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クラシックの殿堂!サントリーホール40周年①鈴木優人&反田恭平~次世代がつなぐ音楽会

投稿日:2026年05月09日 10:30

 今回より3週にわたって、今年開館40周年を迎えた「クラシック音楽の殿堂」サントリーホールを舞台に、日本のクラシック音楽界を牽引するアーティストたちをお招きいたします。1週目は若い世代を代表して、このホールと縁の深い鈴木優人さんと反田恭平さんにご登場いただきました。
 生の音を聴くクラシック音楽では、ホールも楽器のひとつと言っても過言ではありません。サントリーホールは1986年に東京で初めてのコンサート専用ホールとして誕生し、そのすぐれた音響は海外にも広く知られています。毎日のように内外のトップアーティストたちが舞台に立ち、旺盛な活動がくりひろげられています。
 サントリーホールの誕生にあたっては、当時の大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンのアドバイスが生かされました。客席がステージをぐるりと囲むヴィンヤード型は、カラヤンが率いるベルリン・フィルの本拠地と同じスタイル。聴衆と音楽家の一体感が特徴です。さらにカラヤンが「オルガンのないコンサートホールは家具のない家のようなもの」と言ったことから、オーストリアのリーガー社による世界最大級のオルガンが設置されることになりました。
 今回は鈴木優人さんがサントリーホールが誇るオルガンで、バッハの前奏曲とフーガ「聖アン」より前奏曲を演奏してくれました。輝かしく荘厳な曲想から祝祭感があふれ出てきます。足鍵盤を巧みに操る様子が印象的でしたね。
 反田恭平さんは精鋭ぞろいのサントリーホール祝祭オーケストラとともに、モーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」第3楽章で弾き振りを披露。この曲は1790年にフランクフルトで行われた神聖ローマ皇帝レオポルト2世の戴冠式に合わせて演奏されたことから「戴冠式」の愛称で呼ばれます。晴れやかで高揚感にあふれた爽快なモーツァルトでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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トランペットの魅力をもっともっと伝えたい!音楽会

投稿日:2026年05月02日 10:30

 今週は大活躍中のトランペット奏者、児玉隼人さんと松井秀太郎さんのおふたりをお招きして、さまざまなジャンルのトランペット作品をお聴きいただきました。休みの日に好きな楽譜を持ち寄って、いっしょに練習するほど仲のよいおふたりですが、演奏する音楽のジャンルもトランペットの音色もずいぶんと違います。
 最初に児玉さんが演奏してくれたのは、ファッシュのトランペット協奏曲ニ長調より。ファッシュはバッハと同時代のドイツで活躍した後期バロック時代の作曲家です。各地の宮廷楽長を務め、バッハにも一目置かれるほどの名声を獲得していました。ピッコロトランペットの明るい音色による軽やかで優美な楽想はまさに宮廷の音楽にぴったり。
 同じピッコロトランペットを用いても、松井さんの自作Cats’ Battleではまったく違った音色が使われ、実に多彩な表現が生み出されていました。さらに松井さんはデューク・エリントンのIn a Mellow Toneで、とても自由でインスピレーションにあふれた音楽を披露。トランペットとピアノの対話から、その瞬間瞬間にふさわしい音楽が生まれてくるところがすばらしいですよね。
 児玉さんがピアノの阪田知樹さんと共演したのは、20世紀ドイツの作曲家ヒンデミットのトランペット・ソナタ。第3楽章は「葬送音楽」と記され、「すべての人は死ななければならない」という古いコラールが引用されています。作曲は1939年。ヒンデミットはナチスと対立してドイツを逃れ、スイスに滞在していた時期にこの曲を書きました。そんな時代背景もあって、このように峻厳で内省的な音楽が生まれたのでしょう。
 おしまいに演奏されたハイドンのトランペット協奏曲は、この分野における名曲中の名曲。クラシックではあらゆるトランペット奏者が吹くといっても過言ではありません。陰影豊かでエレガントな児玉さんの演奏も、大胆なアレンジによる松井さんの演奏も、どちらも爽快でした。トランペットの魅力がぎっしりと詰まっていましたね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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いま“挑みたい共演”を実現する音楽会

投稿日:2026年04月25日 10:30

 今週はテノール歌手の宮里直樹さんと箏奏者のLEOさんが、いま“挑みたい共演”を実現しました。
 2月に放送された「第34回出光音楽賞受賞者ガラコンサート」では、ドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」より「わが祖先の墓よ」で美声を披露してくれた宮里さん。数々の名作オペラで主役を務め、今や日本のオペラ界にはなくてはならない存在と言っても過言ではありません。
 宮里さんは歌の勉強をする前にヴァイオリンを学んでいたという異色の経歴の持ち主。高校生の頃、ヴァイオリン曲として有名なパガニーニのカプリースを村治さんがギターで弾いているCDを見つけて購入したことがきっかけで、村治さんに憧れるようになったと言います。そんな宮里さんがヴァイオリンから歌に転向し、こうして村治さんの伴奏で「ムーン・リバー」を歌うことになったのですから、不思議な巡り合わせに感嘆せずにはいられません。ふだんはオーケストラの分厚いサウンドを突き抜けてくるような輝かしい声を聴かせてくれる宮里さんが、ギターに寄り添ってやさしく繊細な表現で歌ってくれたのが印象的でした。
 LEOさんはこれまでにもさまざまな異ジャンルとのコラボレーションにチャレンジしてきましたが、今回は「箏の可能性を極限まで突きつめるような共演に挑みたい」ということで、シンセサイザーの網守将平さん、ドラムの大井一彌さんと共演。網守将平さん作曲の「ペルペティウム・モバイル・ファンク」はリズミカルで軽やか。曲名にあるperpetuum mobileとは常動曲とも訳され、一定のリズムによる速い動きが連続する楽曲のことを指します。大井一彌作曲「Tenraku」では箏にエフェクトをかけ、心地よいビートと電子音を用いた幻想的なサウンドが、これまでに聴いたことのない新しい音の世界へと誘ってくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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鈴木雅明によるバッハのシンフォニアを楽しむ音楽会

投稿日:2026年04月18日 10:30

 今週は鈴木雅明さん指揮バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハの演奏をお楽しみいただきました。先週、鈴木優人さんがベートーヴェンの交響曲に対するバッハの次男カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの影響を解説してくれましたが、今回は父バッハへと遡ります。バッハには交響曲の前身ともいうべき「シンフォニア」と題された作品がいくつもあります。
 鈴木雅明さんのお話にあったように「シンフォニア」という語は、イタリア語でまさしく「交響曲」のこと。この言葉はさまざまな意味で使われており、古い時代のオペラやオラトリオ、カンタータといった大規模な声楽曲における器楽合奏の部分(典型的には冒頭の曲)を「シンフォニア」と呼びます。今回の例ではバッハのカンタータ第12番および第42番の第1曲が「シンフォニア」でした。
 器楽の曲を「シンフォニア」と呼ぶのは、裏を返せば声楽が作品の中心になっていたということでもあります。声楽曲であれば歌詞がありますので、音楽がなにを表現しているのか分かりやすいですが、器楽曲には言葉がありません。そこで、作曲家は強弱だったり、ソロとトゥッティ(全合奏)だったりといったさまざまな対比によって、音楽を組み立てるようになりました。これが発展して、先週のベートーヴェンの交響曲のような、器楽のみによる大規模な音楽が作られるようになったわけです。
 バッハのヴァイオリン協奏曲第1番を聴くと、ソロとトゥッティの関係性がよくわかります。まずは全員がひとつになって音楽がはじまり、やがてヴァイオリンのソロが始まると、他の奏者は伴奏に回ってソロと掛け合いをします。後の時代になるとソリストとオーケストラの役割ははっきり分かれるのですが、バロック時代の協奏曲はずいぶん違った書き方になっています。実はモーツァルトの協奏曲も、本来はソリストが合奏部分でもオーケストラといっしょになって弾いていたと考えられます。鈴木雅明さんは、現代ではほとんどのソリストが合奏部分を弾かないと嘆いていましたが、いつの間にそうなったんでしょうね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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鈴木優人が考察!“バッハに影響を受けたベートーヴェン”の音楽会

投稿日:2026年04月11日 10:30

 来年はベートーヴェンの没後200年にあたります。クラシック音楽界では、すでにベートーヴェン・イヤーに向けて期待感が高まっており、さまざまな公演が企画されています。
 今回、鈴木優人さんはカール・フィリップ・エマヌエル・バッハが与えた影響という角度から、ベートーヴェンの音楽の特徴を解説してくれました。バッハ一族が多数の音楽家を輩出したことはよく知られていますが、有名な大バッハの息子たちがどれだけ活躍したかは、あまり知られていないかもしれません。実は生前のエマヌエル・バッハは父バッハを凌ぐほどの名声を獲得しており、続く作曲家たちに多大な影響を与えたのです。
 ベートーヴェンの交響曲に感じるエマヌエル・バッハの影響として、優人さんが挙げたのは「はっきりとした強弱の対比」「全員で弾くユニゾンの力強さ」「予想を裏切る大胆なハーモニー」という3つの要素。ベートーヴェンの交響曲第1番の第1楽章とエマヌエル・バッハのシンフォニア第1番の第3楽章、さらにベートーヴェンの交響曲第2番の第4楽章をお聴きいただきましたが、なるほど、この3つの要素はふたりの作曲家の共通項であることが、よく伝わってきました。
 エマヌエル・バッハの音楽を聴くと、作風が父バッハとはぜんぜん違うことに驚きます。このシンフォニア第1番に限らず、彼の作品は感情表現がきわめて多彩で、気分がどんどん移り変わるため、先の展開が読めません。調和のとれた美の世界とは正反対で、冒険心にあふれ、聴く人を驚かせてやろうという意欲が伝わってきます。シンフォニアという言葉は初期の交響曲に使われる用語ですが、まさしくベートーヴェンの交響曲の先駆的な存在だと感じました。
 精鋭ぞろいのバッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏は、実にスリリング。ベートーヴェンは手に汗握る名演でしたね。当時の聴衆が感じた驚きに思いを馳せずにはいられません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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あの名曲の“有名になった意外な理由”を知る音楽会

投稿日:2026年04月04日 10:30

 今では世界中で盛んに演奏されるような人気曲でも、作曲者の生前はほとんど知られていなかったというケースは決して珍しくありません。今週は名曲が有名になった意外な理由に焦点を当ててみました。
 20世紀後半、録音再生技術の普及によって音楽の世界は大きく変貌しました。レコードが名曲を生み出す時代になったといってもよいでしょう。その典型が、パッヘルベルの「カノン」。この曲が有名になったのは、1968年録音のパイヤール室内管弦楽団によるレコードのおかげです。パイヤール室内管弦楽団は、楽譜から想像されるよりもずっと遅いテンポで、情感豊かなスタイルで「カノン」を演奏しました。このロマンティックな演奏解釈がなければ、これほどまでに「カノン」が有名になることはなかったかもしれません。
 同じくレコードが決定的な役割を果たしたのが、ヴィヴァルディの「四季」です。イタリアのイ・ムジチ合奏団による「四季」のレコードは世界的な大ベストセラーとなり、バロック音楽ブームの立役者となりました。1955年以来、イ・ムジチ合奏団はくりかえしこの曲を録音し、日本をなんども訪れて演奏会を開いています。家庭にステレオ装置が普及する時期と重なったこともあって、一頃はイ・ムジチの「四季」のレコードは一家に一枚あるのではないかと囁かれるほどの人気を誇りました。
 ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は、他人の編曲によって原曲も有名になった珍しいケースです。この曲は作曲者の生前に出版されておらず、おそらく演奏されたこともなかったでしょう。しかし、ラヴェルがオーケストラ用にカラフルな編曲を施したことで人気を呼び、それに伴って原曲への注目度も格段に高まりました。
 リムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」は、技巧的なアンコールピースとして、さまざまな楽曲で演奏されています。原曲はオペラ「皇帝サルタンの物語」の一場面。こんな形で曲が広まるとは、作曲者は想像もしていなかったのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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葉加瀬太郎がふたたび“坂本龍一を弾く”音楽会

投稿日:2026年03月28日 10:30

 今週は葉加瀬太郎さんがふたたび坂本龍一さんの名曲をスペシャルアレンジで演奏してくれました。葉加瀬さんは坂本龍一作品を「現代のクラシック音楽」と呼びます。モーツァルトであれ、ベートーヴェンであれ、作品はまず作曲者自身によって演奏され、やがて時を経て他人によってくりかえし演奏されることで、「クラシック」になりました。現在、坂本龍一作品も同様のプロセスをたどっていると言えるのではないでしょうか。
 1曲目に演奏されたのは「BEHIND THE MASK」。YMO時代の作品です。1979年発売のアルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」に収録されました。当時はシンセサイザーを用いたテクノポップが斬新な音楽として受け止められていましたが、今回は伊賀拓郎さんの編曲で、あえてアコースティックな楽器が用いられています。振り子式メトロノームが効いていましたね。半世紀近く前の作品なのですから、まさしく「クラシック」と呼ぶに足る名曲だと思います。
 2曲目は「Aqua」。こちらは1998年発売のアルバム「BTTB」収録の一曲。啼鵬さんの編曲による弦楽四重奏での演奏でした。葉加瀬さんの第1ヴァイオリンに、第2ヴァイオリンの成田達輝さん、ヴィオラの田原綾子さん、チェロの横坂源さんが加わった陣容は豪華。現代のトップ奏者たちによるドリーム・カルテットと言ってもよいでしょう。深みのある優しい音楽が紡ぎ出されていました。
 3曲目は「ぼくのかけら」。1981年発売のアルバム「左うでの夢」収録曲です。タブラ奏者のU-zhaanさんの編曲で、北インドの古典音楽を参考にした編成が、まったく新しい世界を切り拓いてくれました。
 おしまいは「Parolibre」。1986年発売のアルバム「未来派野郎」収録曲です。作曲者自身の編曲によるピアノ・トリオ・バージョンで、萩原麻未さんのピアノ、葉加瀬さんのヴァイオリン、横坂さんのチェロという名手たちの共演でお届けしました。とても抒情的な音楽で、ショパンへのオマージュとも言うべき淡いノスタルジーが漂っていました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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辻井伸行が鍵盤上にオーケストラを表現する音楽会

投稿日:2026年03月21日 10:30

 今週はオーケストラ曲などをピアノ用に編曲した作品を辻井伸行さんに演奏していただきました。こういった編曲を「ピアノ・トランスクリプション」と呼びますが、19世紀から現代に至るまで、さまざまな名ピアニストたちが「ピアノ・トランスクリプション」を通じて、その名技を披露してきました。
 辻井さんが「自分がオーケストラの指揮者になった気分で自由にいろいろな楽器の音色を表現できる」と話していたように、ピアノ1台であっても、その表現力は原曲に劣るものではありません。今回はプレトニョフ、ヴォロドス、リストによる編曲作品をお届けしましたが、いずれもピアノの名手だけに、楽器の魅力が最大限に発揮される編曲が施されています。
 チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を編曲したのは、名ピアニストであり名指揮者でもあるミハイル・プレトニョフ。来日も多いので、日本にもファンは多いと思います。原曲では「行進曲」のトランペットのファンファーレや、「こんぺい糖の踊り」でのチェレスタのきらびやかな音色が特徴的ですが、ピアノで演奏してもそれぞれトランペットやチェレスタのイメージが伝わってくるのがおもしろいところ。とくにペダリングを駆使した「こんぺい糖の踊り」は幻想的でした。
 ラフマニノフの「ここはすばらしい場所」の原曲は歌曲。愛の歌が辻井さんのピアノでやさしくしなやかに奏でられました。編曲者のアルカディ・ヴォロドスは超絶技巧を得意とするピアニストとして名声を誇り、すぐれた編曲者としても広く知られています。
 ワーグナーの歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行列」を編曲したのは、史上最大のピアニストとでもいうべきフランツ・リスト。リストはワーグナーの才能を認め、さまざまな形で支援を行いました。歌劇「ローエングリン」を指揮者として初演したのもリストです。ピアノによる「エルザの大聖堂への行列」は、音楽的に深く共鳴し合った天才同士から生まれたものといえるでしょう。味わい深い余韻が残りました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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リストに学ぶ!「売れるコンサート」の音楽会

投稿日:2026年03月14日 10:30

 今週はリスト国際ピアノコンクール優勝者の阪田知樹さんをお迎えして、リストの「売れるコンサート」2大戦略について、教えていただきました。
 戦略その1は「超絶技巧で魅せる!」。リストと言われてまず連想するのは、華麗な超絶技巧がふんだんに盛り込まれた作品でしょう。なかでもよく知られるのが「ラ・カンパネラ」。作品そのものが高い演奏効果を持っていますが、阪田さんはそこに聴衆を熱狂させるための仕組みがあると言います。高音域の高速連打は視覚的な効果が抜群。しかもあんなふうに客席に目線を向けられたら、胸がきゅんとしてしまいますよね。両手の交差も「魅せる」要素のひとつ。ふつうに弾くよりも、聴く側のテンションが一段あがります。腕を高々と上げて強奏する姿も、キマっていました。
 戦略その2は「最新人気曲をアレンジ!」。当時はピアノ・トランスクリプション、すなわちオペラや歌曲、オーケストラ曲などをピアノ独奏用に編曲することが盛んに行われていました。録音再生技術のない19世紀のことですから、音楽を聴くということは、すなわち、人間が演奏するということ。話題のオペラの名場面をピアノ一台で演奏できるアレンジには、大きな需要があったのです。
 今回、阪田さんが演奏してくれたのはヴェルディのオペラ「リゴレット」を題材にリストが編曲した「リゴレット・パラフレーズ」。このオペラの主人公リゴレットは、公爵に仕える道化師です。大切な娘ジルダが公爵に弄ばれてしまい、リゴレットは復讐のために暗殺者を雇って公爵を殺そうとします。この曲では、公爵が居酒屋の女を口説いているところを目にしてジルダが動揺し、リゴレットは公爵がいかに不実な男であるかを娘に諭す、といった場面が描かれています(それでもジルダは公爵を忘れられず、公爵の身代わりとなって死ぬことを選ぶのですが……)。
 最後に演奏されたのは「調性のないバガテル」。時代の先を行くリストの革新性が感じられたでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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藤原道山と山田和樹が初公開する「尺八協奏曲の練習会」

投稿日:2026年03月07日 10:30

 今週は日本を代表する尺八奏者、藤原道山さんが、デビュー25周年を記念して開いたコンサートのリハーサルの模様と、本番のダイジェストをお届けしました。曲は道山さんがこの演奏会のために委嘱した新作、冷水乃栄流(ひやみず・のえる)さん作曲の尺八協奏曲「風は花となる」。尺八、そして日本音楽の未来のために、新しいレパートリーを作っていきたいという道山さんの思いから、注目の若手作曲家である冷水さんに新作の作曲が依頼されたのです。
 この新作のために世界的指揮者の山田和樹さんが、東京藝大の教官や講師から構成される藝大フィルハーモニア管弦楽団を指揮するというのですから、これ以上はないというくらいにすばらしいメンバーがそろいました。そして、世界初演のリハーサルを目にする機会はなかなかありません。今回はたいへん貴重な映像を見ることができました。
 オーケストラのリハーサルといっても、通常のレパートリーを演奏する場合と、新作を演奏する場合では大きく違います。最大の違いは、やはりそこに作曲家本人がいるということでしょう。奏者や指揮者が作曲家と直接コミュニケーションをとれることは、現代の音楽ならではの利点です。山田さんが冷水さんに作曲家の意図を尋ねる場面がなんどかありました。そのたびに、指揮者の指示により音楽の表情が変わってゆきます。同じ楽譜からも奏者によって異なる音楽が生まれてくることが、よくわかります。こういったリハーサルもまた創造の場であることを実感します。
 本番のダイジェストからも、この協奏曲の斬新さが伝わってきました。洋と和が融合した色彩感豊かな第1楽章、抒情的な第2楽章、技巧的でスリリングな第3楽章という構成でした。第3楽章のフィナーレはすごくカッコよかったですよね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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