今週は好評企画「新しいクラシックの音楽会」の第5弾。クラシックと言えば遠い過去の音楽と思われがちですが、今も新しい作品が次々と誕生しています。近年の傾向としては、ポップスやジャズなど他ジャンルとの境界がますます曖昧になっていることが挙げられると思います。
今回、焦点を当てたのはミニマル・ミュージック。最小限のフレーズを反復したり、フレーズをずらすことで生まれる変化におもしろさがある音楽です。ミニマル・ミュージックそのものは決して新しいものではありません。1960年代のアメリカから誕生した音楽で、テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスといった人たちが、この分野の旗手となって、新たな潮流を生み出しました。これらはジャンルの境界を越えた音楽の先駆例とも言えるでしょう。ミニマル・ミュージックは、クラシック側からもポップ・ミュージック側からも聴衆を獲得しました。
この潮流を受けて誕生した1980年代以降の音楽は、しばしば「ポスト・ミニマル」の言葉でくくられます。その代表的な作曲家のひとりが、今回、廣津留すみれさんが紹介してくれたアメリカのジョン・アダムズ。初期のミニマル・ミュージックに比べると、より柔軟な書法で書かれており、とくにジョン・アダムズは躍動感に加えて、ハーモニーや色彩感の豊かさに特徴があります。一曲目の「ロード・ムービーズ」は、廣津留さんのコメントにあったように「景色がどんどん変わっていく」タイプの曲。車でアメリカの風景を走り抜けるような感覚があります。
蓮沼執太さん作曲の「centers」は、ミニマル・ミュージックに影響を受けて生まれたテクノやヒップホップが着想源になっていると言います。ミニマル・ミュージックになじんでいるクラシック音楽ファンの方も、抵抗なく楽しめたのではないでしょうか。これもジャンルではくくれない魅力を持った音楽だと思いました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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