今週は60周年記念企画第5弾として、バッハ・コレギウム・ジャパンの創設者で音楽監督の鈴木雅明さんと首席指揮者の鈴木優人さんの親子をお招きしました。優人さんにはたびたび番組に出演していただいていますが、お父さんの鈴木雅明さんは今回が番組初登場。バッハ・コレギウム・ジャパンとともに、バッハの名曲をお届けしました。
バッハ・コレギウム・ジャパンは国際的にも高く評価されている古楽アンサンブルです。バッハが生きていた当時の楽器を用いたオーケストラと合唱団からなる古楽のスペシャリストで、ロンドン、パリ、ウィーンなど、ヨーロッパの主要都市でも公演を行い、絶賛を博しています。これまでにリリースしたCDは100タイトル以上。そして、これらのCDはスウェーデンのBISというレーベルからリリースされています。BISは意欲的な活動をする中堅レーベルとしてクラシック音楽ファンにはよく知られていますが、彼らが早くからバッハ・コレギウム・ジャパンの実力を認め、大規模なレコーディング・シリーズを敢行したことで、バッハ・コレギウム・ジャパンはヨーロッパで多数の聴衆を獲得するようになりました。こんなふうに日本のアンサンブルでありながら、本場ヨーロッパのレーベルが主体となって継続的に録音をリリースしている例はほとんどありません。
バッハは音楽一家として知られ、息子たちも父親に並ぶ名声を築きましたが、そんなバッハの音楽を演奏するバッハ・コレギウム・ジャパンもまた、鈴木親子により牽引されています。若い頃から優人さんが少しずつ活躍の場を広げ、やがて成長して首席指揮者となり、他のオーケストラにも客演するようになる姿を、ずっと見守ってきたファンも多いことでしょう。まるで現代のバッハ親子のように思ってしまいますが、今回なにより驚いたのは、雅明さんが決して教育パパではなかったというお話。お父さんが優人さんを自らの後継者とすべく育てたのではなく、優人さんが自ら音楽家への道を歩んだのだということに深く感銘を受けました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)