「東京ブギウギ」が発表されたのは昭和22年のこと。自分が生まれるよりもはるかに昔の流行歌です。でも、聴くと知っているんですよね。本日の「リズム歌謡の音楽会」では、エリック・ミヤシロさんの編曲したバージョンでお聴きいただきましたが、古いのに古びていないといいましょうか、とてもカッコいい曲だと感じました。いま昭和歌謡に注目する動きがあるというのもわかるような気がします。
それにしても「リズム歌謡」の変遷をたどった輪島裕介さんの解説には目からウロコが落ちっぱなしでした。日本でブームを作ったマンボ、カリプソ、ツイスト、ドドンパに、そんな背景があったとは。昭和31年のマンボブームは、ペレス・プラード楽団の来日がきっかけだったといいますから、本場のマンボに触れたおかげだったわけですね。たまたまですが、同じ昭和31年に第1回のイタリア歌劇団来日があり、日本にオペラ文化を定着させる契機となったと言われます。やはり本物との出会いが、新たな文化を生み出すものなのでしょう。
もうひとつおもしろかったのは、ドドンパが日本で生まれたリズムだという点。マンボはキューバ、カリプソはカリブ、ツイストはアメリカ由来のダンスですが、ドドンパはなんと日本製なんですね。「ドドン、パッ! ドドン、パッ!」というコンガのリズムが、盆踊りに通じているという解説がありましたが、言われてみるとすごく納得できます。マンボとかカリプソはどんなに練習してもサマになりそうにないですが、ドドンパだったらカッコよく踊れるかも! 一瞬、そんな気の迷いを起こしました。
ところで「マンボNo.5」で知られるペレス・プラードは1916年12月11日に生まれています。つまり、今年生誕100年。もしかすると世界的にマンボ・イヤーになるのではと期待しているのですが、どうなんでしょうね。
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リズム歌謡の音楽会
ニュースタンダードの音楽会
ポピュラー音楽の世界で使われる用語に「スタンダード」という言葉があります。辞書をひくと「恒久的なレパートリーとして広く親しまれる名曲のこと、特にポピュラー・ソングで使われる」といった説明が乗っています。ジャズでいえば「A列車で行こう」とか「枯葉」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」といった曲名がまっさきに挙がるでしょうか。
本日の「ニュースタンダードの音楽会」では、新しいスタンダード、つまり70年代から80年代の洋楽ヒットナンバーを最新のアレンジでお聴きいただきました。マイケル・ジャクソンやプリンスのヒットナンバーもすでに30年の時を経ているのですから、もはや「スタンダード」になっているんですね。
時代を代表するヒット・ナンバーがスタンダードになるということは、いいかえれば本人以外のアーティストたちによって演奏され続けているということ。だれかが楽曲に新しい命を吹き込まなければ、「スタンダード」は誕生しません。今回は時代の最先端を行くアレンジャーたちが、「今のマイケル・ジャクソン」や「今のプリンス」を聴かせてくれました。「ビート・イット」がゴージャスに生まれ変わっていたり、「パープル・レイン」に繊細で抒情的な彩りが添えられていたり……。懐かしくて、しかも新鮮であるというのが、「ニュースタンダード」を聴く楽しさでしょうか。
エリック・ミヤシロ EMバンドの演奏もカッコよかったですね。あのスカッと抜けるようなトランペットの高音はどうやったら出せるんでしょう。サックスやトロンボーン、ハーモニカなど、ソロの聴きどころも満載でした。
同じ曲をいろんなアーティストがくりかえし演奏して、スタンダードになる。このプロセスはクラシック音楽が生まれるプロセスとまったく同じです。今スタンダードと呼ばれる名曲が、さらにあと100年演奏され続けると、クラシックと呼ばれるようになるのかもしれません。
山田和樹と日本一の合唱団の音楽会
今週は「山田和樹と日本一の合唱団の音楽会」。
社会人から高校生まで、それぞれの世代で輝かしいコンクール歴を誇る合唱団を、世界的指揮者の山田和樹さんが指揮したらどうなるのか。そんな興味深い試みが実現しました。
山田和樹さんといえば、モンテカルロ・フィル芸術監督(9月~)、スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、日本フィル正指揮者など、各地のオーケストラで要職に就く一方で、東京混声合唱団音楽監督も務めています。トップレベルの指揮者によるリハーサル風景を見られるという意味でも貴重な機会でした。
山田さんがどんな指導をするのか、事前にまったく予想がつかなかったのですが、いざ始まってみると短時間のなかで次々とリクエストを出して、作品に命を吹き込んでいきます。ほんの一言だけの指示でも、一気に音楽の表情が変わるのには驚かされました。山田さんの指導には「もっと花の香りがするように」といった比喩的な示唆もあれば、具体的な歌い方を指示するものもありました。そして、これらをただちに音楽に反映できてしまうのも、合唱団の実力があってこそ。教える側と教わる側がぴたりとかみ合って、密度の濃い練習になっていたと思います。
以前、山田さんにインタビューをしたときに「オーケストラの音は指揮者によってまったく変わる。不思議なことに、指揮台に立っただけでもその人の音が出てくる」といったお話をうかがいました。もしかすると、同じことが合唱団についても言えるのかもしれません。山田さんが合唱団の前に立った時点で、すでになにか化学反応が始まっているような気がするんですよね。
豊島岡女子学園コーラス部、東京フラウエン・カンマーコール、コンビーニ・ディ・コリスタ、どの団体にも劇的な変化が感じられました。特に印象的だったのが豊島岡女子学園コーラス部による木下牧子作曲「おんがく」。十代ならではの鋭敏な感受性がそのまま曲に直結しているようで、胸に迫るものがありました。
久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち 後編
今週は先週に続いて作曲家・久石譲さんにクラシック音楽の歴史をガイドしていただきました。ペンデレツキ、スティーヴ・ライヒ、ジョン・アダムズといった現代の作曲家たちの作品が演奏されましたが、いかがでしたか。先週のベートーヴェンやワーグナーとはまったく違った発想で作品が書かれているのを感じていただけたかと思います。
特にペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」には、「うーん」と腕組みをしてしまった方も多いかもしれません。龍さんと久石さんの会話にあったように、まるでホラー映画に出てくるような不気味な音楽と感じてもおかしくはないでしょう。事実、ペンデレツキのみならず、20世紀の前衛音楽がホラー映画に使用されることは珍しくありません。
「広島の犠牲者にささげる哀歌」はトーン・クラスターと呼ばれる新しい表現方法を使った作品として知られています。一定の音域の間にある密集した音の群をいっせいに鳴らすのがトーン・クラスター。美しいハーモニーとは別世界の斬新な音が出てきます。作曲家たちは「これまでに聴いたことのない音」を追い求め、このようなかつてない表現方法を次々と生み出してきました。
そういった知的な音の探求は今もずっと続いてはいるのですが、一方で技法があまりに先鋭化すると、一般の聴衆の共感を得られなくなるという大きな問題が出てきます。新しいけれども、多くの人が楽しめる明快な音楽はないものか。そんな疑問もわきますよね。そこで人気を獲得したのがライヒらのミニマル・ミュージック。1960年代から70年代に一世を風靡し、その後、ジョン・アダムズら次世代の作曲家たちがこの手法を独自に発展させています。
まさに今、2010年代にも作曲家たちは次々と新作を発表しています。そのなかには前衛的な作風の延長上にある人もいれば、ミニマル・ミュージック的なスタイルの人もいますし、民族音楽の要素を取り入れる人、伝統回帰を唱える人、ポスト・モダンと呼ばれる潮流に属する人などがいて、多種多様の音楽が同時に生み出されています。その意味では現代を「○○主義音楽の時代」と一言で表すことは困難です。たぶん、今がどんな時代なのかは、これから何十年も経った後にわかることなのでしょう。