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ブラスで楽しむディズニーの音楽会

投稿日:2022年03月26日 10:30

今週はディズニーの名曲をブラス・サウンドでお楽しみいただきました。エリック・ミヤシロさんの趣向を凝らした編曲が本当にすばらしかったですね。
 一曲目は「アラジン」の「フレンド・ライク・ミー」。ブラスセクションを中心とした厚みのあるサウンドがゴージャスでした。そしてエリックさんのトランペットはスカッと突き抜けるような音色から、とろけるようなまろやかな音色まで自由自在。しびれました。
 「ヘラクレス」の「ゼロ・トゥ・ヒーロー」では、清水美依紗さんがパワフルでのびやかな声を披露。エリックさんもおっしゃっていましたが、あれだけ管楽器の人数が多い編成にボーカルで対抗するのは大変なこと。清水さんの魅力が全開になっていたと思います。
 以上の2曲はディズニーではおなじみのアラン・メンケンの作曲。この人あってのディズニー音楽と言ってもいいでしょう。
 続く「ミラベルと魔法だらけの家」より「秘密のブルーノ」は、リン=マニュエル・ミランダの作曲。ブロードウェイ・ミュージカルで成功を収め、「モアナと伝説の海」以来、ディズニーでも活躍の場を広げています。この曲は何人もの登場人物が同時に対話しているところがおもしろいですよね。ついロッシーニなど、コミカルなイタリア・オペラの重唱の場面を連想してしまいます。これを器楽だけで表現してしまうのが、エリックさんのアレンジのマジックです。
 最後は「モンスターズ・インク」と「Mr.インクレディブル」のメドレー。「古き良き時代のジャス」のような「モンスターズ・インク」は大御所、ランディ・ニューマンの作曲。一方、「Mr.インクレディブル」はマイケル・ジアッキーノが作曲。5拍子の名曲「ミッション・インポッシブル」へのオマージュのような曲調がたまりません。こちらもエリックさんのトランペットが爽快でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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あの神童たちの今!世界に羽ばたくニュースターの音楽会

投稿日:2022年03月19日 10:30

今回はかつて番組に出演した「神童」たちの現在の成長ぶりをご覧いただきました。大人にとって数年前の出来事はつい最近のことのように思えますが、「神童」たちはその間に大きく成長します。大人と子供の時の流れの違いを痛感せずにはいられませんでした。
 チェロの上野通明さんはジュネーヴ国際音楽コンクールのチェロ部門優勝を果たした新星です。幼少期をスペインのバルセロナで過ごしただけあって、バルセロナ出身のガスパール・カサドが作曲した無伴奏チェロ組曲を演奏してくれました。カサドは作曲家であると同時に、世界的な名チェリストとして広く知られていました。ピアニストの原智恵子と結婚したこともあり、日本と縁の深い音楽家でもあります。上野さんがカサドの作品を演奏するのは必然といってもよいかもしれません。
 ヴァイオリンの中野りなさんとピアノの谷昂登さんは、それぞれ7年前と6年前に番組に出演して、現在は高校生。ともに日本音楽コンクールで昨年第1位を獲得したホープです。このコンクールで脚光を浴びた若手が、何年か経った後に著名な国際コンクールで上位入賞を果たしたり、大舞台で活躍したりといったケースはよくあること。たとえば10年前の2012年ですと、ピアノ部門の第1位が反田恭平さんと務川慧悟さん、声楽部門の第1位が藤木大地さんでした。こういった結果を見るにつけ、才能ある人は着実に頭角を現すものなのだと感じます。
 中野さんが演奏したのは20世紀のハンガリーを代表する作曲家、バルトークのラプソディ第1番。バルトークが「今いちばん好きな作曲家」なのだとか。いずれバルトークの協奏曲なども聴いてみたくなります。谷さんが選んだのはラフマニノフの「音の絵」第5番。「音の絵」とは不思議な題名ですが、作曲者の頭の中にはどうやら曲ごとに絵画的な情景がイメージされていたようなのです。しかし、そのイメージがどんなものかは明かされていません。谷さんの力強い演奏から、どんな絵が目に浮かんできたでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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題名のない音楽会年鑑2021 後編

投稿日:2022年03月12日 10:30

今週は2021年度の音楽界を振り返る「題名のない音楽会年鑑2021」の後編。前編では若き才能の躍進ぶりをお伝えいたしましたが、後編では偉大な音楽家たちとの別れ、そして話題を呼んだアニメソングを特集しました。
 昨年9月に世を去ったすぎやまこういちさんの代表作といえば、「ドラゴンクエスト」シリーズの音楽を挙げないわけにはいきません。すぎやまさん自ら指揮をした「ドラゴンクエストI」の「序曲」は貴重な映像。「ドラクエ」シリーズ全体のテーマ曲ともいえる名曲ですが、最初にファミコンで「ドラゴンクエストI」がリリースされた時点では、このようなオーケストラサウンドをゲーム機で実現することは不可能でした。ハードウェアの制約から、現実に鳴っていたのは「ピコピコ音」と呼ばれる電子音のみ。しかし、作曲者の頭の中にあったのは、今回の東京交響楽団のようなフルオーケストラのサウンドです。おそらくプレーヤーの多くも頭の中で雄大なサウンドを想像していたのではないでしょうか。「ドット絵」と呼ばれるグラフィックスもそうですが、当時のゲームはプレーヤーのイマジネーションをいかに刺激するかという点に、クリエーターたちの創意が凝らされていたように思います。
 12月に逝去した丸谷明夫先生も忘れることのできない名指導者でした。長年にわたり大阪府立淀川工科高校吹奏楽部を指導し、番組にもたびたび出演してくださいました。全国に多くのファンを持ち、ときにはプロの吹奏楽団の指揮台にも立つなど、これほど日本の吹奏楽文化の豊かさや厚みを感じさせてくれる指導者はいませんでした。
 アニメソングの世界からは次々と名曲が誕生していますが、なかでも人気を呼んだのが劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の「炎」。番組では荒井里桜さんのヴァイオリン・ソロを中心に、日本の若手トッププレーヤーたちが集まったぜいたくなアンサンブルで「炎」をお届けしました。アニメソングの枠にとどまらず、長く愛される曲になりそうです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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題名のない音楽会年鑑2021 前編

投稿日:2022年03月05日 10:30

今週は2021年度の音楽界を振り返る「題名のない音楽会年鑑2021」前編。コロナ禍に翻弄された音楽界ですが、それでも2021年度は話題の豊富な一年だったと思います。
 なによりも大きなニュースはショパン国際ピアノ・コンクール。第2位の反田恭平さん、第4位の小林愛実さんをはじめ、日本勢の健闘ぶりが目立ちました。特に反田さんは日本人としては1970年の内田光子さん以来となる過去最高位の第2位。反田さんがコンクールの第2位について「パスポート」と表現していたのが印象的でした。世界中のどこのコンサートホールであれどこのオーケストラであれ、「ショパン・コンクール第2位のピアニスト」には必ず敬意を払ってくれるでしょう。
 これまで番組で反田さんが演奏してくれた場面はどれも懐かしいものばかり。「カルメン幻想曲」の切れ味の鋭さには改めて驚かされます。
 小林愛実さんの「今まで生きてきた中でいちばん濃い一年」という言葉にも実感がこもっていました。小林さんは前回のショパン・コンクールでファイナルまで進出していただけに、今回それを上回る第4位入賞を果たしたことには大きな意味があると思います。小林さん、反田さん、藤田真央さんの3人の共演によるグリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲はゴージャスの一語。原曲のオーケストラ版以上に華やかな雰囲気がありました。
 エリザベート王妃国際音楽コンクールもトップレベルのコンクールとして知られています。このコンクールにはさまざまな部門があるのですが、2021年は5年ぶりにピアノ部門が開催されました。そこで務川慧悟さんが第3位に、阪田知樹さんが第4位に入賞しました。たまたまショパン・コンクールと開催年が重なり、しかもどちらでも日本人が上位入賞を果たしたわけです。さらにミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門第1位に岡本誠司さん、ジュネープ国際音楽コンクールのチェロ部門第1位に上野通明さんが輝き、昨年度はまれに見る入賞ラッシュの一年になりました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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