今週は「もしもの音楽会」の第3弾。前回好評だった「もしも漫才を音楽にしたら」をさらに拡大して、3組の漫才を川島素晴さんに音楽化していただきました。これはもう神技といってもいいかもしれません。川島さんも、演奏者のみなさんもすごすぎます!
なにより驚くのは、3曲それぞれが音楽として聴けるということ。どんな種類の音楽にも奏者と奏者の対話性があると思うのですが、もともとの漫才にある対話性がそのまま写し取られているから、音楽として成立するのでしょう。元ネタとなっている漫才をまったく知らなくても、3曲からそれぞれ異なるキャラクターを感じ取ることができると思います。
「もしもミルクボーイの漫才を音楽にしたら」は、「コーンフレーク」の部分の服部さんのヴァイオリンが秀逸で、頭にこびりつきそう。曲だけ聴いたときはピアノの下降グリッサンドがなんだろうと思ったのですが、漫才の映像を見て納得。「あー、コーンフレークと違うか」の「あー」のがっかり感に対応していたんですね。
「もしもカミナリの漫才を音楽にしたら」は川島さんの「茨城弁にジャズの雰囲気を感じる」という言葉通り、スイング感がありました。パーカッションが効果的で、ヴァイオリンの鋭いツッコミも実に鮮やか。
「もしも錦鯉の漫才を音楽にしたら」では多久さんのフルートが大活躍。漫才を見なくても、音楽そのものにユーモアがあって、つい聴いていて笑ってしまいます。言葉抜きでギャグって伝わるんですね。
最後に演奏されたのはショパンの「別れの曲」の2.5倍速バージョン。なにか明るい希望が感じられるというか、浮き立つ気分が伝わってきます。「別れの曲」の題は映画に由来するものですから、本来ショパンとは無関係。自筆譜の段階ではVivace(ヴィヴァーチェ 活発に速く)と指示されていたのですから、こんな「もしも」もあり得たかもしれません。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)