西洋楽器と組合せても、楽器の特徴が生きるのが箏。今回は箏にぴったりの楽曲を独自のアレンジでお楽しみいただきました。
一曲目は坂本龍一の「1919」。原曲はピアノ、ヴァイオリン、チェロによるトリオに、1919年のレーニンの演説が重ねられています。今回はこれを箏とピアノとチェロのトリオのためにアレンジ。箏の特殊奏法が次々と飛び出して、想像以上に色彩感豊かな音楽になっていました。3人の演奏から張りつめた雰囲気が伝わってきて、なんともカッコよかったですよね。
ドビュッシーの「亜麻色の髪のおとめ」の原曲は、前奏曲集第1集に収められたピアノ独奏曲。本来、ピアノ独奏のために書かれた曲を、箏とピアノのデュオで演奏したわけですが、不思議なほど違和感がありません。LEOさんいわく「お箏の古典を演奏しているような感覚になる」。こちらも箏の音色が多彩で、音と音の余白から生まれる余韻が豊かなイメージを喚起します。
チック・コリアの「スペイン」は、箏とピアノとギターのトリオで。どの楽器もシャープな音色を表現できる楽器ですので、とても躍動感にあふれた「スペイン」になっていました。「1919」でチェロを弾いていた伊藤ハルトシさんが、ここではさりげなくギターを弾いていてびっくり。チェロとギターの両方ができるなんて、すごすぎます!
最後の曲の藤倉大作曲「Ryu(竜)」はLEOさんが委嘱した作品です。イギリスを拠点に活躍する藤倉大さんは、現代音楽の世界では知らぬ人がいない存在。ヨーロッパの歌劇場でオペラが上演されるほど国際的に活躍する作曲家なのですが、邦楽器にはなじみが薄かったため、LEOさんと何度も楽譜や演奏動画のやり取りをしながら作曲を進めていったと言います。優雅さ、力強さ、生命力、神秘性など、楽曲からいろいろなイメージが伝わってきたのではないでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)