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第34回出光音楽賞受賞者ガラコンサート

投稿日:2026年02月28日 10:30

 今週は第34回出光音楽賞受賞者ガラコンサートの模様をお届けしました。今年の受賞者はヴァイオリンの金川真弓さん、チェロの北村陽さん、テノールの宮里直樹さんの3名。川瀬賢太郎さん指揮東京フィルとの共演で、見事な演奏と歌唱を披露してくれました。
 金川真弓さんはドイツに生まれ、日本でヴァイオリンを始めた後、アメリカに渡り、現在はベルリンを拠点に活動する国際派。日本のオーケストラの定期公演にもたびたび招かれ、さまざまな協奏曲で会場からの喝采を浴びています。今回はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を選曲。ウィーンに生まれ、神童として名を馳せたコルンゴルトは、ナチスの台頭に伴ってアメリカにわたり、ハリウッドで映画音楽の分野で成功を収めました。このヴァイオリン協奏曲にも映画で用いたテーマが用いられています。のびやかな音色による生命力あふれる演奏を堪能しました。
 チェロの北村陽さんは少年時代より将来を嘱望された逸材で、21歳の若さながらもすでに多くのオーケストラと共演しています。今回、選んでくれたのはプロコフィエフの難曲、交響的協奏曲。この曲は作曲者最晩年の作品で、名チェリスト、ロストロポーヴィチとの協力関係から生まれました。交響的協奏曲という名前が示すように通常の協奏曲の枠を超える大規模な作品で、決して演奏機会の多い作品ではありませんが、こうして新世代の奏者が挑んでくれるのはうれしいですね。
 テノールの宮里直樹さんは、現在の日本のオペラ界にとってなくてはならない存在といってもよいでしょう。輝かしくリリカルな声は、オペラの主役にぴったり。喜劇でも悲劇でも持ち味が発揮されます。ドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」より「わが祖先の墓よ」では、恋に絶望した青年が死を望む心情が歌われます。胸が張り裂けそうになるような迫真の歌唱でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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グラミー賞も認める作曲家・挾間美帆が挑むジャンルを超えた音楽会

投稿日:2026年02月21日 10:30

 今週はグラミー賞にノミネートされるなど国際的に活躍するジャズ作曲家の挾間美帆さんと、ヴァイオリニストの滝千春さんが始めた新しいプロジェクト、MaNGROVE(マングローヴ)をご紹介しました。おふたりに加えて、ヴァイオリンの山根一仁さん、ヴィオラのルオシャ・ファンさん、チェロの佐藤晴真さん、コントラバスの木村将之さんが集結した豪華メンバーです。
 もともとマングローブとは、淡水と海水の混ざり合う場所に生育する植物のこと。クラシックとジャズが垣根なく混ざり合って、よい音楽を作り出したいという思いが、MaNGROVEのネーミングに込められています。今回、演奏された3曲を聴くと、まさにジャンルの垣根を越えた音楽であることがよく伝わってきます。
 1曲目は挾間さん作曲の「Introduction」。リズムのズレ、フレーズの複雑な絡み合いから新鮮な音楽が生まれてきます。説明を聞くと難しそうですが、曲を感じて楽しむのは、まったく難しくありません。どんなジャンルにも収まらないタイプの音楽だと思いますが、もしこの曲がクラシックのコンサートで演奏されたとしても、まったく違和感はないと思います。
 2曲目はプロコフィエフの組曲「ロメオとジュリエット」より「モンタギュー家とキャピュレット家」。挾間さんは原曲にジャズのブルーノートを聴きとって、曲にジャズ・セクションを設けたといいます。ソ連の作曲家プロコフィエフとジャズは一見遠そうでいて、実は近いというのがおもしろいところ。チェロの佐藤晴真さんのアドリブは貴重です。
 3曲目は挾間さんの「Believing in Myself」。奏者ごとにばらばらのフレーズがパズルのように組み合わされる凝った仕掛けがある作品ということですが、これもカッコいい曲ですよね。仕掛けが緻密であるだけではなく、音楽にさまざまな表情が込められており、知的であると同時にハートに訴えかけてくる音楽だと思いました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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入賞者が語る!世界的コンクールがわかる音楽会

投稿日:2026年02月14日 10:30

 今週は国際コンクールで注目を浴びたふたりの音楽家、ピアノの桑原志織さんと指揮の米田覚士さんをお招きしました。
 桑原志織さんは2025年ショパン国際ピアノコンクールで第4位に入賞しました。数あるコンクールのなかでも、もっとも注目されるのがショパン・コンクール。642名ものピアニストがエントリーし、書類審査から予備審査、さらに1次予選、2次予選、3次予選と先に進むにつれて人数が絞られ、ファイナルには11名が進みました。オーケストラと共演して協奏曲を弾けるのは、この11名のみ。桑原さんの第4位入賞がどれほどの難関か、改めて感じずにはいられません。
 ショパン・コンクールでは、一部の参加者に対して予備予選を免除しています。一種のシード権のようなものですが、指定されたコンクールで第1位または第2位を獲得したピアニストは、1次予選から出場できます。桑原さんの場合は、その指定コンクールで第2位を受賞していたので、1次予選から参加できたわけです。こういった仕組みがあるのも、大規模なショパン・コンクールならではでしょう。
 一方、米田覚士さんは2025年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝を果たしました。ショパン・コンクールとは違って、書類審査なし、エントリーは早い者順だというお話にはびっくり。サイトのオープンから4時間後には全部の枠が埋まっていた言いますから、まるで人気公演のチケット取りのよう。
 若手指揮者の登竜門として有名な同コンクールは、これまでに小澤征爾さんや佐渡裕さん、沼尻竜典さん、山田和樹さんら、多くの日本人が優勝していることでも知られています。米田さんのお話にもあったように、ヨーロッパの指揮者は各地の劇場でオペラの経験を積んでキャリアを築くこともできますが、日本には同様の環境がありません。やはり、日本人が名前を知ってもらうにはコンクールが近道なのでしょう。ブザンソンの覇者、米田覚士さんのこれからの活躍が楽しみでなりません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ピアニスト・亀井聖矢がオーケストラの楽器を紹介する音楽会

投稿日:2026年02月07日 10:30

 今週は作曲活動にも力を入れるピアニスト、亀井聖矢さんをお招きしました。冒頭で亀井さんが演奏してくれたのは自作の「衝奏」。苦悩や葛藤のなかにも希望が垣間見えるような作品でした。名ピアニストが自作を演奏することは、クラシック音楽の伝統においてごく一般的なこと。亀井さんのお話にあったように「自作曲ならゼロ距離で表現できる」ところに魅力があります。
 いずれはオーケストラ曲も書いてみたいと語る亀井さんですが、今回はブリテンの「青少年のための管弦楽入門」でナレーター役を務めて、各楽器の特徴を紹介してくれました。オーケストラとの共演経験の豊富な亀井さんならではの言葉で語られていて、親しみが持てます。
 ブリテン(1913~1976)はイギリスを代表する20世紀の作曲家です。今年没後50年を迎え、音楽界での注目度が一段と高まっています。平和主義者として第2次世界大戦の犠牲者を悼んだ「戦争レクエイム」や、共同体から疎外される男の孤独を描いたオペラ「ピーター・グライムズ」、シェイクスピアの戯曲にもとづくオペラ「夏の夜の夢」など、数々の偉大な作品を残しました。
 今回の「青少年のための管弦楽入門」はもともと教育用に書かれた作品で、日本の学校教育でも鑑賞用教材として使われるなど、広く親しまれています。しかし、この作品の非凡なところは、単なる楽器紹介に終わっていないところでしょう。コンサートでナレーションなしで純粋な管弦楽曲として演奏されることもあります。実用性だけではなく、芸術性も高い名曲なのです。
 冒頭に演奏されるテーマは、同じイギリスの先輩作曲家パーセルの作品からの引用です。主題を変奏しながらオーケストラの各楽器のデモンストレーションがくりひろげられた後、壮大なフーガが始まります。終盤でパーセルの主題が重なり合う部分は鳥肌もの。田中祐子さん指揮の東京フィルが壮麗なクライマックスを築き上げました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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