今週は葉加瀬太郎さんによる「題名プロ塾」の後編をお届けいたしました。前回、一次審査を通過した武田さん、林さん、出垣さんの3名が最終審査で日本のトップレベルのプロ・ミュージシャンたちと共演。アドリブ付きの「情熱大陸」に三者三様の個性が発揮されていました。
最初の武田さんは、流麗な演奏スタイルによる「情熱大陸」。アドリブ部分にも優美さが感じられました。最初に葉加瀬さんから「リズムがこけている」という指摘がありましたが、もう一度やり直すとぐっと引きしまった演奏になりました。
2番目の林さんはアドリブでの奇策がぶっ飛んでました。楽器を置いたときにはなにが始まるのかと思いましたが、まさか風船を引っ張り出すとは! 風船から出る空気で音程を作ってくれた場面には思わず爆笑。あっけにとられる葉加瀬さんの表情がよかったですね。ユニークなアイディアでしたが、オーボエの最上さんからは厳しい指摘も。でも、メロディ部分は切れ味鋭く、勢いがありました。
出垣さんの持ち味は全身の動きを生かした魅せるスタイル。演奏も思い切りがよく、伸びやか。アドリブにも工夫が感じられて、とてもすばらしかったと思います。なにより演奏姿のにこやかさがいいですよね。聴いている人がハッピーになれるヴァイオリンと言えばいいでしょうか。バンドのメンバーを引き込む力もあって、得難い資質を感じさせます。
そして注目の結果発表で選ばれたのは林さん! アドリブが物議を醸すものだっただけにどうなることかと思いましたが、結果的には演奏力の高さが評価されることになりました。ぜひ本番の舞台でキレッキレのヴァイオリンを披露してほしいものです。出垣さんも高評価でしたが、ご本人がおっしゃていたように「ここからがスタート」。きっと別の形でまたお名前を目にする機会があると期待しています。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)