3週にわたってお届けしたオーケストラと共演する夢をかなえる視聴者参加企画「夢響」。今回はオーディションで選ばれた10組による「夢のコンサート」の後編をお届けいたしました。前編に続いて、今回も驚きの連続です。みなさん、リハーサルなしで本物のオーケストラと共演しているのに、どうしてあんなにリラックスして力を発揮できてしまうんでしょうか。実際には緊張しているのかもしれませんが、それを感じさせない堂々たる演奏ぶりに目を見張ります。
最初に登場したのは小学3年生の伊藤茉央さん。かわいらしいドレス姿に癒されますが、話しぶりがあまりにしっかりしていてびっくり。演奏も軽快で、本当に楽しそうでしたね。
白樫真由美さんは難曲として知られる「魔笛」の「夜の女王のアリア」に挑戦。コロラトゥーラという高音の技巧が求められる曲で、もう信じられないような快挙です。一瞬、コンサートホールにオペラ劇場の興奮が満たされました。
飯島香織さんはまさに草笛の伝道師。草笛とオーケストラの共演なんて、想像もつきませんでした。曲はオランダの作曲家ヤコブ・ファン・エイクの「イギリスのナイチンゲール」。リコーダーでよく演奏される古楽の人気曲ですが、同じ笛でもまさか草笛で演奏するとは!
的場悟史さんはサクソフォンで真島俊夫作曲の「シーガル」を演奏してくれました。心にしみる情感豊かな演奏で、みずみずしい音色もとても印象に残りました。余韻を味わいたくなる演奏といいましょうか。
ウェーバーのファゴット協奏曲を吹いたのは、高校2年生の松本拓也さん。さわやかにファゴットの魅力を伝えてくれました。楽器のすばらしさを知ってもらいたいという「ファゴット愛」に感服します。演奏も実に見事。音楽の喜びにあふれたウェーバーでしたよね。
みなさんの音楽にかける情熱に胸が熱くなりました。
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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響 後編
オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響 前編
オーケストラと共演する夢をかなえる視聴者参加企画「夢響」、今回は前編として、10組中5組の方々がオーケストラと共演する夢を実現しました。
みなさん、オーケストラと共演するのはこれが初めて。指揮の藤岡さんもおっしゃっていましたが、みなさんぶっつけ本番で共演に臨んでいます。それなのに、全員、ちゃんと共演できているのがすごいと思いませんか。普通だったら、舞台上で緊張して、頭が真っ白になりそうなもの。でもだれひとりパニックにならずに、オーケストラといっしょに音楽を奏でていたのに本当に驚きました。
最初の田久保萌夏さんはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。演奏している表情がにこやかで、すばらしかったです。お父さんの感激ぶりにもジンときました。
葛貫恵美子さんはオカリナという意外な楽器でオーケストラと共演。コンサートホールでオカリナを聴く機会はめったにあるものではありません。素朴な音色に歌心が満ちあふれていました。
実山隼大さんは9歳。「にじ」を歌ってくれました。ピュアな歌声はもちろんのこと、話しぶりがあまりにしっかりしているのにびっくり。きっと将来ミュージカルの分野で活躍してくれることでしょう。
はるばる五島列島からやって来た15歳の保家廉太郎さんは、まさかのダンボールで共演。もう発想がぶっ飛んでいます。そして、生まれて初めて生のオーケストラを見たにもかかわらず、あの落ち着き振り。参りました。
武富浩一郎さんと武富郁弥さんは指揮とサクソフォンでの親子共演。唯一、指揮でオーディションを通過した武富さんですが、プロのオーケストラを相手に、しかも難曲である協奏曲の伴奏を指揮するという、大変なチャレンジを成功させました。ほかの方々と違って、プロの指揮者なしで演奏する難しさがあったはずですが、お父さんも息子さんも実に見事。特大のブラボーを贈りたいと思います。
オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響 オーディション編
憧れのオーケストラと共演する願いをかなえるのが、今回の視聴者参加企画「オーケストラと夢をかなえる音楽会『夢響』」。音楽のジャンルは問わず、どんな楽器でも、歌や指揮でもオーケー。北海道、東京、兵庫、福岡の全国4会場でオーディションが行なわれ、327組の参加者が集いました。
たとえ音楽を専門的に学ぶ方であっても、本物のオーケストラと共演できる機会はめったにありません。よく音楽コンクールでは、予選段階まではソロで演奏し、ファイナルだけはオーケストラと共演できるといった方式が採用されていますが、上野耕平さんのようにコンクールで生まれて初めてオーケストラと共演する例は決して珍しくはないのです。もし、だれにでもオーケストラと共演できるチャンスがあるとしたら、いったいどんな方々が集まって、どんな音楽を聴かせてくれるのか。もしかすると想像もつかないようなパフォーマンスが披露されるのではないか。「夢響」はそんな期待から出発した音楽会です。
今回はそのオーディション編。予想以上に幅広い参加者の方々から応募がありました。可能性に満ちあふれた未来の音楽家から、アマチュアとして独自の道を歩む方まで。年齢層もさまざま。ピアノやヴァイオリンから、草笛やオカリナ、段ボール箱(!)といった、通常はオーケストラと共演しないような楽器まで登場して、オーディション段階からすでに驚きの連続でした。
各地の審査員長は反田恭平さん、藤原道山さん、上野耕平さんが務めてくれました。審査基準は人の心を動かす「熱意」。コンクールのような技術的な巧拙を競うオーディションではありませんが、なかにはとてもレベルの高い方も。「夢響」本番に進めるのはわずか10組のみ。人数を絞り込むのは大変だったと思います。通過者以外にも、もっと聴きたいと思わせる方が何人もいました。
次回はいよいよ、ステージでオーケストラとともに共演する夢が実現します!
絶滅危惧楽器 バンドネオンの音楽会
バンドネオンという楽器、みなさんはご存知でしたか。バンドネオンが日本で知られるようになったのは、90年代にアストル・ピアソラの音楽がブームになったことが大きいと思います。アルゼンチンのバンドネオン奏者であり作曲家でもあるピアソラは、タンゴをベースにジャズやクラシックなどさまざまな音楽のスタイルを融合させて、まったく独自の音楽を生み出しました。
ピアソラ本人は1992年に亡くなりますが、ピアソラが作曲した名曲はジャンルを超越した広がりを見せます。世界最高峰のヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルがピアソラのアルバムをリリースしたこともあって、ピアソラの作品はクラシック音楽界でも一気に広まることになりました。もともとピアソラはパリで名教師ナディア・ブーランジェに師事して、アカデミックなクラシック音楽の教育を受けようとした時期もあったのですが、そのブーランジェがピアソラにタンゴの可能性を気づかせてくれたといいます。
そんなピアソラ・ブームとともにバンドネオンの音色は日本の音楽ファンにも親しまれるようになりました。しかし小松亮太さんの説明にあったように、この楽器はボタン配列に規則性がなく、しかも蛇腹を引いたときと押したときで違う音が出るなど、習得は容易ではありません。おまけに楽器自体が稀少なのですから、これほど入門しづらい楽器もないでしょう。
そんな珍しい楽器のバンドネオンですが、今回は6人ものバンドネオン奏者が一堂に会して「ラ・クンパルシータ」を演奏してくれました。日本でここまでバンドネオンが活発に演奏されているのは、いち早く活動を始めた小松亮太さんの功績あってこそ。ドイツで生まれたバンドネオンが、アルゼンチンに渡ってピアソラと出会い、今は日本で若い奏者たちに演奏されている。楽器の運命って、わからないものですね。