今週は開館40周年を迎えたサントリーホールからお届けする第3弾。日本のクラシック音楽界を牽引してきた名匠、小林研一郎さんがサントリーホール祝祭オーケストラを指揮してくれました。これまでにサントリーホールで500回以上指揮をしてきた小林研一郎さんは、「炎のマエストロ」の愛称で親しまれています。86歳を迎えてもなお、その情熱の炎が衰えることはありません。
今でこそ「音楽の殿堂」として親しまれるサントリーホールですが、1986年の開館当初は交通の便がよくなかったため、「陸の孤島」のように言われていました。しかし、このすばらしいホールで演奏したいと、89年に日本フィルが定期演奏会の会場をサントリーホールへと移行します。当時、日本フィルの首席指揮者を務めていたのが小林研一郎さんでした。その後、地下鉄の溜池山王駅や六本木一丁目駅ができて、ホールへのアクセスは格段によくなりました。現在ではほとんどの在京オーケストラがこのホールで定期的に演奏しています。また、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど、来日オーケストラの多くが、サントリーホールで公演を行っています。
今回、小林研一郎さんが指揮したのは、ブラームスの交響曲第1番より第4楽章。名手たちが集うサントリーホール祝祭オーケストラとともに、すばらしいブラームスを演奏してくれました。マエストロが指揮台に立つと、それだけで空気が一変。オーケストラから気迫のこもった力強い音がわきあがってきます。
この楽章の中ほどで、弦楽器による歌うようなメロディが奏でられます。よくベートーヴェンの「第九」の「歓喜の歌」に似ていると言われるメロディですが、マエストロによれば「暗黒から光明へと転じる勝利と歓喜のメロディ」。緊迫感あふれる楽章の途中で、このメロディが登場すると、ほっとした気分になるんですよね。終結部は輝かしく、高揚感にあふれています。忘れがたい名演が誕生しました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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