若手音楽家の登竜門である出光音楽賞。第29回となる今回は、ヴァイオリンの郷古廉さん、ピアノの牛田智大さん、箏のLEO(今野玲央)さんが受賞しました。受賞者ガラコンサートでは秋山和慶指揮東京フィルと共演。それぞれの演奏に受賞者の個性がよくあらわれていたように思います。
チャイコフスキーの「ワルツ・スケルツォ」を演奏したのは郷古廉さん。キレのあるテクニック、明快な表現によって、25歳とは思えない成熟度の高い音楽を披露してくれました。ストラディヴァリから輝かしく豊麗な音色を引き出していたのも印象的。チャイコフスキーのヴァイオリン曲というと、まっさきに協奏曲が思い浮かびますが、こういった優雅な小品も味わい深いですよね。
牛田智大さんはまだ19歳という若さ。11歳の頃の映像にあったように、その美少年ぶりから、アイドル的な人気を獲得していたピアニストです。あまりに人気が先行してしまったため、彼の今後の活動はどうなるのだろうと案じた方もいたかもしれませんが、昨年の浜松国際ピアノコンクールで見事に第2位を受賞して、着実な成長ぶりを示してくれました。曲はプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番より。従来の牛田さんのイメージからすると、意外とモダンな曲を選んだように感じましたが、実はこの曲が「ピアニストに憧れるきっかけの曲」だったとは。わたしたちはまだまだ牛田さんのことをよく知らないのかもしれませんね。高揚感にあふれた演奏で客席を沸かせました。
LEOさんは箏という伝統楽器を奏でながらも、前例のない道を切り開く新世代のアーティストです。練習場面で箏にギターのエフェクターをつなげていたのにはびっくり。曲は現代の作品で、肥後一郎作曲の「箏と弦楽合奏のための一章」。西洋音楽の語法によって箏とオーケストラが一体になった、LEOさんにふさわしい作品です。幻想味と生命力に富んだ音楽が深い余韻を残しました。
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第29回出光音楽賞 受賞者ガラコンサート
吹奏楽で聴くスピッツの音楽会
今週は高校吹奏楽の名門校がJポップの名曲にチャレンジする恒例企画。2017年の山下達郎、2018年の松任谷由実に続いて、2019年はスピッツの名曲をとりあげました。会場となった東京文化会館は、普段はオーケストラやオペラ、バレエなども上演する約2300席の大ホールです。広大な空間いっぱいにパワフルなサウンドが鳴り響きました。
スピッツの草野マサムネさんから高校生たちへのメッセージをいただきましたが、この文面がすばらしかったですよね。特に「河原の石みたいだった曲を皆さんがていねいに磨いて磨いて、新たな宝石にしていただいた」という表現にはグッときました。「河原の石」とは謙遜で、実際にはスピッツの曲はとても洗練されていると思うのですが、どんな曲、どんな音楽であっても、他人が演奏することで、作り手の想像を超えた形で磨かれ、やがて時代を超越した「名曲」となってゆくのでしょう。
演奏してくれたのは大阪の淀川工科高校、福岡の精華女子高校、東京の東海大学菅生高校の三校の吹奏楽部。淀川工科高校は「空も飛べるはず」で、のびのびとした歌心を感じさせてくれました。さまざまな楽器が活躍するアレンジも印象的。精華女子高校は名作「ロビンソン」を演奏。軽やかで透明感のあるサウンドは一服の清涼剤のよう。バランスのよい美しい響きが心に残ります。東海大学菅生高校の「チェリー」には、わきあがるような高揚感がありました。
最後は三校合同での「優しいあの子」。収録時には演奏前に指揮の丸谷先生から「リハーサルではただ元気に盛りあがるんじゃなくて、ていねいに演奏しようと言ったけど、あれはナシ。せっかくの機会だから、思い切り盛りあがろう」といった趣旨の一言も。開放感にあふれたサウンドが生み出されました。
吹奏楽で歌うアニソンの音楽会
今週は吹奏楽の名門校三校のみなさんが、岩崎良美さん、高橋洋子さん、岡本知高さんとアニソンで共演を果たしました。
精華女子高校吹奏楽部が岩崎良美さんと共演したのはアニメ「タッチ」の主題歌。1981年、週刊少年サンデーであだち充の原作「タッチ」が連載開始されると大反響を呼び、1985年にはテレビアニメ化されていっそうのブームを巻き起こしました。今の高校生の皆さんはご存じないとは思いますが、当時の「南ちゃん」こと浅倉南人気は大変なもの。日高のり子さんの応援メッセージに、櫻内先生が胸キュンになるのも納得です。高校野球を題材としながらも、ストーリーの根幹はラブコメというのが「タッチ」の新しさ。「スポ根」とは一線を画したさわやかな青春ドラマは、精華女子高校にぴったりの選曲だったのではないでしょうか。
東海大学菅生高校が高橋洋子さんと演奏したのはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」より「残酷な天使のテーゼ」。これは名曲ですよね。「新世紀エヴァンゲリオン」がテレビアニメとして最初に放送されたのは1995年。空前の大災害後に復興された第3新東京市を舞台に、碇シンジをはじめとする少年少女が巨大人型兵器であるエヴァンゲリオンのパイロットとなって、謎の敵「使徒」と戦います。戦闘ロボットアニメの形をとりながらも、「人は他者といかに向き合うか」というテーマが込められているのが「エヴァ」。碇シンジの「逃げちゃダメだ」は、「目標をセンターに入れてスイッチ」と双璧をなす彼の名言でしょう。東海大学菅生高校のみなさんも逃げることなく、まっすぐに高橋洋子さんの歌唱に向き合って、驚異的な「シンクロ率」を達成していました。
淀川工科高校は岡本知高さんと「天空の城ラピュタ」より「君をのせて」を共演。名物先生、丸谷明夫先生と岡本知高さんの強力タッグが実現しました。パズーからまさかの「バルス!」が唱えられましたが、滅びの呪文に負けることなく、のびやかでみずみずしい音楽が奏でられていました。
ハーモニカ女子たちの休日
知っているようで知らないのがハーモニカの世界。今週は山下伶さん、NATSUKOさん、寺澤ひろみさん、KOHさんの4人のハーモニカ奏者をお招きして、ハーモニカの魅力や仕組みについて語っていただきました。
ハーモニカの種類は大きく分けると、ブルースハープ、クロマチックハーモニカ、複音ハーモニカの3種類。一般に私たちがハーモニカと聞いて、まっさきに連想するのがブルースハープでしょう。ドレミファソラシド……という全音階を出すことができます。ある世代までの方は、小学校の授業でこれに近いタイプのハーモニカを習ったのではないでしょうか。今では教育用楽器としての地位をすっかり鍵盤ハーモニカに奪われてしまいましたが……。
このタイプのハーモニカではドレミファソラシドを鳴らせても、その間にある半音は出せません。ということは、決まったキーの曲しか吹けないのではないか。そんな疑問がわきますが、NATSUKOさんの楽器ケースには、ハーモニカがずらりと12本、並んでいました。なるほど、1オクターブには12の音がありますから、12種類の異なるキーの楽器を持っていれば、どんなキーの曲にも対応できます。
NATSUKOさんがおっしゃっていた言葉で印象的だったのは「イナたい音」。この言葉、ご存じでしたか。初耳だったのですが、枯れた音、ブルージーな音を指すのだとか。どういう語源なんでしょう? 「田舎」から派生してできた言葉なんでしょうか。
寺澤ひろみさんが複音ハーモニカを駆使して演奏してくれたのはソル作曲のモーツァルトの「魔笛」の主題による変奏曲。本来はギター独奏曲として知られた名曲です。複数の楽器を重ねて持って、上下にスライドさせながら楽器を替える奏法が披露されました。しかも、曲の途中で楽器を持ち替えて、都合9本もの楽器を使用しています。鮮やかなテクニックでした。