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背筋も凍る!恐怖を感じる音楽会

投稿日:2026年08月08日 10:30

 今週は夏の納涼企画として、恐怖を感じる曲を集めてみました。まるでホラー小説を読んでいるような気分を音楽で味わえたのではないでしょうか。
 ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第5番品70-1は「幽霊」の愛称で親しまれています。命名者がだれなのかはわかりませんが、今回お聴きいただいた第2楽章には、いかにもお化けが出てきそうな雰囲気がありました。ベートーヴェンの死後、弟子のチェルニー(ピアノの教則本で有名)が、この楽章について「幽霊のようで恐ろしく、地下から現れたようだ。シェイクスピアの『ハムレット』の父王の幽霊の出現場面を思い出す」と記しています。おそらく、この記述に共感した人たちの間で、次第に「幽霊」の愛称が広まっていったのでしょう。
 現代において恐怖の音楽のシンボルとなっているのは、ヒッチコックの映画「サイコ」のシャワーシーンに登場するヴァイオリンの高音です。作曲者は数多くの映画音楽で知られるバーナード・ハーマン。ほとんど効果音に近い曲ですが、「殺人」という曲名が付いています。一説によれば、元ネタはフィンランドの作曲家シベリウスの交響的幻想曲「ポホヨラの娘」。曲の後半で、よく似たフレーズが登場します。この曲はフィンランドの民族叙事詩「カレワラ」にもとづく作品です。主人公の老賢者ヴァイナモイネンが美しいポホヨラの娘に求婚するも、娘は「自分が与えた試練を乗り越える男しか相手にしない」と言って無理難題をふっかけます。ヴァイナモイネンは魔法の力で課題をクリアしていきますが、最後に失敗して、娘に嘲笑されるのです。その場面が「サイコ」にそっくりなのですが、なんともひどい話ですよね。
 プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番の第1楽章には作曲者が「墓場にそよぐ風」と形容した、ヴァイオリンの風のようなパッセージが登場します。この曲、不気味ですけど、本当に美しいと思いませんか。プロコフィエフの型にはまらない天才性を感じます。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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