今週は藤岡幸夫さん、山田和樹さん、三ツ橋敬子さんの三人の指揮者が集まって、歴代の名指揮者や指揮の秘密について語ってくれました。指揮者同士が語り合う風景って、それだけでもなんだか新鮮ですよね。
それぞれ憧れの名指揮者をひとりずつ挙げてくださりましたが、その人選がとても興味深いものでした。
藤岡さんは「帝王」カラヤン。20世紀後半の楽壇に君臨した大指揮者といえば、この人。ベルリン・フィルとともに流麗で輝かしいサウンドによって一時代を築きました。藤岡さん曰く、「カラヤンはライブの人」。カラヤンというと録音でも映像でも徹底的に作り込んだ記録を残す人というイメージがありますが、本領を発揮するのはライブだったといいます。これが言えるのはカラヤンの生演奏を体験している世代だからこそですね。
三ツ橋さんが挙げたのは天才肌のカルロス・クライバー。おそらくクライバーほど指揮姿の美しさで人々を魅了した指揮者はいないでしょう。クライバーはカラヤンとは正反対で、録音にも録画にも消極的で、しまいには指揮をすることすら珍しくなってしまい、存命中に半ば伝説の人になってしまいました。ですから、残された映像は限られているのですが、そのインパクトは絶大。三ツ橋さんによれば、「音楽が伝わってくる」指揮姿。ほれぼれとするようなしなやかな身振りには、各々に意味があって、それがプレーヤーに伝わるというあたりがクライバーの天才たるゆえんでしょうか。
山田さんはストコフスキを挙げていました。ストコフスキは既存の常識にとらわれず、次々と新しいアイディアを実現した人です。古い時代の大指揮者ですが、テンポの動かし方など独特の解釈を聴かせてくれることから、今でも根強い人気があります。ストコフスキ・ファンの方は快哉の声をあげたのでは。
三者三様、納得の人選だったのはないでしょうか。
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歴代の指揮者を語る音楽家たち
くるみ割り人形の音楽会
「くるみ割り人形」の「花のワルツ」って、本当にすばらしい名曲ですよね。これほど高揚感にあふれたワルツはほかにありません。
チャイコフスキーはこのバレエのために、惜しみなく名曲を注ぎこみました。一作のなかに信じられないほどの密度で名曲が詰め込まれているという点で、バレエの「くるみ割り人形」はオペラの「カルメン」と双璧をなしているのではないでしょうか。
この「くるみ割り人形」、曲が有名な割には、意外とストーリーは知られていないような気がします。りりしい王子様に姿を変えたくるみ割り人形が、少女クララをお菓子の国へと招きます。お菓子の精たちに歓待されるクララ。で、この話はどう終わるのでしょうか?
結末はあいまいです。バレエにはセリフがありませんので、振付によっていろいろな解釈が可能です。クララが夢から覚めるという「夢オチ」がひとつの基本形となっているでしょうか。素敵な王子様もお菓子の国もみんな少女の夢だった。夢から覚めたら、ベッドのそばにいたのは元通りのくるみ割り人形……。
「くるみ割り人形」の物語の元となっているのはE.T.A.ホフマンのメルヘン「くるみ割り人形とねずみの王様」です。原作の結末は単なる「夢オチ」では終わりません。主人公(バレエではクララですが、原作ではマリーといいます)が目を覚まして、お菓子の国から現実に戻るのですが、そこからまだ話が続くのです。ドロッセルマイヤーさんが甥の青年を連れてきます。この青年は主人公とふたりきりになると、自分が助けてもらったくるみ割り人形だと告げて、少女を花嫁にして旅立っていくのです。
この原作でもやはり結末はあいまいです。少女が本当に結婚したとも解せますし、夢の続きを見ていたとも読めます。いずれにせよ解釈のひとつとして、「少女が育ってやがて親元を離れていく」という含意を読み取ることは可能でしょう。なかなか味わい深い物語だと思います。