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クラシックと豪華コラボの音楽会

投稿日:2022年09月24日 10:30

今週は番組で実現した日本を代表するヴォーカリストたちとクラシックのコラボレーションを選りすぐってお届けいたしました。
 ロック界のカリスマToshlさんはピアノの反田恭平さんと共演。チェロの宮田大さん、サクソフォンの上野耕平さん、指揮の原田慶太楼さんも加わった超豪華メンバーで、リスト風MISIAの「Everything」を歌ってくれました。数多くのピアノ曲で知られるリストは、19世紀のクラシック音楽界が生んだ最大のスーパースターのひとり。そのリストの名曲「愛の夢」第3番が「Everything」に溶け込んで、独自の味わいを生み出していました。Toshlさんの輝かしい声と精鋭ぞろいのアンサンブルがあってはじめて実現する、スケールの大きな音楽だったと思います。
 藤井フミヤさんはベートーヴェンの大傑作、「悲愴」ソナタにオリジナルの歌詞を付けて歌ってくれました。ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」はベートーヴェン初期の代表作。第1楽章は重々しく深刻な調子で開始されますが、第2楽章ではのびやかで物憂げなメロディが奏でられます。フミヤさんが歌詞を付けたのはその第2楽章のメロディ。原曲の持つノスタルジックな性格に焦点を当てて、「青いメロディー」としてよみがえらせました。歌詞にある「空」「雲」「風」といったイメージは、原曲にも感じられるのではないでしょうか。
 檀れいさんは「炎のコバケン」の愛称で知られる巨匠、小林研一郎さん指揮東京フィルとの共演で、アニメ「ベルサイユのばら」より「薔薇は美しく散る」を歌ってくれました。檀さんの清澄な歌声がすばらしいですよね。そして、あのコバケンさんが「ベルばら」を指揮する姿に感激せずにはいられません。
 SixTONESのみなさんはチェロの宮田大さん、箏のLEOさん、三ツ橋敬子さん指揮のオーケストラと共演。こちらのオーケストラも名手ぞろいで、実にゴージャスです。声とオーケストラがひとつになって、キレのある清爽としたサウンドが生み出されていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ブリーズバンド全国大会2022 後編

投稿日:2022年09月17日 10:30

今週は先週に引き続いて「ブリーズバンド全国大会2022」の後編をお届けしました。今回も個性豊かな出場チームが登場してくれました。
 最初に「紅蓮華」を演奏してくれたのは、八甲田あらふぃふたーず★。お寺のお堂で演奏する映像がありましたが、なんとリーダーはご住職です。編成はトランペット、フリューゲルホルン/トランペット、テューバ、ホルン、クラリネット、アルトサクソフォン、ドラム。それぞれソロをビシッと決めてくれました。みなさん本当にいい表情で、大人が真剣に楽しんでいる様子が伝わってきます。
 2組目は女子高校生バンドのFamikyan。制服はばらばらですが、みんな同じ中学の出身で、中学最後のコンクールがコロナ禍で中止になったことから、その悔しさを晴らすために応募したといいます。コロナ禍もすでに3年目。同様に悔しい思いをしている子供たちが全国に大勢いることでしょう。曲は「カルメン・クライマックス!」。急遽テューバ抜きの6人での演奏になってしまいましたが、アルトサクソフォン2、フルート、クラリネット、トロンボーン、ホルンの編成で、生き生きとした勢いのある演奏を披露してくれました。
 3組目は奥多摩吹奏楽団のみなさん。東京都でありながら豊かな自然にあふれるのが奥多摩。そんな奥多摩を愛してやまないメンバーが集まりました。町長さんとご当地キャラの「わさぴー」まで応援してくれるとは! ユーフォニアム、クラリネット、ホルン、アルトサクソフォン、バストロンボーン、トランペット、バスクラリネットによる編成で「星に願いを」を演奏してくれました。ムーディな味わいがすばらしかったですね。
 そして「7人全員が主役」というコンセプトをもっとも実現していたバンドに与えられる「スターセブン賞」は、審査員の投票によりRainbow Heartに与えられることに。ピュアな音楽が忘れがたい印象を残してくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ブリーズバンド全国大会2022 前編

投稿日:2022年09月10日 10:30

今週は「ブリーズバンド全国大会2022」の前編をお届けしました。ブリーズバンドはコロナ禍をきっかけに番組から誕生した7人制の吹奏楽。「7人全員が主役である」というコンセプトにもとづく新しい合奏スタイルです。そのブリーズバンドの初めての全国大会から、今週は全6組中の3組をご紹介しました。
 トップバッターはJR貨物音楽部のみなさん。勤務地がばらばらにもかかわらず、こうしてひとつになって活動を続けている姿から、音楽への情熱が伝わってきます。それにしても会社公認の楽団があるなんて、すばらしいですよね。トロンボーン、トランペット、ベース、サクソフォン、ホルン、フルート、ドラムの7人編成で「紅蓮華」を披露してくれました。社会人ならではの大人の演奏にしびれました。
 続いて登場したのは、東京藝術大学で学ぶsaigo ensemble★7のみなさん。日本のトップレベルの学生たちだけあって、目指すはプロの音楽家。将来の夢にもベルリン・フィルやNHK交響楽団の名前が挙がっていましたね。トランペット、ホルン、パーカッション、サクソフォン、フルート、クラリネット、オーボエの7名で「カルメン・クライマックス!」を演奏してくれました。さすがに個々の技術がとても高く、鮮やかな演奏を楽しませてくれました。それだけに、審査員の先生方がプロの視点からさらに上の水準を求めるのはもっともなことでしょう。
 最後に登場したのは京都府精華町の中学2年生によるRainbow Heart。小学校時代からの仲良しメンバーだそうですが、ともに育ってきた友達同士の雰囲気がよく伝わってきます。この年代ならではの眩しさを感じずにはいられません。トロンボーン、ユーフォニアム、ホルン2、テューバ、サクソフォン、クラリネットの編成で「裸の心」を演奏してくれました。これはかなり練習をがんばったはず。聴く人の耳をとらえて離さないピュアな音楽に胸を打たれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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異界を覗く音楽会

投稿日:2022年09月03日 10:30

クラシック音楽の名曲には魔物や道化などの異様な世界を描いた作品がたくさんあります。今回はそんな名曲を通して異界を覗いてみました。
 ノルウェーの作曲家グリーグの代表作「ペール・ギュント」の一曲が「山の魔王の宮殿にて」。この魔王とはトロールの王のことなんですね。トロールはトールキンの「指輪物語」などファンタジーにも登場しますが、日本ではRPGゲームの「ドラゴンクエスト」をきっかけに広く知られるようになったように思います。「ペール・ギュント」の型破りな主人公ペールは、トロールの娘と結婚しようとしたところ、その父親がトロールの王とわかり、間一髪のところで逃げ出します。次第に緊迫感を高めてゆく音楽は迫力満点。トロールの恐ろしさが伝わってきます。
 ドイツの民衆本で描かれるティル・オイレンシュピーゲルは実在の人物とも架空の人物とも言われる道化者です。人を騙すようなひどい悪さもする一方、ときには権力者にいたずらを仕掛けて民衆の共感を呼ぶこともあります。ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスはそんなティルの暴れっぷりを交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」で表現しました。ティルの物語にはスカトロジー方面のとんでもない奇行も描かれていて、必ずしも「愉快」とは言いがたいのですが、楽曲はウィットに富んでいます。
 フランスの作曲家ラヴェルの「夜のガスパール」はルイ・ベルトランの詩が題材になっています。第1曲が「オンディーヌ」(水の精のこと)、第2曲が「絞首台」、そして第3曲が「スカルボ」で、いずれも幻想的な光景が描かれています。亀井聖矢さんのイメージから「スカルボ」の姿がイラスト化されていましたが、楽曲から受ける印象はまさにあの絵の通り。超自然的な存在を実感させるという意味で、超絶技巧に必然性の感じられる楽曲だと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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