「劇伴」とは映画やテレビドラマなどで流される音楽のこと。劇への伴奏ということでできた言葉なんでしょうね。もともとは業界用語だと思いますが、近年は広く使われるようになりつつある言葉だと思います。それだけ劇伴の重要性が知られるようになったということでもあるのでしょう。
作曲家の村松崇継さんが猫の映像に3種類の音楽を付けてくれましたが、それぞれ見る人に伝わる印象はまったく違っていました。この比較だけでも、劇伴が映像の意味付けに大きな役割を果たしていることがよくわかります。
劇伴が作られるプロセスもおもしろかったですよね。テレビドラマの場合は映像がない状態で作曲するというお話にはびっくり。監督の言葉からイメージを想起するということですから、これは高度な職人芸の世界です。てっきり映像を見てインスピレーションを得るものだと思っていたのですが、このあたりはテレビと映画の事情の違いなのでしょう。しかもその音楽がどこでどう使われるかに、作曲家が関与しないというのも意外な気がしました。作曲家はとても重要な存在だけれど、作品全体は監督のもの。そんな考え方なのでしょうか。
鈴木慶一さんが衝撃を受けたという映画「ベニスに死す」では、全編にわたってマーラーの交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」が使用されています。大編成のオーケストラを必要とするマーラーの交響曲ですが、この楽章で使われるのは弦楽合奏とハープだけ。編成は簡潔ながらインパクトは抜群。愛の音楽でありながらも、死の匂いを漂わせた音楽でもあるのが、この「アダージェット」です。「ベニスに死す」のテーマにぴったりの音楽で、今となってはこれ以外の選曲はありえなかったとまで思わされるほど。
この映画のおかげでマーラーが大好きになったという人は世界中にたくさんいることでしょう。劇伴の影響力は決して侮れません。
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劇伴音楽の魅力を知る休日
投稿日:2019年04月20日 10:30
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