今週は「秋から連想する音楽会」と題して、秋から連想する言葉を数珠つなぎにして、その言葉からイメージされる曲をゲスト奏者のみなさんに演奏していただきました。
まず「秋」といえば「紅葉」。マリンバの塚越慎子さん、チェロの伊藤悠貴さん、箏のLEOさんにより、おなじみの唱歌「もみじ」を特別アレンジでお楽しみいただきました。三者三様のソロで彩られた、さわやかな「もみじ」でしたね。
塚越慎子さんが「紅葉」から連想した言葉は、紅葉の名所「いろは坂」。イメージした曲は「ドレミの歌」です。これは説明を聞けば納得。イタリア語の「ドレミファソラシド」を日本語の音名で表せば「ハニホヘトイロハ」。「ハ長調」とか「ニ長調」といった言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、あの「ハ」とか「ニ」は日本語の音名なんですね。塚越さんは4本のマレットを使って鮮やかな技巧を披露。特殊奏法まで盛り込まれた斬新な「ドレミの歌」を披露してくれました。
LEOさんが「いろは坂」から連想したのは「ドライブ」。曲はアヴィーチーの「レヴェルズ」でした。ノリノリの曲をかけてドライブをするイメージからの選曲です。EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)が、箏とストリングスというまったく独自の編成で生まれ変わることに。透明感のあるみずみずしいサウンドが爽快でした。
伊藤悠貴さんが「ドライブ」から連想したのは「ハミング」。曲はラフマニノフの「ヴォカリーズ」でした。ヴォカリーズとは母音唱法のこと。歌詞がなく母音だけで歌うことを指します。たしかにハミングに近いですよね。原曲は歌曲ですが、さまざまな楽器のためにアレンジされている名曲です。伊藤さんにとってラフマニノフは大切な作曲家。ラフマニノフのチェロ作品全集をレコーディングしたり、ロンドンでラフマニノフの作品だけのリサイタルを開いたほか、ラフマニノフの研究書も著しています。そんな伊藤さんのラフマニノフへの熱い思いが反映されたような、情感豊かな「ヴォカリーズ」でした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)