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平均年齢60歳の新人バンド!葉加瀬太郎&THE LADSの音楽会

投稿日:2025年01月25日 10:30

 今週は葉加瀬太郎&THE LADSのみなさんをお招きしました。葉加瀬太郎さんがジャンルの枠を超えて日本のトップ奏者たち9人と新たに結成したのがこのバンド。平均年齢60歳のベテランぞろいのメンバーながら、バンドとしては新人です。LADSとは若者たちの意。新しいことにチャレンジしていこうという気概がネーミングから伝わってきます。
 メンバーはドラムの屋敷豪太、ベースの渡辺等、パーカッションの田中倫明、キーボードやフルート他のマルチプレイヤーである大島俊一、マニピュレーターの八巻誠、ギターの田中義人、天野清継、チェロの柏木広樹、ピアノの羽毛田丈史。これら日本のトップミュージシャン9名にヴァイオリンの葉加瀬太郎が加わります。百戦錬磨のミュージシャンたちによる、まったくスタイルの異なる4曲をお楽しみいただきました。
 1曲目は天野清継作曲の「Moon Beams」。クロスオーバー、ジャズ、フュージョンの融合から生まれたという曲で、ソロの見せ場が満載。輝かしく、開放的なエネルギーにあふれていました。
 2曲目は柏木広樹作曲「VIDA FELIZ」。「幸せな人生」を意味する曲名にふさわしく、明るく軽快な曲調に心が浮き立ちます。葉加瀬さんのヴァイオリンは爽快。フルートのソロもカッコよかったですよね。
 3曲目は葉加瀬さん作曲の「“WATUUSI”!!」。耳なじみのない言葉ですが、“WATUUSI”(ワトゥーシ)とは「パーティでいちばん目立っているヤツ」なのだとか。ハモンドオルガンのレトロ感漂う音色が効いています。葉加瀬さんのエレキヴァイオリンも熱い!
 ドラムソロをはさんで4曲目は羽毛田丈史・葉加瀬太郎作曲の「Lads in Town」。カントリー、ブルーグラス、ジャズ、R&Bといったさまざまな要素が合わさって、独自のヴァイオリン音楽が生み出されていました。すばらしい高揚感でしたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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葉加瀬太郎が直接指導!題名プロ塾の軌跡

投稿日:2025年01月18日 10:30

 今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」のこれまでの軌跡をたどりました。プロの音楽家を目指す若者たちのために、葉加瀬さんがポップスの演奏法を指導するこのシリーズは、これまでに4回、開催されています。第1回の林周雅さんをはじめ、堀内優里さん、ミッシェル藍さん、新美麻奈さんの4名の合格者がこれまでにプロデビューを飾ってきました。
 第1回の林周雅さんの回は懐かしかったですね。「情熱大陸」のアドリブ演奏で、まさかの風船を使った演奏を披露。この荒技には度肝を抜かれましたが、オーボエ奏者の最上峰行さんからは手厳しいコメントが。でも、終わってみれば林周雅さんが見事に合格。その後の活躍ぶりには目覚ましいものがあります。
 林さんはポップスもクラシックもどちらの分野でも旺盛な活動を続けています。林さんが第2ヴァイオリンを務める弦楽四重奏団、ほのカルテットは大阪国際室内楽コンクール2023で第2位を獲得する快挙をなしとげました。注目度の高いコンクールですので、新たな弦楽四重奏団が頭角を現してきたという強い印象をクラシック音楽界に残しました。
 林さんのお話で印象に残ったのは、クラシックとポップスの違い。「リズムの感覚が真逆。クラシックではリズムの揺らぎが大切だが、ポップスはリズムが一定であることが大切」と話していました。クラシックの古典的なレパートリーでは、その作曲家や作品に応じた自然なリズムの揺らぎがあるもの。これをどう揺らがせるか、という点に奏者のセンスが現れます。しかし、クラシックであっても新しい時代の曲では、林さんの言うようにジャンルの垣根があいまいになり、ポップス的なインテンポの演奏が求められることも珍しくありません。クラシックもポップスも演奏できることは、これからの奏者にとって大きな武器になってゆくことでしょう。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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60周年記念企画⑩「山田和樹が育む未来オーケストラの音楽会~誕生」

投稿日:2025年01月11日 10:30

番組放送60周年を記念して新たなプロジェクト、18歳以下の子どもたちによる「未来オーケストラ」がスタートしました。
 指揮を務めるのは、世界的指揮者の山田和樹さん。山田さんは2009年に第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝したことをきっかけに国際的な注目を集め、現在はモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督、さらにバーミンガム市交響楽団首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーを務めるなど、目覚ましい活躍をくりひろげています。欧米のトップレベルのオーケストラへの客演も多く、昨年はニューヨーク・フィルやサンフランシスコ交響楽団にデビューを果たし、今年6月には世界最高峰の楽団であるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会へのデビューが予定されています。ベルリン・フィルへのデビューともなれば、日本のみならず世界中の音楽関係者から注目が集まることはまちがいありません。
 そんな超多忙な山田さんが今回の企画では自らオーディションに立ち会って、書類審査を通過した104名もの参加者ひとりひとりを審査してくれました。オーディションは5時間にわたる長丁場となりましたが、その結果、山田さんが出した結論はまさかの「全員合格」! 全員そろって、クラシックの名曲をメドレーでつないだ「クラシックのおもちゃ箱」に挑戦することになりました。
 参加してくれた子どもたちは年齢も楽器もさまざまでしたが、音楽にまっすぐに向き合う姿勢は同じ。山田さんはオーディションを通じて、何人もの逸材に出会います。なかには以前に番組に出演してくれた懐かしい顔ぶれも。ほとんどの子が将来は音楽家になりたいと語ることに対して、山田さんは「もはや運の問題」と語ります。ふさわしい先生に出会うことの大切さ、そして最終的には「センスと表現力」が求められるのだというお話が印象に残りました。
 はたしてどんなリハーサルでは、山田さんがどんな指導をしてくれるのか。続きが楽しみです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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箏の革命者をたどる休日~失われた音を求めて~

投稿日:2025年01月04日 10:30

 あけましておめでとうございます。今週はLEOさんとともに、筑紫箏を巡る旅へと出かけました。
 現在の箏の起源をたどると安土桃山時代に九州北部で始まった筑紫筝にたどり着くといいます。筑紫筝曲の創始者は北九州の善導寺の僧侶、賢順。賢順は幼少時に善導寺で善導寺楽を通して筝と出会いました。賢順の弟子であった法水は、江戸で八橋検校に出会います。もともと三味線の名手として名を馳せていた八橋検校は、法水から筑紫箏を学んで箏に転向し、芸術音楽としての近世箏曲を確立するに至りました。
 佐賀県多久市の郷土資料館でLEOさんたちが目にしたのは、450年前の筑紫筝。そんなに昔の楽器なのに保存状態は意外と良いようですね。全面漆塗りで、美術品としての価値も感じさせる点は、西洋音楽の楽器と似ています。それにしても16世紀後半に製作された楽器が現存しているのはすごいことではないでしょうか。よくヴァイオリンの名器として、イタリアのストラディヴァリウスが挙げられますが、ストラディヴァリウスは17世紀後半から18世紀初めに製作されていますので、筑紫筝はさらに古い時代の楽器ということになります。
 残念ながらオリジナルの楽器を鳴らすことはできませんが、筑紫筝曲研究の第一人者、宮崎まゆみ先生のご協力により、復元楽器の筑紫筝をLEOさんに弾いてもらうことができました。「だいぶ小さくて、かわいらしい」と話すLEOさん。弾き方もずいぶん異なるようです。LEOさんが復元楽器で演奏してくれたのは「小倉の曲」。芯があって深みのある音色が印象的でした。グリッサンドにも味わいを感じます。
 さらにLEOさんは筑紫筝と二十五弦筝を用いて、旅から得たインスピレーションをもとに作った「常若」を演奏。幽玄な筑紫筝ときらびやかな二十五弦筝を組合せて、幻想的な世界を描き出していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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