今週はフルート奏者のCocomiさん、ピアニストで作曲家のツォトネ・ゼジニゼさんをお招きしました。Cocomiさんが演奏したのは、モーツァルトのフルート四重奏曲第1番の第1楽章。共演はヴァイオリンの東亮汰さん、ヴィオラの中恵菜さん、チェロの笹沼樹さんという強力メンバーです。フルートの軽やかな音色ならではの空高く舞い上がるような飛翔感がありました。
Cocomiさんのお話にもあったように、モーツァルトはフルートの音色が嫌いだったと言います。モーツァルト本人が父親に書いた手紙に、「ぼくはがまんできない楽器(フルート)のために曲を書き続けようとすると、たちまち気分が乗らなくなるのです」という一節があるのです。この手紙は後世の人々をずいぶんと困惑させてきました。というのも、フルート四重奏曲第1番といい、フルート協奏曲第1番といい、フルートとハープのための協奏曲といい、モーツァルトのフルート曲は名作ぞろい。嫌いな楽器のためにこれほどの天才ぶりを発揮できるとは、モーツァルト、恐るべし。
この手紙で、モーツァルトは裕福なフルート愛好家から新曲のまとまった依頼を受けたものの、ぜんぶの注文にこたえられず、報酬が約束の半分ほどしかもらえなかったことを父親に釈明しています。言い訳のためにフルートをだしにしているようにも見えるのですが、はたして本心はどうだったのでしょうね。
ツォトネ・ゼジニゼさんはヨーロッパで少年期より注目を集める逸材。巨匠ダニエル・バレンボイムから「21世紀のモーツァルト」と評されました。モーツァルトがそうだったように、即興も得意なんですね。今回は自作のプレリュード第2番とシューベルトのピアノ・ソナタ第20番の第3楽章を披露してくれました。後期ロマン派風の幻想性と官能性を湛えた自作と、淡いノスタルジーが漂う詩情豊かなシューベルト。ともに17歳とは信じられない成熟度だったと思います。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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