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すぎやまこういちが指揮をするドラゴンクエストの音楽会

投稿日:2026年09月26日 10:30

ドラゴンクエストシリーズの第1作が発売されたのは1986年のこと。今年でシリーズ40周年を迎えます。このシリーズを語るうえで欠かせないのが、すぎやまこういちの音楽。ファミコン時代には同時発音数が最大で3音までというハードウェアの制約があったにもかかわらず、すぎやまこういちはオーケストラの壮大なサウンドをイメージして、「ドラクエ」の音楽を作曲しました。オーケストラのための交響組曲「ドラゴンクエスト」は、そんな作曲者のイメージが実際に形になったものと言えるでしょう。本日は作曲者自身の指揮による貴重な映像をお楽しみいただきました。
 「ドラゴンクエストI」の「序曲」は深い森を思わせるホルンの響きで始まります。「ドラクエIV」以降は勇ましいトランペットのファンファーレで開始されるようになりましたが、このホルンの導入も趣があってすばらしいですよね。さらに交響組曲版では「展開部」とでも言うべき部分が付いています。まるでベートーヴェンの交響曲のよう。
 「ドラゴンクエストII」の「この道わが旅」はゲームのエンディングテーマ。「ドラクエII」は難易度が高かったので、苦労してエンディングにたどり着いたときの感激もひとしお。当時はゲーム途中のセーブデータを保存する仕組みがなく、代わりに「ふっかつのじゅもん」と呼ばれる長い文字列をメモしていたのですが、写し間違いでゲームを再開できなくなる事故が続出したものです……。
 「ドラゴンクエストVI」の「魔王との対決」では、印象的な「悪のモチーフ」が使われています。「ドラクエVI」ではいろんな場面で「悪のモチーフ」が駆使されていました。ショスタコーヴィチばりの緊迫感があります。
 「ドラゴンクエストIII」の「そして伝説へ」は、多くの人の記憶に残るエンディングテーマでしょう。ノスタルジーを湛えた曲想が、冒険の記憶を呼び起こします。輝かしいけれど、少し切ない。長い旅を終えたプレーヤーの気持ちに寄り添ってくれる名曲だと思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ベートーヴェンが残した“ヴァイオリン・ソナタの最高傑作”を聴く音楽会

投稿日:2026年09月19日 10:30

 来年のベートーヴェン没後200年に向けて、クラシック音楽界ではあらためてベートーヴェンに注目が集まっています。今週はヴァイオリンの辻彩奈さん、ピアノの阪田知樹さんをお招きして、ベートーヴェンの大傑作、「クロイツェル・ソナタ」の第1楽章を演奏していただきました。おふたりも話していたように、まるで交響曲のようなスケールの大きさ。スリリングな演奏に圧倒されました。
 この曲はジョージ・ブリッジタワーという名のアフリカとヨーロッパにルーツを持つヴァイオリニストによって初演されました。ベートーヴェンはブリッジタワーの演奏に感激し、いったんは曲を献呈すると決めます。ところがある女性を巡ってブリッジタワーとベートーヴェンがつまらない喧嘩をしたことから、献呈は取り止めに。代わりに当代一流の名手、クロイツェルに献呈されたのですが、クロイツェルは一度もこの曲を演奏していません。それにもかかわらず、「クロイツェル・ソナタ」の名が定着してしまったのです。
 文豪トルストイはこの曲に触発されて、中篇小説「クロイツェル・ソナタ」を残しました。この小説の主人公は、妻が音楽仲間の男性ヴァイオリニストとベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を共演する様子から、ふたりの関係を疑い、嫉妬心から妻を刺し殺してしまいます。ベートーヴェンの曲は理性を揺さぶり、情念を突き動かすものとして描かれています。
 そして、このトルストイの小説に感銘を受けたのが、チェコの作曲家ヤナーチェクです。ヤナーチェクは弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」で、抑圧された女性の情念や苦悩を表現しています。おもしろいのは、ヤナーチェクは殺される妻の側に共感して曲を書いている点でしょう。
 こうしてクロイツェルの名は音楽から文学へ、さらに文学から音楽へと伝えられていきますが、もともとはブリッジタワーの名が付くべき作品だったことを思い出すと、複雑な気分になりますね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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世界の音楽ジャンルを盗め!ルパン三世の音楽会

投稿日:2026年09月12日 10:30

 今年5月に逝去した作曲家・ジャズピアニストの大野雄二さんは、映画やテレビ、アニメなどの分野に数々の名曲を残しました。なかでも代表作と言えるのが「ルパン三世のテーマ」。1977年のテレビアニメ「ルパン三世」で用いられて以来、さまざまなアレンジによって親しまれてきました。今回はルパン三世さながらの鮮やかな手口で世界の音楽ジャンルを盗み、さまざまなアレンジによる「ルパン三世のテーマ」をお楽しみいただきました。
 最初に登場したのは鈴木優人さん。ルパン三世の祖父、怪盗アルセーヌ・ルパンの国フランスから、バロック期の舞曲のスタイルを盗みます。バロック期の組曲の基本舞曲であるクーラントとジーグのスタイルにより、チェンバロ独奏で「ルパン三世のテーマ」を演奏してくれました。バロック音楽との出会いから、ルパン三世が雅に生まれ変わります。なんというカッコよさ!
 続いて、豊田耕三さんが盗んだのはアイリッシュ音楽のスタイル。アイルランドのダンス音楽の特徴的なリズムであるジグとリールを組み合わせます。このジグ(jig)は8分の6拍子。バロック期の舞曲ジーグ(gigue)も8分の6拍子です。両者の関係は少々複雑なのですが、共通の祖先から枝分かれしたものと考えればよいでしょう。アイリッシュ音楽風の「ルパン三世のテーマ」は心地よく、気分をリフレッシュしてくれます。
 3番目は山根一仁さんがハンガリーのロマ音楽を盗みます。ブラームスのハンガリー舞曲など、クラシック音楽にはロマ音楽を用いた例がいくつもあります。ロマ音楽風「ルパン三世のテーマ」は情熱的。原曲に含まれる愁いの要素が一段と際立っていました。
 上妻宏光さんが盗んだのは日本の伝統音楽。歌と三味線、尺八、和太鼓を用いた「ルパン三世のテーマ」です。巨大な三味線「豪絃」にはびっくり。まるでコントラバスみたいな三味線で迫力があります。上妻さんの歌も味わい深かったですよね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラと夢をかなえる音楽会~夢響2026 後編

投稿日:2026年09月05日 10:30

 今週は先週に引き続きまして、オーケストラと共演する夢をかなえる「夢響2026」の後編をお届けしました。
 最初に登場したのは小学3年生の高井なな美さん。幼稚園の頃に使ってたお弁当箱に、人魚がハープを弾く絵が描いてあったことがきっかけとなって、ハープを始めました。曲はヘンデルのハープ協奏曲。ハープのための協奏曲と言われて、まっさきに思い出すのがこの曲です。ハープとオーケストラの音色がきれいに溶け合って、清澄な響きが生み出されていました。
 2番手は声楽の川田雄輝さん。4年前に急逝したオペラ歌手のお兄さんが人生をかけて打ち込んでいた理由を知りたく、声楽を始めたと言います。曲はトスティの「君なんかもう(愛してない)」。失われた愛に対する複雑な思いが、温かみのある声で表現されていました。ぐっと来ますね。
 3番手は小学4年生の菊地結大さん。デイヴィッド・ギャレットへの憧れからヴァイオリンを始めたそうです。デイヴィッド・ギャレットは「ヴァイオリン界のベッカム」と呼ばれ一世を風靡した人気ヴァイオリニスト。菊地さんもカッコよかったですよね。C.ベリオの「バレエの情景」を弾いてくれましたが、演奏も堂々たるもの。華があります。
 4番手はヴァイオリンの日置駿さん。多忙な仕事のかたわら、音楽に真摯に取り組む様子が共感を呼びます。曲はサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。最初の一音から会場の空気が変わるような集中度の高い演奏に感銘を受けました。
 前編と合わせて計8名のみなさんが、オーケストラとの共演を果たしました。もっとも心を震わせた「スペシャルドリーマー賞」に輝いたのは、前編で「HIROSHIMA〜生きて伝える平和〜」を演奏した広瀬冬悟さん。広瀬さんは自作の曲をピアノで弾いて、オーケストラと共演した点が印象的でした。広瀬さん、おめでとうございます!

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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