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世界を変える!!超新星の音楽会2026

投稿日:2026年05月30日 10:30

 今週はクラシック音楽界の未来を担う超新星、ピアノの天野薫さんとホルンの田中瑛大さんをお招きしました。おふたりともまだ中学生。演奏はもちろんのこと、話しぶりもしっかりしていて、本当にびっくりします。
 天野薫さんは12歳。2025年6月に開催された仙台国際音楽コンクールのピアノ部門で第3位および聴衆賞を獲得して、大きな話題を呼びました。ジュニアのコンクールではなく、大人も受けるコンクールでの受賞です。しかもファイナルで演奏したのが、矢代秋雄のピアノ協奏曲。矢代秋雄(1929~1976)は20世紀の日本を代表する作曲家のひとり。パリ音楽院に留学してフランスの伝統的書法を身につけ、妥協を許さない創作態度で磨き抜かれた作品を残しました。完全主義者として知られ、しかも46歳で急逝したため、残された作品は多くありませんが、没後50年を迎えて若い世代の演奏家からの注目が高まっているように思います。
 番組では、天野さんは矢代秋雄のピアノ・ソナタの第2楽章を演奏してくれました。作曲は1961年。モダンなスタイルで書かれていますが、天野さんは「歌を感じて弾いている」と言います。決してわかりやすい曲ではないかもしれませんが、こういった曲であっても、音楽に無理のない自然な流れが感じられるところがすばらしいと思います。また、ドビュッシーの「喜びの島」からは豊かなイマジネーションが伝わってきました。
 ホルンの田中瑛大さんは13歳。日本ジュニア管打楽器コンクール金賞、ジュニアソロホルンコールで優勝を果たした新星です。福川伸陽さんが「いろんな人を幸せにする音を持っている」と太鼓判を押してくれましたが、まさにその通りの演奏をモーツァルトのホルン五重奏曲とピアソラの「アヴェ・マリア」で披露してくれました。モーツァルトは明るく溌溂としているだけではなく、陰影も豊か。寂しげな表情が心に残ります。ピアソラの「アヴェ・マリア」では、のびやかなメロディからほのかなノスタルジーが漂ってきます。ホルンという楽器の魅力が存分に伝わってくる演奏でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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クラシックの殿堂!サントリーホール40周年③ 最多出演の名匠・小林研一郎が祝祭をあげる音楽会

投稿日:2026年05月23日 10:30

 今週は開館40周年を迎えたサントリーホールからお届けする第3弾。日本のクラシック音楽界を牽引してきた名匠、小林研一郎さんがサントリーホール祝祭オーケストラを指揮してくれました。これまでにサントリーホールで500回以上指揮をしてきた小林研一郎さんは、「炎のマエストロ」の愛称で親しまれています。86歳を迎えてもなお、その情熱の炎が衰えることはありません。
 今でこそ「音楽の殿堂」として親しまれるサントリーホールですが、1986年の開館当初は交通の便がよくなかったため、「陸の孤島」のように言われていました。しかし、このすばらしいホールで演奏したいと、89年に日本フィルが定期演奏会の会場をサントリーホールへと移行します。当時、日本フィルの首席指揮者を務めていたのが小林研一郎さんでした。その後、地下鉄の溜池山王駅や六本木一丁目駅ができて、ホールへのアクセスは格段によくなりました。現在ではほとんどの在京オーケストラがこのホールで定期的に演奏しています。また、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど、来日オーケストラの多くが、サントリーホールで公演を行っています。
 今回、小林研一郎さんが指揮したのは、ブラームスの交響曲第1番より第4楽章。名手たちが集うサントリーホール祝祭オーケストラとともに、すばらしいブラームスを演奏してくれました。マエストロが指揮台に立つと、それだけで空気が一変。オーケストラから気迫のこもった力強い音がわきあがってきます。
 この楽章の中ほどで、弦楽器による歌うようなメロディが奏でられます。よくベートーヴェンの「第九」の「歓喜の歌」に似ていると言われるメロディですが、マエストロによれば「暗黒から光明へと転じる勝利と歓喜のメロディ」。緊迫感あふれる楽章の途中で、このメロディが登場すると、ほっとした気分になるんですよね。終結部は輝かしく、高揚感にあふれています。忘れがたい名演が誕生しました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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クラシックの殿堂!サントリーホール40周年②世界中から愛されるホールの館長・堤剛が贈る音楽会

投稿日:2026年05月16日 10:30

 今週は先週に引き続き、今年開館40周年を迎えたサントリーホールからお届けいたしました。サントリーホールの館長を務めるのは、チェロの巨匠、堤剛さん。83歳の現在も現役チェリストとして活躍しています。
 今回は堤さんの独奏、小林研一郎さん指揮サントリーホール祝祭オーケストラによる演奏で、チャイコフスキーの傑作、「ロココ風の主題による変奏曲」を全曲お楽しみいただきました。この曲はチェリストにとって欠かすことのできないレパートリーと言ってよいでしょう。親しみやすく、しかも華やか。作品自体に親密な雰囲気があります。
 「ロココ」とは本来は美術や建築で使われた用語ですが、音楽作品では優雅で軽やかな、洗練されたスタイルを指しています。ここでは18世紀趣味、すなわちモーツァルトが生きていた時代への憧憬を表すものと考えればよいでしょう。チャイコフスキーがもっとも敬愛した作曲家がモーツァルトでした。まるでモーツァルト時代のようなコンパクトな編成のオーケストラが用いられ、冒頭のロココ風の主題が次々といろいろな表情に変奏されます。主題と変奏という形式もモーツァルトが得意としていました。
 チャイコフスキーはこの曲を書くにあたって、盟友であるチェリスト、ヴィルヘルム・フィッツェンハーゲンの助言を得ました。ところがフィッツェンハーゲンは助言をするにとどまらず、初演にあたり作曲者に無断で一部の変奏をカットしたり、変奏の順番を入れ替えてしまいました。楽譜はフィッツェンハーゲンが手を入れた形でそのまま出版され、これが現在も広く演奏されています。オリジナルに比べると、フィッツェンハーゲン版は華やかな変奏が最後に置かれるなど、演奏効果が優先されているように感じます。チャイコフスキーは決して嬉しくはなかったでしょうが、これだけ曲の人気が高いのはフィッツェンハーゲンのおかげなのかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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クラシックの殿堂!サントリーホール40周年①鈴木優人&反田恭平~次世代がつなぐ音楽会

投稿日:2026年05月09日 10:30

 今回より3週にわたって、今年開館40周年を迎えた「クラシック音楽の殿堂」サントリーホールを舞台に、日本のクラシック音楽界を牽引するアーティストたちをお招きいたします。1週目は若い世代を代表して、このホールと縁の深い鈴木優人さんと反田恭平さんにご登場いただきました。
 生の音を聴くクラシック音楽では、ホールも楽器のひとつと言っても過言ではありません。サントリーホールは1986年に東京で初めてのコンサート専用ホールとして誕生し、そのすぐれた音響は海外にも広く知られています。毎日のように内外のトップアーティストたちが舞台に立ち、旺盛な活動がくりひろげられています。
 サントリーホールの誕生にあたっては、当時の大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンのアドバイスが生かされました。客席がステージをぐるりと囲むヴィンヤード型は、カラヤンが率いるベルリン・フィルの本拠地と同じスタイル。聴衆と音楽家の一体感が特徴です。さらにカラヤンが「オルガンのないコンサートホールは家具のない家のようなもの」と言ったことから、オーストリアのリーガー社による世界最大級のオルガンが設置されることになりました。
 今回は鈴木優人さんがサントリーホールが誇るオルガンで、バッハの前奏曲とフーガ「聖アン」より前奏曲を演奏してくれました。輝かしく荘厳な曲想から祝祭感があふれ出てきます。足鍵盤を巧みに操る様子が印象的でしたね。
 反田恭平さんは精鋭ぞろいのサントリーホール祝祭オーケストラとともに、モーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」第3楽章で弾き振りを披露。この曲は1790年にフランクフルトで行われた神聖ローマ皇帝レオポルト2世の戴冠式に合わせて演奏されたことから「戴冠式」の愛称で呼ばれます。晴れやかで高揚感にあふれた爽快なモーツァルトでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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トランペットの魅力をもっともっと伝えたい!音楽会

投稿日:2026年05月02日 10:30

 今週は大活躍中のトランペット奏者、児玉隼人さんと松井秀太郎さんのおふたりをお招きして、さまざまなジャンルのトランペット作品をお聴きいただきました。休みの日に好きな楽譜を持ち寄って、いっしょに練習するほど仲のよいおふたりですが、演奏する音楽のジャンルもトランペットの音色もずいぶんと違います。
 最初に児玉さんが演奏してくれたのは、ファッシュのトランペット協奏曲ニ長調より。ファッシュはバッハと同時代のドイツで活躍した後期バロック時代の作曲家です。各地の宮廷楽長を務め、バッハにも一目置かれるほどの名声を獲得していました。ピッコロトランペットの明るい音色による軽やかで優美な楽想はまさに宮廷の音楽にぴったり。
 同じピッコロトランペットを用いても、松井さんの自作Cats’ Battleではまったく違った音色が使われ、実に多彩な表現が生み出されていました。さらに松井さんはデューク・エリントンのIn a Mellow Toneで、とても自由でインスピレーションにあふれた音楽を披露。トランペットとピアノの対話から、その瞬間瞬間にふさわしい音楽が生まれてくるところがすばらしいですよね。
 児玉さんがピアノの阪田知樹さんと共演したのは、20世紀ドイツの作曲家ヒンデミットのトランペット・ソナタ。第3楽章は「葬送音楽」と記され、「すべての人は死ななければならない」という古いコラールが引用されています。作曲は1939年。ヒンデミットはナチスと対立してドイツを逃れ、スイスに滞在していた時期にこの曲を書きました。そんな時代背景もあって、このように峻厳で内省的な音楽が生まれたのでしょう。
 おしまいに演奏されたハイドンのトランペット協奏曲は、この分野における名曲中の名曲。クラシックではあらゆるトランペット奏者が吹くといっても過言ではありません。陰影豊かでエレガントな児玉さんの演奏も、大胆なアレンジによる松井さんの演奏も、どちらも爽快でした。トランペットの魅力がぎっしりと詰まっていましたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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