今週は一年間をかけて少しずつ収録を進めてきたスペシャル企画「題名のない音楽会放送60周年組曲」をお届けしました。イメージしたのは、バロック音楽の古典組曲。バッハでいえばフランス組曲やイギリス組曲、無伴奏チェロ組曲といった組曲が典型ですが、前奏曲で始まって、アルマンド、サラバンド、メヌエット、ジーグなど種々の舞曲が続くスタイルです。この古典組曲の枠組みを借りて、出演者のみなさんに一曲ずつ演奏してもらい、ぜんぶそろったところでひとつの組曲として放送しようというプランを立てて、収録を積み重ねてきました。こうしてまとめて聴くと、改めてすばらしい奏者のみなさんに参加していただけたと感じますね。
全10曲からなる組曲ですが、最初はやはり前奏曲(プレリュード)がよいだろうということで、鈴木優人さんがバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻のプレリュード第1番を弾いてくれました。
2曲目からはバロック期の舞曲にこだわらず、次々といろいろな踊りの音楽が登場します。第2曲から第5曲まではワルツ・セクション。反田恭平さんのショパン「小犬のワルツ」、角野隼斗さんの自作「大猫のワルツ」、上野耕平さんのボノー「ワルツ形式によるカプリス」、務川慧悟さん、小林愛実さん、反田恭平さんのラフマニノフの「6手ピアノのための小品」よりワルツが並びました。
第6曲から第8曲は和のセクション。藤原道山さん、本條秀慈郎さん、LEOさんによる和楽器を用いたバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」、LEOさんの「松風」、藤田真央さんの野平一郎「音の旅」より「秋祭り」が演奏されました。
第9曲と第10曲で、ふたたびバッハが帰ってきます。宮田大さんはバッハの無伴奏チェロ組曲第3番より第5曲ブーレを演奏。ブルース・リウさんはバッハのフランス組曲第5番のジーグを選んでくれました。明るく軽快なジーグは、組曲のしめくくりにぴったり。さわやかな幕切れでした。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)