今週のテーマは「久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち」前編。番組テーマ曲でもおなじみの作曲家、久石譲さんのガイドで音楽の歴史をたどりました。
クラシック音楽の歴史は、9世紀頃のグレゴリオ聖歌まで遡ることができます。この時代はまだメロディが一本だけで、伴奏もない音楽だったんですね。こういった伴奏のない単旋律の音楽が「モノフォニー」。そこから、複数のメロディが同時に歌われる「ポリフォニー」の音楽や、メロディに伴奏が付く「ホモフォニー」の音楽が生まれてきました。
ルネサンス期には、番組中で演奏されたジョスカン・デ・プレの「アヴェ・マリス・ステラ」のようなポリフォニーの音楽が盛んに作曲されていたのですが、わたしたちが一般に思い浮かべる「クラシック音楽」とはずいぶん違っていますよね。複数の旋律が絡み合って同時進行しますので、かなり複雑な音楽といえるでしょう。古い音楽が決して単純に書かれているわけではありません。むしろ、「難しい」と感じた方も多いのでは?
18世紀半ばから19世紀初頭までを古典派の時代と呼びます。この時代の最大の作曲家がベートーヴェン。「運命」に表現されていたように、個人の主観が明確に打ち出され、ドラマティックな感情表現が生み出されます。
続くロマン派の時代になると、作曲家たちはさらに新たな表現技法を開拓し、やがてワーグナーのような巨人があらわれて、これまでになかった和音を駆使したり、音楽とドラマの融合を目指すようになりました。その究極が「トリスタンとイゾルデ」。ロマン派音楽の頂点とでもいいましょうか。もう音楽はどんな複雑な感情や心理でも表現できるのではないかと思わされます。
しかしワーグナーの時点でもまだ19世紀。20世紀を迎えると音楽にはさらなる変革が訪れます。いったいどんな曲が書かれるようになったのか。次回の「後編」にご期待ください!
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久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち 前編
辻井伸行によるベートーヴェンの音楽会
ベートーヴェンの「皇帝」って、聴けば聴くほど傑作ですよねえ。辻井伸行さんの演奏を聴いて、改めて実感しました。
ベートーヴェンが最後に書いたピアノ協奏曲がこの「皇帝」。当時の協奏曲には共通する「型」があります。楽章の数は3つ。第1楽章と第3楽章が速いテンポで、第2楽章は遅いテンポで書かれています。第1楽章の終盤には「カデンツァ」と呼ばれるソロの聴かせどころが置かれます。カデンツァではオーケストラはお休み。ソリストだけが自由に即興的に演奏し、華やかな技巧を披露します。
カデンツァは「おお、このソリスト、すごい!」とお客さんに思わせるための見せ場とでもいえるでしょうか。楽譜にはカデンツァが入るという指示があるだけ。なにを弾くかはソリストが決めます。
しかし、型破りな作曲家ベートーヴェンは、「皇帝」で従来のようなカデンツァを止めてしまいます。当時、多くの場合、作曲家本人がソリストとしてピアノ協奏曲を演奏していましたが、すでに聴力の衰えていたベートーヴェンは演奏を他人に委ねるしかありませんでした。他人が弾くと決まっているのなら、即興などいらない、自分でぜんぶ作曲してしまおう。そう考えても不思議はありません。
番組中で辻井さんがおっしゃっていたように、その代わり、ベートーヴェンはソリストのための見せ場を曲の冒頭に用意しました。最初にオーケストラが力強い和音を響かせるやいなや、ソリストがきらびやかなパッセージを奏でて、聴衆にアピールします。普通の協奏曲であれば、ソリストの登場までお客さんはしばらく待たされるのですが、この曲ではいきなり見せ場がやってきます。こういった趣向もベートーヴェンの型破りなところのひとつです。
「皇帝」は第2楽章から第3楽章への移行部もすばらしいですよね。静かに瞑想するかのような雰囲気のなかで、ゆったりと第3楽章のテーマが出現して、切れ目なくパワフルな第3楽章へと突入します。あの瞬間にブルッと鳥肌が立つのは私だけではないでしょう。
※辻井伸行さんの姓の「辻」は正式には、点がひとつの「辻」です。