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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2026 前編

投稿日:2026年08月29日 10:30

 今週は年に一度のスペシャル企画「夢響」前編の模様をお届けしました。オーディションを通過した参加者たちが、ついに田中祐子さん指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との共演を果たしました。
 最初に登場したのは小学4年生の遠藤陽太さん。将来の夢は世界一のヴァイオリニストです。学校がある日でも毎日4時間の練習をしていると言います。バッハのヴァイオリン協奏曲第1番の第3楽章を、生き生きと演奏してくれました。音楽に躍動感が感じられましたね。
 2番手はピアノの髙田道子さん。音大を卒業したものの、アメリカのウォール街で金融トレーダーに転身。バブル崩壊で失業し、夫の病気や親の介護を経て、72歳のときにおよそ30年ぶりにピアノを再開しました。曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第23番の第1楽章。モーツァルトならではの豊かな陰影と繊細なニュアンスが伝わってきました。
 3番手はオーボエの加茂宏治さん。なんと、加茂さんはボディビルダーです。オーボエもボディビルも日々のストイックな練習が欠かせないと言います。大島ミチル作曲の「風笛」で、オーケストラと共演を果たしました。応援団には師匠である読響の首席オーボエ奏者の金子亜未さんの姿も。ピアノパートの演奏は小林愛実さん。超強力なサポートが実現しました。愁いを帯びた甘美な音色がすばらしかったです。
 4番手は小学6年生の広瀬冬悟さん。ピアノを弾くだけではなく、作曲にも取り組んでいるところがすばらしいですね。多摩市子ども被爆地派遣員として広島を訪れた印象をもとに作った曲が「HIROSHIMA〜生きて伝える平和〜」。自作を弾いてオーケストラと共演するというのは、まさに音楽家の夢でしょう。ピアノとオーケストラが一体となった、高揚感あふれる演奏だったと思います。
 来週の後編ではさらに4人の参加者がオーケストラと共演する夢をかなえます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2026 オーディション編

投稿日:2026年08月22日 10:30

 オーケストラと共演する夢をかなえる「夢響」が今年も開催されます。今回はそのオーディション編。オーディションには書類選考を通過した約60名が参加しました。審査員を務めたのはチェリストの宮田大さんと指揮者の田中祐子さん。最終審査の結果、オーケストラと共演する8名が選出されました。
 ヴァイオリンの日置駿さんは「芸術に中断はない」という言葉に触発されて、会社員生活のかたわら音楽活動を再開。音楽に対する情熱が伝わってきました。
 ピアノの髙田道子さんは、オーケストラと共演する長年の夢を、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番でかなえます。味わい深いソロを聴かせてくれましたが、オーケストラと共演することでどうなるのか、楽しみです。
 ヴァイオリンの遠藤陽太さんは、世界一のヴァイオリニストを目指す小学生。その第一歩が夢響でのソリストデビューだと言います。頼もしいですね。
 ハープを演奏してくれたのは、小学生の高井なな美さん。お弁当箱に人魚がハープを弾く絵が描いてあったことが、ハープを始めたきっかけだという素敵なエピソードを紹介してくれました。
 ヴァイオリンの菊地結大さんも小学生。マロ先生(元NHK交響楽団コンサートマスターの篠崎史紀さん)のようなカッコいいコンサートマスターになりたいと話してくれました。小学生にして、すでにスター性が感じられます。
 オーボエの加茂宏治さんはボディビルダー。筋肉とオーボエという組合せがインパクト抜群です。とても甘美な音色を聴かせてくれました。
 ピアノの広瀬冬悟さんは小学生。ピアノを弾くだけではなく、自分で作曲した曲をピアノ協奏曲にして、世界中のみんなに聴かせたいという大きな夢の持ち主です。
 声楽の川田雄輝さんは、まだ音楽を始めて3年目。若くして亡くなったオペラ歌手の兄が、なぜそこまで音楽を愛したのかを知るために声楽を始めたといいます。
 いよいよ来週はオーケストラとの共演が待っています。夢の実現まで、あと一歩です!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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“音楽会のお宝映像”を鑑賞する休日~ディズニー編

投稿日:2026年08月15日 10:30

 今週は番組の「お宝映像」から、ディズニーの名曲を集めてお届けしました。出演はダイアモンド☆ユカイさん、高嶋ちさ子さん、山崎育三郎さん、Toshlさん、May J.さん他。豪華メンバーがずらりと並びました。こうして聴くと、あらためてディズニーの音楽は名曲ぞろいだと感じますね。
 映画「トイ・ストーリー」の「君はともだち」を書いたのは、シンガーソングライターのランディ・ニューマン。1995年の「トイ・ストーリー」で初めてアニメーション映画のために曲を書きました。「君はともだち」は、わずか1日で書き上げられたといいますが、曲は「トイ・ストーリー」を象徴する曲になりました。
 映画「アラジン」と実写版「美女と野獣」の作曲者はアラン・メンケン。「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれる1990年代の隆盛を支えた立役者のひとりです。アラン・メンケンはブロードウェイ・ミュージカルの語法をアニメーション映画に持ち込んで、大きな成功をもたらしました。「ホール・ニュー・ワールド」や「美女と野獣」は、単なる挿入歌ではなく、歌そのものがドラマを進める役割を担う点で、まさにミュージカル的です。
 今回は実写版「美女と野獣」から2曲が選ばれていますが、山崎育三郎さんが歌った「ひそかな夢」は2017年の実写版のために新たに作曲された曲です。一方、Toshlさんが歌った「美女と野獣」は1991年のアニメーション版から使われる名曲。同じアラン・メンケンが四半世紀以上を隔てて、同じ物語のために曲を書いているのです。
 映画「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」の作詞・作曲はクリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペス。メンケンらが築いたディズニー・ミュージカルの伝統を受け継ぎ、現代へと発展させてきた次の世代のソングライター夫妻です。エルサの自己解放に至る心情がドラマティックに表現されていて、現代のディズニーらしい一曲だと感じます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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背筋も凍る!恐怖を感じる音楽会

投稿日:2026年08月08日 10:30

 今週は夏の納涼企画として、恐怖を感じる曲を集めてみました。まるでホラー小説を読んでいるような気分を音楽で味わえたのではないでしょうか。
 ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番品70-1は「幽霊」の愛称で親しまれています。命名者がだれなのかはわかりませんが、今回お聴きいただいた第2楽章には、いかにもお化けが出てきそうな雰囲気がありました。ベートーヴェンの死後、弟子のチェルニー(ピアノの教則本で有名)が、この楽章について「幽霊のようで恐ろしく、地下から現れたようだ。シェイクスピアの『ハムレット』の父王の幽霊の出現場面を思い出す」と記しています。おそらく、この記述に共感した人たちの間で、次第に「幽霊」の愛称が広まっていったのでしょう。
 現代において恐怖の音楽のシンボルとなっているのは、ヒッチコックの映画「サイコ」のシャワーシーンに登場するヴァイオリンの高音です。作曲者は数多くの映画音楽で知られるバーナード・ハーマン。ほとんど効果音に近い曲ですが、「殺人」という曲名が付いています。一説によれば、元ネタはフィンランドの作曲家シベリウスの交響的幻想曲「ポホヨラの娘」。曲の後半で、よく似たフレーズが登場します。この曲はフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」にもとづく作品です。主人公の老賢者ヴァイナモイネンが美しいポホヨラの娘に求婚するも、娘は「自分が与えた試練を乗り越える男しか相手にしない」と言って無理難題をふっかけます。ヴァイナモイネンは魔法の力で課題をクリアしていきますが、最後に失敗して、娘に嘲笑されるのです。その場面が「サイコ」にそっくりなのですが、なんともひどい話ですよね。
 プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番の第1楽章には作曲者が「墓場にそよぐ風」と形容した、ヴァイオリンの風のようなパッセージが登場します。この曲、不気味ですけど、本当に美しいと思いませんか。プロコフィエフの型にはまらない天才性を感じます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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新しいクラシックの音楽会2026夏

投稿日:2026年08月01日 10:30

 今週は好評企画「新しいクラシックの音楽会」の第5弾。クラシックと言えば遠い過去の音楽と思われがちですが、今も新しい作品が次々と誕生しています。近年の傾向としては、ポップスやジャズなど他ジャンルとの境界がますます曖昧になっていることが挙げられると思います。
 今回、焦点を当てたのはミニマル・ミュージック。最小限のフレーズを反復したり、フレーズをずらすことで生まれる変化におもしろさがある音楽です。ミニマル・ミュージックそのものは決して新しいものではありません。1960年代のアメリカから誕生した音楽で、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスといった人たちが、この分野の旗手となって、新たな潮流を生み出しました。これらはジャンルの境界を越えた音楽の先駆例とも言えるでしょう。ミニマル・ミュージックは、クラシック側からもポップ・ミュージック側からも聴衆を獲得しました。
 この潮流を受けて誕生した1980年代以降の音楽は、しばしば「ポスト・ミニマル」の言葉でくくられます。その代表的な作曲家のひとりが、今回、廣津留すみれさんが紹介してくれたアメリカのジョン・アダムズ。初期のミニマル・ミュージックに比べると、より柔軟な書法で書かれており、とくにジョン・アダムズは躍動感に加えて、ハーモニーや色彩感の豊かさに特徴があります。一曲目の「ロード・ムービーズ」は、廣津留さんのコメントにあったように「景色がどんどん変わっていく」タイプの曲。車でアメリカの風景を走り抜けるような感覚があります。
 蓮沼執太さん作曲の「centers」は、ミニマル・ミュージックに影響を受けて生まれたテクノやヒップホップが着想源になっていると言います。ミニマル・ミュージックになじんでいるクラシック音楽ファンの方も、抵抗なく楽しめたのではないでしょうか。これもジャンルではくくれない魅力を持った音楽だと思いました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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