今週はクラシック音楽界の未来を担う超新星、ピアノの天野薫さんとホルンの田中瑛大さんをお招きしました。おふたりともまだ中学生。演奏はもちろんのこと、話しぶりもしっかりしていて、本当にびっくりします。
天野薫さんは12歳。2025年6月に開催された仙台国際音楽コンクールのピアノ部門で第3位および聴衆賞を獲得して、大きな話題を呼びました。ジュニアのコンクールではなく、大人も受けるコンクールでの受賞です。しかもファイナルで演奏したのが、矢代秋雄のピアノ協奏曲。矢代秋雄(1929~1976)は20世紀の日本を代表する作曲家のひとり。パリ音楽院に留学してフランスの伝統的書法を身につけ、妥協を許さない創作態度で磨き抜かれた作品を残しました。完全主義者として知られ、しかも46歳で急逝したため、残された作品は多くありませんが、没後50年を迎えて若い世代の演奏家からの注目が高まっているように思います。
番組では、天野さんは矢代秋雄のピアノ・ソナタの第2楽章を演奏してくれました。作曲は1961年。モダンなスタイルで書かれていますが、天野さんは「歌を感じて弾いている」と言います。決してわかりやすい曲ではないかもしれませんが、こういった曲であっても、音楽に無理のない自然な流れが感じられるところがすばらしいと思います。また、ドビュッシーの「喜びの島」からは豊かなイマジネーションが伝わってきました。
ホルンの田中瑛大さんは13歳。日本ジュニア管打楽器コンクール金賞、ジュニアソロホルンコールで優勝を果たした新星です。福川伸陽さんが「いろんな人を幸せにする音を持っている」と太鼓判を押してくれましたが、まさにその通りの演奏をモーツァルトのホルン五重奏曲とピアソラの「アヴェ・マリア」で披露してくれました。モーツァルトは明るく溌溂としているだけではなく、陰影も豊か。寂しげな表情が心に残ります。ピアソラの「アヴェ・マリア」では、のびやかなメロディからほのかなノスタルジーが漂ってきます。ホルンという楽器の魅力が存分に伝わってくる演奏でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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