いよいよリオデジャネイロ・オリンピックが始まりますね。今週は「スポーツの祭典の音楽会」。オリンピックやワールドカップを彩る名曲が演奏されました。
オリンピックでは毎回独自のファンファーレが作られていますが、まっさきに思い出されるのが、ジョン・ウィリアムズ作曲によるロサンゼルス・オリンピックのための「オリンピック・ファンファーレとテーマ」。大会が終わってもなお演奏され続け、そのままファンファーレの定番曲として定着した感があります。「スターウォーズ」や「スーパーマン」など、数々の映画音楽で名作を生んできたジョン・ウィリアムズですが、このファンファーレもまた彼の代表作として残る一曲ではないでしょうか。
コープランド作曲の「市民のためのファンファーレ」も同じくアメリカが生んだファンファーレの名曲です。威厳と高揚感にあふれ、この曲自体、オリンピックのファンファーレとして演奏されてもおかしくないような雰囲気を持っていますよね。コープランドは後にこのファンファーレの主題を交響曲第3番の終楽章で再利用して、さらに大規模な音楽に仕立てています。本来ブラスバンド向けのファンファーレを、フル・オーケストラの交響曲にしたらどうなるのか。ご興味のある方はぜひ聴いてみてください。
サッカーの世界では、なんといっても、ヴェルディ作曲のオペラ「アイーダ」に登場する「凱旋行進曲」が有名です。ヴェルディの母国イタリアのみならず、世界中のサポーターたちがスタジアムでこのメロディを歌っています。
「アイーダ」で舞台となるのは古代エジプト。「凱旋行進曲」は第2幕のラダメス将軍率いるエジプト軍の勝利を称える場面で華々しく演奏されます。しかし、その後、ラダメス将軍は祖国の栄光よりも許されざる愛を選び、地下牢に閉じ込められて現世に別れを告げます。華やかだけど、結末は苦い。勝利とはひとときのものだからこそ、「凱旋行進曲」の壮麗さが際立つのかもしれません。
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スポーツの祭典の音楽会
冨田勲の音楽会
今年5月5日、84歳で亡くなった作曲家の冨田勲さん。テレビや映画音楽の作曲家として、またシンセサイザー音楽の先駆者として、音楽界に大きな足跡を残しました。近年もバーチャルシンガーの初音ミクとオーケストラを共演させるなど、衰えることのない旺盛な創作意欲を発揮していました。
テレビ音楽で懐かしかったのは「新日本紀行」の音楽。これは名曲ですよね。尺八の音色が日本の原風景を思い起こさせます。「今日の料理」のテーマ曲はあまりに有名ですが、冨田勲作曲であることをご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。急遽、番組のテーマ曲を作らなければならなくなり、たまたまそこに居合わせたのがマリンバ奏者とパーカッション奏者だったので、それに合わせて曲を書いたという逸話が知られています。あの軽快なマリンバのサウンドは偶然の産物でもあったんですね。
シンセサイザー音楽家としての冨田さんは日本よりも先にまずアメリカで高い評価を受けました。「月の光」「惑星」「火の鳥」など、クラシックの名曲をシンセサイザーで再創造し、だれも聴いたことがない音の世界を切り拓きました。最初期のシンセサイザーは楽器というよりは機材といったイメージが近いでしょうか。冨田さんがアメリカにシンセサイザーを発注したところ、電話の交換台のような装置が送られてきて、税関に楽器だと認めてもらえずに引き取るまでに苦労をしたといいます。
番組では初音ミクとオーケストラの共演が実現しました。初音ミクの歌唱部分は、あらかじめ録音した歌を再生してそれにオーケストラが合わせたのではありません。指揮者の棒に初音ミクの側が合わせています(もちろん人間の操作を介在してではありますが)。指揮台の横に2次元バーコードのような物が配置されていたのは、CGを合成させるためのマーカーなのだとか。こんなふうに舞台とCGの合成ができるんですね。可能性の広がりを感じます。
水を感じる音楽会
暑い日が続くと、音楽も涼しげな曲を聴きたくなるもの。今週は「水を感じる音楽会」。音で水を感じさせるというとなんだか不思議な気もしますが、作曲家たちはさまざまな趣向を凝らして水を表現してきました。
冒頭で演奏されたヘンデルの「水上の音楽」は、水にまつわる名曲のなかでももっとも有名な曲のひとつ。イギリス国王ジョージ1世のテムズ川での舟遊びの際に演奏されたと伝えられています。いわば王侯貴族による優雅な18世紀版クルージング。生演奏でこんなに爽やかな音楽を演奏してもらえれば、気分は最高でしょう。隅田川あたりでも同じような舟遊びを企画してもらえないだろうかとつい思ってしまいますが、生演奏を望むのはぜいたくすぎるでしょうか。
イヴァノヴィチの「ドナウ川のさざ波」は学校で耳にしたという方も多いのでは。愁いを帯びた短調のワルツはいかにも東欧風。ゆったりとした川の流れを連想させます。
一方、純粋に水そのものを表現したのがラヴェルの「水の戯れ」。この曲はラヴェルの印象主義的な様式を確立した作品としてしばしば例に挙げられます。水そのものには形がありませんが、水が飛び散ったり、光を反射してきらめく様子がピアノによって描かれます。水滴のイメージと粒立ちが感じられるピアノの音色が見事に合致していて、ラヴェルの音色に対する鋭い感性が発揮されています。
スメタナの交響詩「モルダウ」は、祖国チェコの自然と伝説を音に紡いだ「わが祖国」と題された連作交響詩のなかの一曲です。当時、チェコはハプスブルク家が治めるオーストリア帝国のもとにありました。そんななかでわき起こったチェコの民族復興運動を反映して、祖国礼賛の音楽が生まれたのです。冒頭では山奥のどこかにある小さな源流が木管楽器で巧みに表現され、これらが合流してやがて大河へと育ってゆきます。雄大な情景から作曲者の郷土愛が伝わってきます。
若き俊英たちの音楽会
今、日本の音楽界からは若くて優秀なアーティストが次々と登場しています。今週の「若き俊英たちの音楽会」では、3組のアーティストがそれぞれの個性を発揮してくれました。
ピアノの實川風(じつかわ・かおる)さんは昨年のロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第3位(1位なし)に入賞した新鋭です。ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」、本当にすばらしい演奏でしたよね。細部まで彫琢された緻密な演奏でありながら、音楽全体に勢いが感じられる堂々たる本格派のベートーヴェンでした。
実は収録より前に、東京・渋谷で實川風さんのリサイタルが開かれまして、そちらでも「ワルトシュタイン」が演奏されていました。プログラムにはほかにショパン、リスト、ドビュッシー、現代のピアニスト兼作曲家のヌーブルジェらの作品も並べられ、実に多彩。音楽的な視野の広さも感じさせます。将来が、というよりは、すでに次のリサイタルが楽しみなピアニストといってよいかもしれません。
篠笛の佐藤和哉さんは、佐賀県の「唐津くんち」のお囃子が最初の笛との出会いだったそうです。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」主題歌のモチーフとなった佐藤さんの「さくら色のワルツ」には、日本人の琴線に触れるようなノスタルジックな手触りと、今風の洗練されたテイストがともに感じられたのではないでしょうか。
驚きの打楽器アンサンブルを披露してくれたのは Ki-Do-Ai-Raku のみなさん。4人全員がスネアドラム(小太鼓)を叩くと聞いて、「うーん、なんだか変化に乏しい地味なアンサンブルになりそうだな」と思っていたら、まさかあんなにはじけたパフォーマンスを見せてくれるとは! スネアドラムにいろんな種類の奏法があるということにもびっくり。スネアドラムをササッと裏返す場面がありましたが、あんなふうに直接スネア(響き線)をスティックで叩くこともできるんですね。想像以上に表現力に富んだ楽器であることを再認識しました。
ボサノヴァを愛する音楽家たち
今週は「ボサノヴァを愛する音楽家たち」。ボサノヴァって、聴いていて本当にさわやかな気分になりますね。ボサノヴァにはぜんぜんなじみがないという方も、「イパネマの娘」や「マシュ・ケ・ナダ」といった名曲は必ずどこかで耳にしているのではないでしょうか。小野リサさんのささやくような歌声に、龍さんのヴァイオリンが加わった「イパネマの娘」がとても新鮮でした。
新鮮といえば、津軽三味線奏者の上妻宏光さんと小野リサさんの共演にも驚きました。もともとは武器だったという素朴な民族楽器「ビリンバウ」と三味線に共通点が多いということからコラボレーションが実現したそうですが、不思議なほど違和感がありません。
ボサノヴァの発声法について、小野リサさんは「恋人に語りかけるように」と説明してくれました。ボサノヴァに特徴的な軽くやさしい発声は、たとえばオペラのような強靭で輝かしい発声とは正反対といってよいでしょう。でも、オペラ・アリアの名曲も多くは恋人に向けて愛を歌っているんですよね。同じことを目的にしているのに、表現の方法がまるで違うところがなんともおもしろいと感じました。
ポルトガル語のbossa nova をそのまま直訳すれば「新しいこぶ」。この言葉が生まれた当時のニュアンスを汲むと、「新しい天性、しゃれた癖」といった意味を表すそうです。ボサノヴァとは「ブラジルの踊りサンバに都会的なジャズの感覚をとりいれ、ジャズ・サンバともいわれる」(「新編音楽中辞典」より)。この音楽が誕生した20世紀前半のブラジルでは、おしゃれで都会的な音楽とみなされていたようです。ボサノヴァのおしゃれで都会的といったイメージは、21世紀の日本でもほとんど同じように共有されていますよね。これってスゴいことだと思いませんか。