• mixiチェック

私の音楽人生に影響を与えた名演の音楽会

投稿日:2024年09月28日 10:30

「題名のない音楽会」は今年、60周年を迎えました。今回は現在第一線で活躍する音楽家のみなさんに、過去の放送回から忘れられない名演を選んでいただきました。
 Cocomiさんが挙げたのは、エマニュエル・パユが独奏を務めたビゼー作曲、ボルヌ編曲の「カルメン幻想曲」。パユといえば、ベルリン・フィル首席フルート奏者を務める現代最高の名手のひとり。ソリストとしても室内楽奏者としても活躍するフルート界のスーパースターです。その驚異的なテクニックと豊かな情熱がこの映像からも伝わってきました。なんどもくりかえして映像を見たために、パユの足を上げる癖がうつってしまったというCocomiさんのお話がおもしろかったですよね。
 小林愛実さんが番組に初登場したのは2010年。まだ14歳でしたが、すでに天才少女として熱い注目を浴びていました。あの天才少女がこうして立派な大人のピアニストに育ったことに感慨を抱かずにはいられません。そんな小林さんが挙げてくれたのは、ラン・ランがオレンジでショパンを弾いた回。この秘技もさることながら、これをラン・ランに教えてくれたのが大巨匠として知られるダニエル・バレンボイムだったということにも驚きます。そんな茶目っ気があったとは。
 鈴木雅明さんと優人さんは今年、番組内で初めての親子共演が実現しました。バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会では、よくおふたりの共演を目にしますが、こうしてトークをする場面は新鮮です。米良美一さんが歌う「もののけ姫」主題歌に「懐かしいね」という声が挙がっていました。「もののけ姫」で広く注目を集めた米良さんですが、それ以前から、バッハ・コレギウム・ジャパンで活躍していたことを思い出します。おふたりとも「米良ちん」と呼んでいて、仲間内の親密な雰囲気が伝わってきました。初代司会者の黛敏郎さんが司会するクイズ企画もおもしろかったですよね。「田園交響曲」のフレーズの反復には爆笑。これは難問でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

60周年記念企画⑥上野耕平が挑む!新しい吹奏楽の音楽会

投稿日:2024年09月21日 10:30

 今週は番組60周年記念企画第6弾として、上野耕平さんとぱんだウインドオーケストラのみなさんをお招きして、吹奏楽の魅力に新たな角度から迫りました。
 番組では以前より「吹奏楽を少人数でも楽しもう!」という発想のもと、7人制吹奏楽ブリーズバンドを提唱してきました。ブリーズバンドのベースにあったのは、7人全員がソリストであり、ひとりひとりが主役を務めるという考え方。今回はそのブリーズバンドの精神を生かしたまま、編成を22人へと拡大しました。指揮者は置きません。
 上野さんたちの最初の挑戦は「とことん歌い上げる」こと。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第2楽章を吹奏楽アレンジで演奏してくれました。この曲はビリー・ジョエルの「THIS NIGHT」はじめ、さまざまな分野でカバーされていています。冒頭はサクソフォン四重奏ではじまり、次第にほかの楽器が加わって音色が変化してゆく様子が見事でした。情感豊かに歌い上げることで、この曲にあるノスタルジーの要素が浮き彫りになっていたと思います。
 バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」では、「新たな音色を開発する」ことに挑戦。20世紀ハンガリーの作曲家バルトークは、東欧で採集した民謡をモダンな書法で生まれ変わらせることで独自の作風を築きました。土の香りと斬新さを両立するのがバルトークの音楽。今回は替え指やフラッタータンギングなどを用いることで、作品に新たな彩りが加えられていました。上野さんはソプラニーノ・サクソフォンも使用。濃厚で甘い音色が魅力的でした。
 Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」では、「リズムに音色をつけて刻む」ことに挑戦。高速ラップが印象的な曲ですが、吹奏楽でもこんなに小気味よくて鮮やかな表現が可能なんですね。思わず踊り出したくなるような楽しさがありました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

月の光を名曲で感じる音楽会

投稿日:2024年09月14日 10:30

 今年の中秋の名月は9月17日。秋の澄んだ夜空に月がきれいに見える季節になりました。クラシック音楽には月の光にちなんだ名曲がたくさんあります。今回はピアニストの務川慧悟さんが独自の視点から、月の光を感じる名曲を紹介してくれました。
 最初に演奏されたのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」。とても有名な曲ですが、「月光」という題はベートーヴェン自身によるものではありません。でも、本当に曲にぴったりなんですよね。務川さんはこの曲に月の光を感じるポイントとして「暗闇」を挙げてくれました。光があれば、闇もまたあるはず。たしかにこの曲はただ美しいだけの曲ではなく、どこか不穏な気配も漂わせているように感じます。
 ベートーヴェン自身はこの曲をピアノ・ソナタ第13番とともに「幻想曲風ソナタ」と名付けました。両曲には、ソナタという古典的な形式感を持つ楽曲に、自由な幻想曲のスタイルを融合させようというアイディアが込められています。「月光」の第1楽章はまさに幻想曲風です。
 2曲目はフォーレの歌曲「月の光」。原詩はフランス語ですが、務川さんの訳詩のおかげで、詩の描く情景がよく伝わってきました。務川さんがこの曲に感じ取ったのは「影」。短調と長調の間のゆらめくような動きが、楽しさと悲しさの間にある曖昧な領域を表現します。森谷真理さんのまろやかで温かみのある声も印象に残りました。
 3曲目はドビュッシーの「月の光」。この曲は「ベルガマスク組曲」のなかの一曲です。フォーレの歌曲「月の光」と同じヴェルレーヌの詩からインスピレーションを受けていたんですね。務川さんがこの曲に感じる月の光のポイントは「輝き」。ドビュッシーは倍音との調和を計算して月の輝きを表現していると言います。そういえば、この曲に限らず、ドビュッシーの音楽には光の輝きを感じることが多いような気がします。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

注目の音楽家が奏でる!ディズニー名曲の音楽会

投稿日:2024年09月07日 10:30

今週はディズニー名曲をフルートのCocomiさん、トランペットの児玉隼人さん、ヴァイオリンの新美麻奈さんという今注目を集める3人の音楽家による演奏でお届けしました。
 最初に演奏されたのは「エレクトリカルパレードのテーマ」。この曲の本来のタイトルは「バロック・ホーダウン」と言います。「ペリー・アンド・キングスレー」というエレクトロニック・ミュージック・デュオが1967年にリリースした楽曲です。「バロック」とは、あのバロック音楽のこと。オリジナルは初期のシンセサイザーを使って、バロック音楽でよく使われるチェンバロ風の音色を再現していたんですね。「ホーダウン」とはアメリカの伝統的なダンス。つまり、バロックの古雅な曲調と大衆的なホーダウンを合体させたうえで、これを当時の最新テクノロジーであるシンセサイザーの音色で表現するという斬新なアイディアが盛り込まれています。そんな電子音楽の名曲を今回は3人のソロとオーケストラで演奏しました。原曲とはまた違った浮き立つような気分が感じられたのではないでしょうか。
 3人の音楽家のみなさんがそれぞれイチ推しのディズニー名曲を演奏してくれましたが、Cocomiさんが選んだのは「塔の上のラプンツェル」より「輝く未来」。透明感のある清澄な音色が印象的でした。やさしくエレガントなラプンツェルでしたね。
 先月、日本管打楽器コンクールで史上最年少で優勝を果たした中学3年生のトランペット奏者、児玉隼人さんが選んだのは「リメンバー・ミー」の主題歌。情感豊かなトランペットのソロで始まり、オーケストラとともに次第に高揚する様子が見事でした。
 新美麻奈さんは葉加瀬太郎さんの「題名プロ塾」で合格したヴァイオリニスト。プロ・デビューとなる今回選んだのは、「シンデレラ」より「夢はひそかに」。のびやかなヴァイオリンの音色がシンデレラのまっすぐな心情を伝えてくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

  • mixiチェック

フォトギャラリー

フォトギャラリーを詳しく見る≫