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ジャンルの境界線を超えた音楽会

投稿日:2025年06月28日 10:30

 今週はジャンルの境界線を越えた音楽をテーマに、世界最高峰の名歌手サラ・ブライトマン、箏のLEO、ビートボックスのCOLAPSのみなさんをお招きしました。まさかの豪華共演の実現です!
 サラ・ブライトマンといえば、クラシックとポップスを融合させた「クラシカル・クロスオーバー」の第一人者。とくに有名なのは世界的大ヒットになった「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」でしょう。もともとはイタリアのオペラ歌手ボチェッリが歌っていた曲でしたが、サラ・ブライトマンとのデュエットによって人気に火が付きました。今回、その「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を番組のために歌ってくれたのですから、感激せずにはいられません。甘くのびやかなエンジェルボイスは健在! ステージに立った瞬間から、特別なオーラが発せられているように感じました。
 さらに今回はビートボックス世界王者のCOLAPSさんも出演。COLAPSさんはパリ出身で、現在は東京を拠点に活動しています。日本文化への興味からLEOさんの箏との共演が実現しました。人間技とは思えないほど多種多様な音を自在に用いた演奏には、圧倒されるばかり。とくに舌を使ったドラムのハイハット! あんなに金属的な音を人体から出せるなんて信じられません。LEOさんとの共演では電子音のようなサウンドと鳥の鳴き声のような自然の音を箏の音色に巧みに融合させて、独自の世界を作り出してくれました。
 イングランド民謡「スカボロー・フェア」では、サラさんとLEOさんが共演。もともとはギターで演奏されるパートが箏で演奏されましたが、やはり伝統曲だけあって、洋の東西を超えて伝統楽器との相性がよいなと感じました。ありとあらゆるアーティストたちによって演奏されてきた名曲に、またひとつ新たな名演が加わったように思います。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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世界を変える!!超新星の音楽会

投稿日:2025年06月21日 10:30

 今週は新世代のふたりの音楽家、古里愛さんと松井秀太郎さんをお招きしました。
 ピアノの古里愛さんは現在13歳。アメリカの名門、バークリー音楽大学に史上最年少の12歳で入学し、奨学生として在籍しています。12歳で大学に入学するということ自体がとてつもないことですが、それもあのバークリー音楽大学なのですから、驚きです。古里さんの目標のひとつは、20歳までにグラミー賞を受賞すること。すでに将来に向けての具体的なビジョンを描いているところが、すばらしいと思いました。お話からも聡明さがひしひしと伝わってきて、まだ13歳だということを忘れてしまいます。
 古里さんが1曲目に演奏したのは「This Moment」より。これを11歳で書いたといいますから、非凡というほかありません。2曲目は新曲の「the Shared」。日本の音階をベースラインに用いて日本人である自分自身を表現しているのだとか。変化に富んだリズムがおもしろいですよね。自由に羽ばたくような高揚感がありました。20歳までの目標として、グラミー賞受賞に加えて「ジャズスタンダードを作曲する」「クラシックを演奏する人にも愛される曲を作る」といった項目が掲げられていましたが、もしかするともっと早くにそうなるかも、という期待を抱かせます。
 トランペットの松井秀太郎さんは、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」と、サン=サーンスの原曲を松井さんが編曲した「DANSE MACABRE」を演奏してくれました。サン=サーンスの原曲は交響詩「死の舞踏」。骸骨がカチャカチャと音をたてながら踊るというグロテスクなユーモアを含んだ曲です。これが松井さんの手にかかると、自由で楽しくて、洒落っ気のある音楽に変身します。カッコいいですよね。
 おしまいは古里さんと松井さんの初共演で、オスカー・ピーターソンの「自由への賛歌」。ポジティブなエネルギーにあふれたフレッシュでのびやかな音楽を堪能しました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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新しい音楽の突破口!不協和音の音楽会

投稿日:2025年06月21日 10:18

 今回は「不協和音」が、いかに新しい音楽の世界を切り拓いてきたかをテーマにお届けしました。鈴木優人さんの解説で、「不協和音」とは避けるべきものではなく、むしろ音楽に不可欠な要素であることがよく伝わってきたのではないでしょうか。
 最初にモーツァルトの弦楽四重奏曲第19番「不協和音」の例が示されましたが、現代の聴衆の感覚では、この曲がなぜ「不協和音」と呼ばれるのか、不思議に感じられると思います。曲名からどんなに恐ろしい音がするのかと思いきや、そこまでの違和感はありません。でも、当時は物議をかもしたのです。
 ベートーヴェンの「第九」の終楽章冒頭でも不協和音が鳴り響きます。一種のカオスの表現だと思いますが、耳にする機会の多い「第九」だけに、聴き慣れてしまうと衝撃が薄れてしまうかもしれませんね。
 その点、ワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」の第1幕前奏曲は、現代人にとっても「なんだかおかしいぞ」といった不安定さが感じられるのではないでしょうか。どこに向かっているのかわからない、宙ぶらりんな感じがあって、なんとも落ち着きません。このオペラでは古い伝説にもとづいた禁断の愛が描かれます。忠臣である騎士トリスタンは、叔父マルケ王の妃としてイゾルデを迎えに行くのですが、誤って媚薬を飲んだために、トリスタンとイゾルデの間に愛の炎が燃え上がります。これは決して許されない愛。その幕開けに、あの不穏なトリスタン和音が用いられるのです。
 ストラヴィンスキーの「春の祭典」やペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」といった20世紀の音楽になると、「不協和音」が猛威を振るいます。音と音がぶつかりあって、調和しません。ペンデレツキの曲は「これって本当に音楽なの?」といった疑問を抱かせるかもしれません。でも、この曲は今や古典になりつつあります。いずれ時が経つと、この曲もモーツァルトの「不協和音」のような存在になるのでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ウェディングで流したい新しいクラシックの音楽会

投稿日:2025年06月07日 10:30

 今週は結婚式に流したいクラシック音楽の新しいスタンダードを選んでみました。これまで結婚式のクラシックといえば、メンデルスゾーンの劇音楽「夏の夜の夢」の一曲である「結婚行進曲」、そしてワーグナーのオペラ「ローエングリン」に登場する「結婚式」が二大定番。ファンファーレで始まるメンデルスゾーンの「結婚行進曲」はいかにも華やか。一方、ワーグナーの「結婚行進曲」には厳粛な雰囲気があります。どちらも最高の名曲ですが、クラシックを使うならほかの選択もありうるのでは。ということで、選ばれたのが今回の5曲でした。
 チェロの佐藤晴真さんが新郎新婦入場の曲として選んだのは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番の前奏曲。これは納得ですね。組曲の冒頭に置かれる始まりの音楽ですから、入場にふさわしい曲だと思います。
 ピアノの田所光之マルセルさんがウェディングケーキ入刀の場面に選んだのは、シューマンの「献呈」。シューマンが妻となるクララに捧げた曲集の一曲です。シューマン夫妻の結婚は、クララの父の猛反対があったため、裁判沙汰の末に実現しました。なぜ反対されたかといえば、クララが天才ピアニストとして名声を築いていたのに対し、シューマンはこの時点でほとんど無名の音楽家だったから。格差婚だったんですね。
 Cocomiさんが新郎新婦の再入場の音楽に選んだのは、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番の第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」。すがすがしく爽やかな演奏でした。
 両親への手紙の場面の音楽には、佐藤晴真さんがウォルトンの「弦楽のための2つの小品」の第2曲「やさしき唇にふれて、別れなん」を選んでくれました。深く、しみじみとした味わいがありました。
 最後に演奏されたのは、新郎新婦退場の場面として、フォーレの「レクイエム」より「サンクトゥス」。「レクイエム」とは意外な選択でしたが、なるほど、この神聖な曲調はぴったりかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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