今週は先週に続きまして、年に一度のスペシャル企画「夢響」の後半をお届けしました。オーディションを通過した4名が、田中祐子さん指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団との共演を果たしました。
テノールの大塚敦司さんは1990年のワールドカップ決勝戦前夜に開かれた「三大テノール」をきっかけに、オーケストラと共演する夢を持ったと言います。曲はパヴァロッティが得意としたプッチーニの「誰も寝てはならぬ」。パヴァロッティは甘く輝かしい声で一世を風靡しましたが、大塚さんも甘い声の持ち主ですよね。オーケストラの分厚いサウンドと一体となった、堂々たる歌唱でした。
フルートの小針梓さんは、子育てでいったん離れていた音楽活動に復帰して、オーケストラと共演する夢をかなえました。仕事と家庭を両立させながら音楽に向き合う姿に共感した方も多いのではないでしょうか。曲はハチャトゥリアンのフルート協奏曲の第1楽章より。冴え冴えとして詩情豊かなフルートのソロを披露してくれました。
立花輝さんは指揮に挑戦。高校の吹奏楽部でクラリネットと指揮を担当しているそうですが、オーディションではピアノも弾いてくれました。指揮は相手がいなければ本当の練習はできませんので、楽器や歌とは違った難しさがあったと思いますが、自信を持った指揮ぶりでプロのオーケストラを引っ張ってくれました。曲はマーラーの交響曲第1番「巨人」の第4楽章より。この部分はカッコいいですよね。勢いのあるサウンドが出てきました。
チェロの松村皐生さんは9歳。フォーレの「エレジー」をのびのびと演奏して、自分の音楽を奏でてくれました。わずか9歳とは思えない立派な演奏で、クライマックスの部分では胸がいっぱいになりました。
全員がすばらしかったので、今回の審査はひとりに絞るのが難しかったと思いますが、スペシャル・ドリーマー賞は、指揮に挑戦した立花輝さんに決まりました。立花さん、おめでとうございます!
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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