今週はリスト国際ピアノコンクール優勝者の阪田知樹さんをお迎えして、リストの「売れるコンサート」2大戦略について、教えていただきました。
戦略その1は「超絶技巧で魅せる!」。リストと言われてまず連想するのは、華麗な超絶技巧がふんだんに盛り込まれた作品でしょう。なかでもよく知られるのが「ラ・カンパネラ」。作品そのものが高い演奏効果を持っていますが、阪田さんはそこに聴衆を熱狂させるための仕組みがあると言います。高音域の高速連打は視覚的な効果が抜群。しかもあんなふうに客席に目線を向けられたら、胸がきゅんとしてしまいますよね。両手の交差も「魅せる」要素のひとつ。ふつうに弾くよりも、聴く側のテンションが一段あがります。腕を高々と上げて強奏する姿も、キマっていました。
戦略その2は「最新人気曲をアレンジ!」。当時はピアノ・トランスクリプション、すなわちオペラや歌曲、オーケストラ曲などをピアノ独奏用に編曲することが盛んに行われていました。録音再生技術のない19世紀のことですから、音楽を聴くということは、すなわち、人間が演奏するということ。話題のオペラの名場面をピアノ一台で演奏できるアレンジには、大きな需要があったのです。
今回、阪田さんが演奏してくれたのはヴェルディのオペラ「リゴレット」を題材にリストが編曲した「リゴレット・パラフレーズ」。このオペラの主人公リゴレットは、公爵に仕える道化師です。大切な娘ジルダが公爵に弄ばれてしまい、リゴレットは復讐のために暗殺者を雇って公爵を殺そうとします。この曲では、公爵が居酒屋の女を口説いているところを目にしてジルダが動揺し、リゴレットは公爵がいかに不実な男であるかを娘に諭す、といった場面が描かれています(それでもジルダは公爵を忘れられず、公爵の身代わりとなって死ぬことを選ぶのですが……)。
最後に演奏されたのは「調性のないバガテル」。時代の先を行くリストの革新性が感じられたでしょうか。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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