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辻井伸行が鍵盤上にオーケストラを表現する音楽会

投稿日:2026年03月21日 10:30

 今週はオーケストラ曲などをピアノ用に編曲した作品を辻井伸行さんに演奏していただきました。こういった編曲を「ピアノ・トランスクリプション」と呼びますが、19世紀から現代に至るまで、さまざまな名ピアニストたちが「ピアノ・トランスクリプション」を通じて、その名技を披露してきました。
 辻井さんが「自分がオーケストラの指揮者になった気分で自由にいろいろな楽器の音色を表現できる」と話していたように、ピアノ1台であっても、その表現力は原曲に劣るものではありません。今回はプレトニョフ、ヴォロドス、リストによる編曲作品をお届けしましたが、いずれもピアノの名手だけに、楽器の魅力が最大限に発揮される編曲が施されています。
 チャイコフスキーの「くるみ割り人形」を編曲したのは、名ピアニストであり名指揮者でもあるミハイル・プレトニョフ。来日も多いので、日本にもファンは多いと思います。原曲では「行進曲」のトランペットのファンファーレや、「こんぺい糖の踊り」でのチェレスタのきらびやかな音色が特徴的ですが、ピアノで演奏してもそれぞれトランペットやチェレスタのイメージが伝わってくるのがおもしろいところ。とくにペダリングを駆使した「こんぺい糖の踊り」は幻想的でした。
 ラフマニノフの「ここはすばらしい場所」の原曲は歌曲。愛の歌が辻井さんのピアノでやさしくしなやかに奏でられました。編曲者のアルカディ・ヴォロドスは超絶技巧を得意とするピアニストとして名声を誇り、すぐれた編曲者としても広く知られています。
 ワーグナーの歌劇「ローエングリン」より「エルザの大聖堂への行列」を編曲したのは、史上最大のピアニストとでもいうべきフランツ・リスト。リストはワーグナーの才能を認め、さまざまな形で支援を行いました。歌劇「ローエングリン」を指揮者として初演したのもリストです。ピアノによる「エルザの大聖堂への行列」は、音楽的に深く共鳴し合った天才同士から生まれたものといえるでしょう。味わい深い余韻が残りました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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