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歌う楽器・フルートの音楽会

投稿日:2022年05月07日 10:30

今週は新進フルート奏者Cocomiさんをお招きして、フルートの魅力をたっぷりとお届けしました。いずれもよく耳にする名曲ばかりでしたが、共通するキーワードは「歌」。Cocomiさん、髙木竜馬さん、佐藤晴真さん、金子三勇士さんにより、歌心あふれる演奏がくりひろげられました。
 バッハ~グノーの「アヴェ・マリア」は、シューベルトと双璧をなす「アヴェ・マリア」の名曲として広く親しまれています。原曲は鍵盤楽器のために書かれた平均律クラヴィーア曲集第1巻の前奏曲ハ長調。グノーはこのバッハの前奏曲に「アヴェ・マリア」の歌詞を乗せて歌曲に仕立てました。分散和音が連続する原曲に伸びやかなメロディラインを見出したグノーの柔軟な発想力が、新たな名曲を生み出しました。
 プーランクの「愛の小径」はもともとは劇の付随音楽として作曲され、初演当初より評判を呼んで、単独で歌われるようになった楽曲です。シャンソンのような曲調ですので、ジャンルを超えて多くの歌手により歌われています。器楽曲に編曲される機会も多く、今回はフルート、チェロ、ピアノによるトリオで。三人の音色がひとつに溶け合って、ニュアンスに富んだ音楽になっていました。
 メキシコの作曲家ポンセの「エストレリータ」も本来は歌曲ですが、ヴァイオリン曲としてなじんでいる方のほうが多いかもしれません。歴史的大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリン編曲で一躍世に知られることになりました。こちらも多くの楽器用に編曲されています。
 ラフマニノフの「ヴォカリーズ」も原曲は歌曲。今回はフルートとピアノでの演奏でしたが、この曲もありとあらゆる楽器のために編曲されている思います。これほど美しい旋律を歌手だけのものにするのはあまりにもったいない。そんなふうに器楽奏者たちが考えるのも無理はありません。ラフマニノフならではの寂寞とした味わいはフルートからも存分に伝わってきました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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