しばしば難しい楽器の筆頭に挙げられるのがホルンとオーボエ。一流オーケストラには卓越したホルン奏者とオーボエ奏者が欠かせません。今回はオーボエ奏者の最上峰行さんと山本楓さん、ホルン奏者の福川伸陽さんと五十畑勉さんをお招きして、それぞれの楽器の難しさについて語っていただきました。
オーボエ奏者というと、よく言われるのが「いつもリードを削っている」。リードは手作りだったんですね。消耗品なので、常に作り続けなければなりません。最上さんがリードを製作しているところを見せてくれましたが、予想以上に工程が多く、まさに職人の技です。トータルの製作日数は2週間から1か月だとか。ずいぶん日数がかかります。しかも10本作っても、使えるのは1本だけ! 本番を迎える前に、こんなに長い道のりがあったとは。湿気が大敵なので、山本さんは「天気がいい日は家にこもってリード作り」と言います。目に見えない苦労がたくさんある楽器だということがよくわかりました。
ホルンの福川さんは、指をまったく動かさずに、唇だけで音程を操ってみせてくれました。そんなことができるんですね。しかし、福川さんのような名手でも「高い音を当てるのは神頼み」。たしかに一流オーケストラであっても、常に完璧とは行かないのがこの楽器です。一方で低音域は五十畑さんが実演してくれたように、息が足りなくなる苦労があります。
それだけ難しい両楽器ですが、いずれも最高の音色を聴かせてくれる楽器でもあります。アルビノーニの「2つのオーボエのための協奏曲」では、オーボエのいくぶん愁いを帯びた甘く暖かい音色を、ベートーヴェンの「2本のホルンと弦楽四重奏のための六重奏曲」では、柔らかくふっくらとしたホルンの音色を堪能できました。バッハのブランデンブルク協奏曲第1番では、ホルンとオーボエがともに独奏楽器を務めます。ぜいたくな音の饗宴でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)