今週は番組で実現した日本を代表するヴォーカリストたちとクラシックのコラボレーションを選りすぐってお届けいたしました。
ロック界のカリスマToshlさんはピアノの反田恭平さんと共演。チェロの宮田大さん、サクソフォンの上野耕平さん、指揮の原田慶太楼さんも加わった超豪華メンバーで、リスト風MISIAの「Everything」を歌ってくれました。数多くのピアノ曲で知られるリストは、19世紀のクラシック音楽界が生んだ最大のスーパースターのひとり。そのリストの名曲「愛の夢」第3番が「Everything」に溶け込んで、独自の味わいを生み出していました。Toshlさんの輝かしい声と精鋭ぞろいのアンサンブルがあってはじめて実現する、スケールの大きな音楽だったと思います。
藤井フミヤさんはベートーヴェンの大傑作、「悲愴」ソナタにオリジナルの歌詞を付けて歌ってくれました。ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」はベートーヴェン初期の代表作。第1楽章は重々しく深刻な調子で開始されますが、第2楽章ではのびやかで物憂げなメロディが奏でられます。フミヤさんが歌詞を付けたのはその第2楽章のメロディ。原曲の持つノスタルジックな性格に焦点を当てて、「青いメロディー」としてよみがえらせました。歌詞にある「空」「雲」「風」といったイメージは、原曲にも感じられるのではないでしょうか。
檀れいさんは「炎のコバケン」の愛称で知られる巨匠、小林研一郎さん指揮東京フィルとの共演で、アニメ「ベルサイユのばら」より「薔薇は美しく散る」を歌ってくれました。檀さんの清澄な歌声がすばらしいですよね。そして、あのコバケンさんが「ベルばら」を指揮する姿に感激せずにはいられません。
SixTONESのみなさんはチェロの宮田大さん、箏のLEOさん、三ツ橋敬子さん指揮のオーケストラと共演。こちらのオーケストラも名手ぞろいで、実にゴージャスです。声とオーケストラがひとつになって、キレのある清爽としたサウンドが生み出されていました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)