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弦楽四重奏と音楽家たち

投稿日:2016年11月27日 09:30

今週のテーマは「弦楽四重奏と音楽家たち」。アンサンブルの基本ともいうべき弦楽四重奏の魅力をお伝えいたしました。小編成のアンサンブルが作り出す親密な雰囲気には格別の味わいがあります。
 弦楽四重奏という形態は古くからありますが、ジャンルとして確立されたのはウィーン古典派の作曲家、ハイドンから。ハイドンは弦楽四重奏の父とも呼ばれます。そのハイドンの弟子となったのがベートーヴェン。ベートーヴェンはハイドンの衣鉢を継いで、弦楽四重奏の分野に次々と革新的な作品を生み出しました。番組冒頭にお聴きいただいたハイドンの軽快な「ひばり」から、2曲目の激烈なベートーヴェンの「セリオーソ」までは、作曲年代にして約20年強の隔たりがあります。作風の変化の大きさを考えれば、わずか20年強でこんなにも音楽が発展したのだと見ることもできるでしょう。
 弦楽四重奏の演奏にはふたつのタイプがあります。ひとつは常設の弦楽四重奏団による演奏。たとえばジュリアード弦楽四重奏団とかスメタナ弦楽四重奏団といったように、決まったメンバーによって弦楽四重奏を専門に演奏する団体があります。
 もうひとつは、ソリストやオーケストラのメンバーなどが、4人集まって演奏するケース。普段はソロやオーケストラで活動している演奏家が、音楽祭や演奏会など特別な機会のために弦楽四重奏を組むこともよくあります。今回は徳永二男さん、五嶋龍さん、向山佳絵子さん、須田祥子さんという大変豪華な顔ぶれによる弦楽四重奏が実現しました。
 第1ヴァイオリンの徳永さんは元N響コンサートマスター。向山さんはN響の首席チェロ奏者、須田さんは東京フィルの首席ヴィオラ奏者です。一方、龍さんはソリスト。日頃ソリストとして活躍する龍さんが第2ヴァイオリンを務めるシーンは貴重なのでは。でも、みなさん本当に息がぴたりと合っていましたよね。まさに「心配り 気配り 目配り」のおかげでしょうか。

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和楽器を知る音楽会

投稿日:2016年11月20日 15:05

和楽器でこんな曲が演奏できるんですね。今週は和楽器によるアンサンブル、AUN J クラシック・オーケストラの演奏をお聴きいただきました。
 和太鼓、三味線、箏、尺八、篠笛、鳴り物。これらは日本の伝統楽器であるにもかかわらず、私たちの多くにとって身近な楽器とはいえないのではないでしょうか。日本人なのにどうして自分の国の楽器のことをよく知らないのか……という根源的な疑問はさておき、もっと日常的にこれらの楽器のサウンドに触れる機会があってもよいはず。伝統楽器を用いながらも現代の私たちの感性に訴えかける音楽を作り出すAUN J クラシック・オーケストラには、大きな可能性が広がっていると思います。
 西洋楽器のオーケストラとの最大の違いは、これらの和楽器がもともと合奏用に作られていないという点。このメンバーによるアンサンブルは彼らならではのアイディアであり、そのサウンドには独自性があります。
 AUN J クラシック・オーケストラ版のドヴォルザークの「新世界より」第4楽章、カッコよかったですよね。リズムにメリハリがあって、原曲以上にノリノリの「新世界より」になっていました。
 「新世界より」は、チェコの作曲家ドヴォルザークが、アメリカに渡って書いた作品です。新世界とはアメリカのこと。ドヴォルザークはアメリカ固有の音楽を熱心に研究し、黒人霊歌やネイティブ・アメリカンの音楽がこの国の国民音楽の基礎をなすであろうと考えました。そして、あたかもそのお手本を示すかのように、黒人霊歌風のメロディを用いながら、「新世界より」を書きあげたのです。新しい音楽を書くために、その土地に古くからある音楽文化を活用する。この考え方は、AUN J クラシック・オーケストラの日本の伝統楽器を用いた活動と一脈通じるように感じました。

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陰と陽のベートーヴェンの音楽会

投稿日:2016年11月13日 09:30

今週は「陰と陽のベートーヴェンの音楽会」。日本の若い世代を代表するピアニスト、小菅優さんに得意のベートーヴェンを演奏していただきました。ベートーヴェンの音楽の魅力を「陰」と「陽」のふたつの視点から語ってくれたのがおもしろかったですよね。
 小菅優さんはすでにCDでベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をリリースしています。5年間をかけて、水戸芸術館でセッション録音が行われました。「悲愴」や「月光」「熱情」といった人気曲を録音するピアニストはたくさんいますが、全32曲のピアノ・ソナタをこの若さで世に問うのは異例のこと。これは偉業といってもいいでしょう。
 そんな小菅さんが「陰」のベートーヴェンとして取り上げてくれたのが「テンペスト」第1楽章。小菅さんは、バスとソプラノの掛け合いを「父と娘の言い合い」と表現していました。最初は父親に押されていた娘が、だんだん威勢がよくなって「ナイン!」(ドイツ語のノー!)を連発するという解釈には、思わず膝を叩きました。ベートーヴェンには娘はいませんけど(生涯独身でしたので)、でも、あれはたしかに父と娘ですよね。もしかしたら、だれかモデルが身近にいたのかも……?
 「陽」のベートーヴェンは、ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」第1楽章。「幽霊」などという題名がついていますが、第1楽章は明るい曲です。小菅優さんと五嶋龍さん、さらにはウィーン・フィルのメンバーであるヘーデンボルク直樹さんによる豪華共演が実現しました。ヘーデンボルク直樹さんは、スウェーデン人と日本人の両親の音楽一家のもと、ザルツブルグに生まれ育った気鋭のチェリスト。日本語も流暢にお話しになるんですね。
 小菅さんがおっしゃっていたように、この曲は「仲の良い3人の対話」。音楽を通じた3人の対話が、温かい雰囲気を醸し出していました。

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