村上春樹作品にはたくさんの名曲が登場します。ジャズも多いのですが、クラシックの名曲もほとんど毎作のように登場します。最近では「村上春樹さんの小説で曲を知ったので、どんな曲か気になってCDを聴いてみた」という方も珍しくありません。
特に大きな現象になったのが、2009年に刊行された『1Q84』。小説中ではヤナーチェク作曲の「シンフォニエッタ」が重要な役割を果たしていました。しかも、ただ曲が出てくるだけではありません。小澤征爾指揮シカゴ交響楽団の録音であると、演奏者まで明記されていたのです。
ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」に名盤はいくつもありますが、小澤征爾指揮シカゴ交響楽団というのはかなり意外性のあるチョイスです。というのも、これは若き日の小澤による古い録音。所有している人は少なかったはず。レコード会社は急遽この古い録音を大増産し、CDは異例のベストセラーになりました。
テレビドラマや映画ならともかく、音が聞こえてこないはずの小説がきっかけで、CDがヒットするとは!
そんな村上さんの最新作は『騎士団長殺し』。この小説のタイトルが発表された時点で、クラシック音楽関係者は色めき立ちました。タイトルが、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」に由来するものであることが明らかだったからです。
そして『騎士団長殺し』が発売されると、もうひとつの驚きが待っていました。たしかに「ドン・ジョヴァンニ」は出てくるのですが、それ以上にリヒャルト・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」がとりあげられているではありませんか。
しかも演奏者がゲオルク・ショルティ指揮のウィーン・フィル! これもありきたりなチョイスではありません。どうしてショルティなのか。よくぞショルティを選んでくれた。いろんな声が聞こえてきます。
小説から音楽の楽しみがこんなに広がっていることに、驚かずにはいられません。
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村上春樹文学の音楽会
投稿日:2017年05月14日 09:30
コメント
とても面白い企画でした。たくさんある録音盤から指定して小説に登場させるのは読者思いなのですね。どれを聴こうか悩まないですみます。同じ様に小説の発売と同時に復刻されたリストの「巡礼の年」を購入した事があります。クラシック音楽って世界共通の音楽なんですよね。主人公に思いを馳せながら 名曲を楽しむ…なんて贅沢な事でしょう!