで温泉地に滞在した作曲家です。保養地バーデン・バイ・ウィーンに滞在して作曲したのが、後期の大傑作、弦楽四重奏曲第13番。今回は第5楽章の「カヴァティーナ」をほのカルテットのみなさんに演奏していただきました。ほのカルテットは昨年、室内楽の国際的な登竜門として知られる大阪国際室内楽コンクールで第2位を獲得して注目を浴びています。気鋭のカルテットによる入魂の演奏でした。
 ショパンのマズルカ作品67-1はチェコの温泉地カルロヴィ・ヴァリで書かれた作品。故郷を離れてパリで暮らしたショパンは、ここで両親と久々の再会を果たしました。
 プッチーニが通った温泉はイタリアのモンテカティーニ・テルメ。ここでオペラ「ラ・ボエーム」の一部が作曲されたといいます。「ラ・ボエーム」では貧しい若者たちの悲恋が描かれていますが、プッチーニはずいぶんリッチな環境で曲を書いてたんですね……。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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3曲でクラシックがわかる音楽会〜ショパン編〜

投稿日:2024年04月20日 10:30

 今週は「3曲でクラシックがわかる音楽会」シリーズの第2弾。第1弾のモーツァルト編に続いて、ショパン編をお届けしました。ゲストの伊集院光さんもおっしゃるように、ショパンといえばピアノ。ショパンはよく「ピアノの詩人」と呼ばれますが、作品の大半がピアノ曲である点で、大作曲家たちのなかでも異彩を放っています。ショパン国際ピアノ・コンクールで第4位を獲得した小林愛実さんが、ショパンが「ピアノの詩人」と呼ばれるゆえんを解説しながら、3曲を演奏してくれました。
 一曲目はノクターン第20番(遺作)。作曲者の死後に出版されたので「遺作」と記されていますが、若き日に書かれた作品です。小林さんは装飾音の使い方に、ショパンの「ピアノの詩人」らしさを感じるといいます。比較のために、もしも装飾音がなかったらどうなるかを演奏してくれましたが、たしかに音楽のキャラクターがまったく違ってきます。繊細な感情表現のために装飾音が欠かせないことがよくわかりますよね。
 二曲目は「24の前奏曲」から第17番。ここでの注目点は和声。和声の複雑化がメロディの厚みをもたらしていると言います。メロディを内側で支える内声の大切さが説明されていましたが、こういったお話を聴くと、ふだんよりも左手に注目して曲を聴こうという気持ちになります。メロディと内声の絡み合いがニュアンスに富んだ表現を生み出していました。
 三曲目は晩年の傑作、「幻想ポロネーズ」。一曲目にあった装飾音の要素と二曲目にあった複雑な和声の両方がきわめられた集大成的な作品として、この曲が選ばれました。テロップで解説されていたように、小林さんはこの曲を、ショパンが人生を振り返る曲として解釈しています。ノスタルジーを喚起する曲想ですが、その向こう側に大きなドラマがあることが演奏からも伝わってきたのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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60周年記念企画①角野隼斗「ラプソディ・イン・ブルー」の音楽会

投稿日:2024年04月13日 10:30

 「題名のない音楽会」は今年放送60周年を迎えます。60周年を記念したシリーズ企画のキーワードは「ボーダーレス」。今週はその第1弾として、ボーダーレスな活動を展開する角野隼斗さんをお招きしました。
 角野さんといえば、先日、ソニークラシカルとワールドワイド契約を結んだと発表されて、大きな話題を呼びました。これは日本人演奏家としては五嶋みどりさん、樫本大進さん、藤田真央さんに続く4人目の快挙。秋にワールドワイド・デビューアルバムをリリースするということですので、角野さんに対する国際的な注目が一段と高まることはまちがいありません。
 そんな角野さんが選んだ曲は、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。これぞボーダーレスな名曲です。大ヒット曲「スワニー」によって人気ソングライターとして世を席巻したガーシュウィンですが、1924年に開かれた「アメリカ音楽の実験」と題されたコンサートで「ラプソディ・イン・ブルー」を発表すると、クラシック音楽界からも注目を集めます。この曲は「ジャズ風協奏曲」を書いてほしいという依頼から生まれ、当初はジャズ・バンドによって演奏されていたのですが、後にオーケストラ用にアレンジされて、クラシックの名曲の仲間入りを果たしました。しばしば「シンフォニック・ジャズ」の代表曲に挙げられるように、ジャズとクラシックの垣根を越えた最大の成功作のひとつと言ってもよいでしょう。初演から100年を迎えた今も、その新鮮さは失われていません。
 今回の演奏では、角野さんが「弾き振り」に挑戦してくれました。ピアノとオーケストラが向き合って、音の対話をくりひろげる様子は実にスリリング。即興を随所に差しはさんで、角野さんならではの冒険心と遊び心にあふれた「ラプソディ・イン・ブルー」が誕生しました。本当にカッコよかったですよね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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