今月より新司会者として国際的に活躍するヴァイオリニスト、五嶋龍さんを迎えてリニューアルされた「題名のない音楽会」。その第1回がついに放映されました!
5代目司会者となる五嶋龍さんは番組歴代最年少の27歳。フレッシュな雰囲気が伝わってきましたよね。
番組は暗闇のなかでヴァイオリンを奏でる五嶋龍さんの姿ではじまりました。初回を迎えるにあたって、いちばん最初に流れる楽曲をどれにするか。ここで龍さんが強く希望したのが、イザイ作曲の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番でした。
自身も名ヴァイオリニストであったイザイは、ヴァイオリニストにとっての聖典ともいうべきバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」全6曲にちなんで、6曲の無伴奏ヴァイオリン・ソナタを書きました。バッハの名曲から約200年の時を経て誕生した、20世紀の傑作です。
このイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番、冒頭はバッハの無伴奏パルティータ第3番の引用から始まります。一瞬、「あっ、バッハが始まったのかな!?」と思わせておいて、実は作曲者はイザイ。奔放な楽想から、やがて古い聖歌に由来する「怒りの日」のメロディが浮びあがってきます。いわば、温故知新の姿勢から生まれたのがイザイの楽曲です。番組中で龍さんが「伝統音楽のアップデイト」を番組の目標に挙げていましたが、イザイがこの曲で行なったのはまさにそのアップデイトだったんですね。
そして、20世紀にバッハの精神をよみがえらせた作曲家といえば、ストラヴィンスキーもそのひとり。彼の「バッハにかえれ」のスローガンは、時代の空気をあらわす標語ともなりました。それまでの重厚長大で濃厚なロマン主義に代わって、簡潔で明快な作風から斬新な作品を生み出そうという姿勢は、ヴァイオリン協奏曲にもあらわれています。
番組の最後に演奏されたのは、久石譲さん作曲の新オープニング・テーマ。久石さん自身の指揮で、龍さんとの共演が実現しました。複雑なリズムが駆使されていて、溌剌としてカッコよかったですよね。曲から受けるイメージは人それぞれでしょうが、私は都会の雑踏のなかをさっそうと歩く若者の姿を思い浮かべました。
次回からはこの曲がオープニング・テーマとして最初に演奏されます。早くもう一度聴いてみたいと思いませんか?