今週はギターの村治佳織さん、マリンバの塚越慎子さん、ハープの山宮るり子さんの3人の音楽家をお招きしました。ギターとハープは弦をはじく撥弦楽器、マリンバは打楽器で、いずれも音が減衰するタイプの楽器。それぞれに似たところもあれば、違うところもあって、楽器事情の違いがおもしろかったですよね。
こうして比べてみると、ギターの機動力は際立っています。塚越さんもおっしゃっていたようにギターは運搬が楽! しかもギター一台あれば、いろいろなジャンルの音楽が演奏できてしまいます。歴史のある楽器ですから、レパートリーは豊富。クラシックもポピュラー音楽も民族音楽も、さらには古楽も現代音楽も、全方位にわたって名曲がたくさん用意されている点で、ギターほど恵まれた楽器はほかにないかもしれません。
マリンバは20世紀になってから発展した楽器ですので、この楽器のために書かれた古い音楽がありません。その分、新しい作品がたくさんあるという言い方もできるでしょう。多くの奏者たちが新作や編曲を依頼して、レパートリーを開拓してきました。大きな音から小さな音まで出せる幅広いダイナミズムを持つのが強み。オーケストラのなかに入っても、マリンバは埋没することなく存在感を放ちます。この点は音の小さなギターとは対照的です。
ハープの場合、楽器そのものは古代からあることはあるのですが、現在のような半音階を演奏できるペダル・ハープが発達したのは比較的最近のことです。ペダルで半音階を操作する現在の原型といえるハープを19世紀初頭に発明したのは、フランスのエラールでした。エラールの名をピアノメーカーとしてご記憶の方もいるかと思いますが、あのエラール一族がハープの発展に貢献したのです。
それにしてもハープに7つものペダルがあったとは。一見、優雅なハープの演奏姿ですが、足元はペダル操作に大忙し。「優雅に泳ぐ白鳥も水面下では必死に足を動かしている」という比喩を思い出します。
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楽器を知る休日~ギター編
アーク・ノヴァから生まれる音楽会
今週は先週に引き続いて移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」で収録が行われました。東京ミッドタウンの芝生広場に開設されたこのアーク・ノヴァ、まるで臓器のような独特の形状をしていますが、コンサートホールとして設計されただけあって、内部では適度な残響が得られるようになっています。
この響きが生かされていたのが、藤原道山さんら5人の尺八奏者による伝統曲「鶴の巣籠」。各奏者がそれぞれ別の場所から登場し、演奏しながら舞台へと移動することで、会場内に立体的な音響空間を作り出していました。こういった試みは現代音楽などでもありますが、アーク・ノヴァのようなモダンな空間に尺八の伝統曲を組み合わるという発想はとても新鮮です。
藤原道山さんと松永貴志さんのデュオによるチック・コリアの「スペイン」にも驚きました。まさか尺八であの曲を演奏できるとは! 尺八とピアノの音色は一見すると異質な組合せなのですが、アーク・ノヴァの非日常的な空間では両者の間に調和が感じられてしまうのが不思議なところ。
演奏中になんどか藤原道山さんが片足を軽く上げながら一瞬下を向く場面がありました。「ん、これは尺八流の感極まったというアクションなのかな?」と思いきや、実はこれ、尺八の先を腿を使ってふさいでいたんだそうです。通常の奏法ではどうしても出ない音があるので、管の先をふさいで出すのだとか。そんな超絶技巧があったんですね。松永さんのピアノも最高にカッコよかったです。全身ゴールドの衣装がまぶしかった!
石丸さんが「この道」「赤とんぼ」を歌う場面で説明されていたように、ルツェルン・フェスティバル芸術総監督ミヒャエル・ヘフリガーさんのお父さんは、あの世界的な名テノールのエルンスト・ヘフリガー。日本との縁が深く、90年代前半にリリースされたアルバム「ドイツ語で歌う日本の歌」は一世を風靡しました。
動くホール アーク・ノヴァの音楽会
今年、9月19日から10月4日にかけて東京ミッドタウンの芝生広場に、移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」が設置されました。一見、コンサートホールには見えませんから、初めて見た人は「いったいなにが建ったのだろう?」と不思議に思われたかもしれません。
もともとこのアーク・ノヴァは東日本大震災の復興支援のために、スイスの音楽祭「ルツェルン・フェスティバル」芸術総監督であるミヒャエル・ヘフリガーさんらが企画したもの。被災地でも演奏を可能にするために、移動式コンサートホールが発案された次第です。2013年から2015年にかけて、松島、仙台、福島の3か所で設置されてきましたが、今回初めて東京に登場することになりました。
なにしろ移動式ですから、材質は軽くなければいけません。塩化ビニールでコーティングされたポリエステル製の膜が送風によって膨らんで、内部の空間ができあがるという仕掛けになっています。形状や色彩がなんとなく臓器や血管を連想させますが、実際に中に入ってみると、まるで自分が巨大生物の体内に潜り込んだかのような錯覚を覚えます。
このアーク・ノヴァに登場したトランペットのラインホルト・フリードリッヒ、トロンボーンのヨルゲン・ファン・ライエンは、ともにルツェルン祝祭管弦楽団のスター・プレーヤー。ルツェルン祝祭管弦楽団は今年11年ぶりの来日を果たしました。このオーケストラは世界中から最高の精鋭が集った、いわば音楽界のドリームチームです。そんなオーケストラの金管楽器セクションの顔ともいえるおふたりがソロを聴かせてくれました。
特におもしろかったのが、トロンボーンのための「スリップストリーム」。足元に置いた「ループステーション」に自分の演奏を録音して、これをループさせ、その上にさらに演奏を何重にも重ねて、曲を演奏していました。スリリングで、カッコよかったですよね。
人気のミュージカルを楽しむ音楽会
今週は「人気のミュージカルを楽しむ音楽会」。劇団四季でも活躍し日本のミュージカル界を牽引してきた石丸幹二さんが、ミュージカルの名曲を紹介し、その人気の理由を教えてくれました。人気の理由として挙げられていたのが、「映画が大ヒット」「ディズニー作品の舞台化」「メロディメーカーの存在」の3つの要素。ミュージカルのファンならずとも、知っている作品、どこかで耳にした名曲がたくさんありましたよね。
古くは「サウンド・オブ・ミュージック」や「ウエスト・サイド・ストーリー」といった名作から、最近のヒット作である「ラ・ラ・ランド」に至るまで、ミュージカル映画の人気はずっと絶えることがなく続いています。こうした映画をきっかけにミュージカルを好きになった方も多いはず。
また、ディズニー作品とミュージカルの結びつきも、ファンの拡大に大きな役割を果たしています。「ノートルダムの鐘」「ライオンキング」「アラジン」「リトルマーメイド」「美女と野獣」といったディズニー作品が、劇団四季等でミュージカルとして上演され、人気を集めています。
よくある質問に「オペラとミュージカルはどう違うのか」というものがあります。一般的な回答としては「オペラは生の声で歌うのに対し、ミュージカルではマイクが使われる」といった例が挙げられますが、実のところ、両者の境目はそれほどはっきりとしたものではありません。たとえばバーンスタインの「ウエスト・サイド・ストーリー」や「キャンディード」は、ミュージカルの歌手にもオペラの歌手にも歌われています。
今回はアンドリュー・ロイド=ウェバーの「オペラ座の怪人」メドレーで、石丸幹二さんとオペラ歌手として大活躍中の市原愛さんの共演が実現しました。市原さん、ミュージカルを歌ってもすばらしかったですよね。きっとロイド=ウェバーの名曲も、ミュージカルの歌手にもオペラの歌手にも長く歌い継がれてゆくことでしょう。