今、じわじわとケルト音楽の人気が高まっています。今週は「ケルト音楽を楽しむ休日」。ケルト音楽といわれて、なんのことかピンと来ないという方も、映画「タイタニック」の一場面を見て「ああ、あんな感じの曲のことか!」とイメージがわいた方もいらっしゃることでしょう。一般にケルト音楽といった場合、アイルランドやスコットランドの伝統音楽や、これらに影響を受けたポピュラー音楽を指すことが多いようです。
豊田耕三さんが、ファイナルファンタジーにアイルランド音楽風のBGMがふんだんに使われているとおっしゃっていましたが、これも言われてみればなるほどと思い当たります。ゲーム内の古いヨーロッパ風の世界観にぴったりと合致していて、同時にどこか懐かしさを感じさせる音楽。植松伸夫さんは「喜びと悲しみが同居している音楽」と表現していましたが、それってなんだかモーツァルトみたいですよね。
アイリッシュ・パブでみなさんが楽器を持ち寄っていっしょに演奏している様子が映っていましたが、こういったセッションも楽しそうです。最近、刊行された書籍に「アイリッシュ・ミュージック・セッション・ガイド」(バリー・フォイ著/おおしまゆたか訳)という一冊があります。これは豊田耕三さんが「セッションで顔を合わせるミュージシャン、フェスティヴァルに参加する人たち、みんなに配りたい!」と推薦文を寄せる気軽な入門書です。「セッションではどんな曲が演奏されるの?」という問いに対して、著者の答えは「1にリール、2にリール、3、4がなくて5にリールだ。その次はずっと離されてジグが来る」。
どんだけリールが好きなのかと思いますよね。番組のおしまいで演奏された「ケルトの伝統音楽」が、そのリール。素朴なんだけれども、なぜかいつまでも浸っていたくなるような中毒性があると思いませんか。
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ケルト音楽を楽しむ休日
アニメ特撮音楽の巨匠・渡辺宙明&俊幸の音楽会
アニメ特撮音楽の世界にも、歌い継がれる名曲がたくさんあります。今週は渡辺宙明さんと渡辺俊幸さん親子をお招きして、この分野の名曲の数々をお届けしました。世代によっては、泣けてくるほど懐かしい曲のオンパレードだったのではないでしょうか。
「マジンガーZ」「鋼鉄ジーグ」「ゴレンジャー」「野球狂の詩」。アニメ特撮音楽の名曲がずらりとそろいました。子供の頃に耳にした曲を、大人になってから聴いてもぐっと来るのが宙明サウンド。渡辺宙明さんはこの分野に300曲もの作品を残しているというのですから驚きます。質と量の両面で巨匠と呼ぶほかありません。
番組では宙明サウンドの特徴として「2・6抜き短音階」(マイナーペンタトニックスケール)と「スキャットの活用」が挙げられていました。世界各地の民謡などにも用いられるという「2・6抜き短音階」ですが、この音階が曲に普遍的な力強さや、どことなく懐かしい手触りをもたらしているのかもしれません。
スキャットの使われ方もとても印象的です。「ゴレンジャー」の「バンバラバンバンバン」、鋼鉄ジーグの「バンバババン」、「野球狂の詩」の「ルルル~」。どれも物語世界に即した性格のスキャットになってるんですよね。
おもしろかったのは、全編スキャットで歌われる「野球狂の詩」の発想の源が、スウィングル・シンガーズのバッハにあったというお話。スウィングル・シンガーズは一世を風靡したア・カペラのヴォーカル・グループです。クラシック音楽のレパートリーにも積極的で、デビューアルバムの「ジャズ・セバスチャン・バッハ」は名盤として知られています。よもやこんなところから日本のアニメ特撮音楽への影響があったとは!
それにしても石丸さんの「ゴレンジャー」があまりにも似合っていて、違和感が微塵もありませんでした。アニソンの女王、堀江美都子さんとの共演はゴージャスの一語に尽きます。
フィギュアスケートの音楽会2017
今週は「フィギュアスケートの音楽会2017」。フィギュアスケートではふつう、録音に合わせて選手が演技をしますが、今回はそれを逆にして、演技の映像に合わせてオーケストラが生演奏をするという趣向の音楽会でした。
なにしろ演技にぴたりと音楽が同期しなければいけませんから大変です。演奏と映像がずれるのを防ぐために、奏者がイヤホン経由で映像に同期したカウントを聞きながら、これに合わせるという複雑な方法をとっていました。ということは、指揮者の三ツ橋敬子さんは、目で楽譜と映像を確認し、耳でカウントとオーケストラの演奏を聴きながら、棒を振っていたわけです。脳内はフル回転だったと思いますが、これは離れ技でしょう。
フィギュアスケートの音楽といえば、原曲の大胆なアレンジも特徴です。演技の構成や長さの規定に合わせるという必然があってのことなのでしょう、原曲をカットしたりつなげたり、順番を変えたり、いろいろな工夫が施されています。宇野昌磨選手のヴィヴァルディ「冬」の構成がおもしろかったですよね。第3楽章ではじまって、いつのまにか第1楽章にジャンプしているという思い切った構成なのですが、演技のストーリーに沿っているからでしょうか、映像を見ながら聴くと編曲に説得力があります。
ちなみにこの曲にはおそらく作曲者自身が用意したと思われるソネット(詩)が残されています。「冬」の第3楽章には氷の上を歩く場面が描かれていますので、フィギュアスケートに使われるのは納得です。
最後はゲストの小塚崇彦さんが世界選手権で銀メダルを獲得した際の曲、リストのピアノ協奏曲第1番。楽曲自体に圧倒的な迫力があって、アスリート的な要素を感じさせます。鍵盤と銀盤の超絶技巧が見事に一体化していました。
アジアの楽器を楽しむ音楽会
これほどたくさんの民族楽器が一堂に会する場面を見る機会はまずありません。今週は「アジアの楽器を楽しむ音楽会」。アジアのさまざまな国と地域から32名の奏者、36種類の伝統楽器が集まって、「ONE ASIA クラシック・オーケストラ」が編成されました。楽器の種類は一般的な西洋楽器のオーケストラよりずっと多いことになります。これだけ多彩な楽器を使って、ひとつの音楽を演奏するという発想がユニークです。
珍しい楽器がたくさん登場しましたが、とりわけ異彩を放っていたのがベトナムのダン・バウ。一本しかない弦を指で触り、もう片方の手で弦の張力を変えながら音程をコントロールするという独特の演奏法が用いられていました。音色もとても神秘的。なんとなく電子楽器のテルミンをほうふつさせるのがおもしろいですね。
楽器の違いに加えて、目を奪われたのは色とりどりの民族衣装です。アジアの広さ、多様性を感じずにはいられません。
その一方で、韓国のカヤグムと日本の箏などのように、お互いのよく似たところも感じます。地理的な近さから似た楽器があるのは自然なこと。そもそも楽器の発音機構は西洋楽器とそれほど違うわけでもないようです。弦をはじいたりこすったりして音を出す弦楽器は、西洋楽器で言えばヴァイオリンやギターの親戚ともいえるでしょう。竹などを使った木製の管楽器でリードが付くタイプと付かないタイプがあるのは、オーボエやリコーダーを連想させます。木や金属、皮を叩く多種多様な打楽器があるのも、西洋の楽器と同じ。アジアの民族楽器であっても、西洋の楽器と同じく、おおむね弦楽器、管楽器、打楽器に大別できるようです。
文化背景が違っても、人間の考えることは意外と変わらないんだな。そんなことも感じました。