今週は伊集院光さんをお招きして、人気企画「3曲でわかるクラシックの音楽会~オペラ編」をお届けしました。ソプラノの森麻季さん、テノールの西村悟さん、バリトンの大西宇宙さんが、それぞれの声とオペラの役柄の関係を解説してくれました。
今回、歌われたのはプッチーニの「蝶々夫人」および「トゥーランドット」、そしてビゼーの「カルメン」に登場する名曲でした。この3作品はオペラ入門にもふさわしい傑作だと思います。
プッチーニの「蝶々夫人」はなにしろ明治時代の長崎が舞台なのですから、日本人にとっては特別な作品です。没落藩士の娘、蝶々さんは芸者になり、アメリカ海軍士官ピンカートンと出会います。ふたりは結婚しますが、ピンカートンにとって蝶々さんはひとときの恋の相手。蝶々さんを見捨てて帰国してしまいます。蝶々さんは夫に一途な愛を捧げており、帰ってくると信じて「ある晴れた日に」を歌うのです。悲愛の物語であると同時に、個人と家の関係、国と国の関係など、いろんなテーマが作品に盛り込まれています。
同じくプッチーニの「トゥーランドット」は北京を舞台にした名作。異国の王子たちが皇帝の娘トゥーランドットの課した3つの謎に挑むも、正解できず次々と処刑されるなかで、カラフだけが正しい答えを言い当てます。「だれも寝てはならぬ」はとてもカッコいい曲ですよね。全編にわたってスペクタクルにあふれ、プッチーニのオペラのなかでもっとも壮麗な作品だと思います。
ビゼーの「カルメン」は生まじめな兵士ホセが自由奔放なカルメンと恋に落ち、道を踏み外すという物語。ホセを愛したカルメンですが、闘牛士エスカミーリョに心移りしてしまいます。「闘牛士の歌」をはじめ、このオペラは親しみやすいメロディの宝庫。ビゼーの天才ぶりが爆発した「オペラの中のオペラ」と言ってよいでしょう。
決して堅苦しいものではありませんので、まだ観たことがないという方は、ぜひオペラを劇場で体験してみてください。無尽蔵の楽しみが待っています!
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)