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本気でプロを目指す!題名プロ塾第4弾〜前編

投稿日:2024年03月30日 10:30

 今週は葉加瀬太郎さんによる大人気企画「題名プロ塾」第4弾の前編をお送りしました。最終レッスンで選ばれた塾生1名は番組からのデビューが約束されているこの企画、これまでにも林周雅さん、堀内優里さん、ミッシェル藍さんの3名が合格して、現在活躍をくりひろげています。
 前編となる今回は、クラシックの名曲を原曲としたそれぞれジャンルの異なるポップスを5人の塾生のみなさんに演奏していただきました。クラシックとはまた違った演奏スタイルが求められることが、葉加瀬さんのアドバイスからよく伝わってきましたよね。
 渥美結佳子さんが演奏したのはロック版「ペール・ギュント」。原曲はグリーグ作曲の「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿にて」です。渥美さんの鮮やかな演奏が、葉加瀬さんのアドバイスによって、一段と大きく羽ばたいたように感じました。
 ディキシーランド・ジャズ版「威風堂々」を演奏したのは成宮千琴さん。原曲はエルガーの代表作です。葉加瀬さんのアドバイスでメンバー全員と向き合って演奏することで、ぐっと対話性の豊かな演奏になりました。
 カントリー版「カルメン」を演奏したのは田中杏佳さん。歯切れのよい軽快な演奏でしたが、葉加瀬さんが求めたのはテヌートを基本とした演奏。ムードが一変して、リラックスしたテイストが生まれました。
 モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はしっとりしたバラード版で。新美麻奈さんの演奏は深みのある豊かな音色が印象的でした。休符の扱いを大切にして、歌うように弾くという葉加瀬さんのアドバイスで、さらに味わいが増しました。
 スウィング・ジャズ版「白鳥の湖」を演奏したのは木村元美さん。葉加瀬さんの弓を弦から離さないで休符を表現するというアドバイスで、音楽の推進力が増しました。
 最終レッスンに進んだのは渥美結佳子さん、成宮千琴さん、新美麻奈さんの3名。はたしてだれが選ばれるのか、次回が楽しみです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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もうすぐ60周年!私の音楽人生に影響を与えた名演の音楽会 後編

投稿日:2024年03月23日 10:30

 この4月で60周年を迎える「題名のない音楽会」。前回に引き続き、第一線で活躍する音楽家たちのみなさんに番組の思い出と、もう一度見たい名演について語ってもらいました。
 葉加瀬太郎さんがもう一度見たい名演に挙げたのは、少年時代の憧れの存在だったという坂本龍一さんの出演回。1984年放送の黛敏郎さんとの対話シーンがありましたが、当時坂本龍一さんは32歳の若さ。YMOの散開直後でした(当時、YMOはグループの「解散」と呼ばずに、あえて「散開」という言葉を使っていました)。東京藝術大学大学院修了作品の「反復と旋」が演奏されていましたが、いわゆる「現代音楽」と呼ばれるモダンな書法が用いられていたのが印象的です。
 角野隼斗さんが挙げたのは、久石譲さんが新日本フィルを指揮したジョン・アダムズの「ロラパルーザ」。ジョン・アダムズは現代アメリカの作曲家で、ポスト・ミニマルミュージックと呼ばれる反復的なスタイルを特徴としています。オーケストレーションも巧みで、その主要作品はベルリン・フィルをはじめ世界中のオーケストラによって演奏されています。現代の作品ですが、おそらく今後レパートリーとして定着して、新たな「クラシック音楽」になることでしょう。
 廣津留すみれさんがもう一度見たい名演に挙げたのは、デイヴィッド・ギャレットの「熊蜂の飛行」。カッコよかったですよね。デイヴィッド・ギャレットは一世を風靡したヴァイオリン界のスーパースター。ロックスターのような風貌でありながら、鮮やかなヴァイオリンのテクニックで聴く人を魅了します。
 山田和樹さんは、山本直純さんの指揮台の高さを変える実験企画を、子どもながらにおもしろいと思ったと言います。そんな実験精神が引き継がれたのが、2016年放送の「指揮者のわがまま音楽会」。山田さんはオーケストラの配置をばらばらにしてプロコフィエフの「古典交響曲」を指揮してくれました。既存の常識を疑う姿勢は、クラシック音楽の世界でも大切なことなのかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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もうすぐ60周年!私の音楽人生に影響を与えた名演の音楽会 前編

投稿日:2024年03月16日 10:30

 「題名のない音楽会」はこの4月で60周年を迎えます。今回と次回にわたり、第一線で活躍する音楽家たちのみなさんをお招きして、番組の思い出ともう一度見たい名演について語ってもらいました。
 高嶋ちさ子さんは2001年の「期待の若き音楽家たち」に初出演して以来、48回にわたって出演。これまでに高嶋さんならではの楽しい企画がたくさんありました。高嶋さんがもう一度見たい名演として挙げたのが、2018年放送の2CELLOS「スムーズ・クリミナル」。2CELLOSはYouTubeをきっかけに一世を風靡したデュオです。チェロのデュオでこんなにカッコいい音楽ができるのかという新鮮な驚きがありました。
 反田恭平さんは子どもの頃から番組を見て、視聴者参加企画に出演し、大人になってピアニストとして番組に帰ってきました。こんなことがあるんですね。反田さんが思い出に残る回として挙げてくれたのは、青島広志さんがハイドンに扮して大活躍をする回。交響曲第94番「驚愕」第2楽章にある聴衆をびっくりさせる仕掛けが解説されていました。ジョーク好きのハイドンにふさわしい楽しい趣向でした。
 作曲家の服部隆之さんのお話で印象的だったのは、番組はオーケストラの指揮を学ぶ貴重な機会だったということ。だれよりも作品を熟知している作曲家が自作を指揮をするのはごく自然なことですが、一方で作曲家も経験を積まなければ十分な指揮ができないことに気づかされます。服部さんが挙げた名演は、2007年放送のミシェル・ルグランと羽田健太郎の共演による「シェルブールの雨傘」。演奏中の羽田さんの至福に満ちた表情と高揚感あふれる音楽がすばらしいかったですよね。
 箏奏者のLEOさんのもう一度見たい名演は、現代邦楽の第一人者として箏の世界を切り拓いた沢井忠夫の箏と歌(!)による「ラブ・ミー・テンダー」。こんな映像があったとは。びっくりしました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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みんなで奏でる!ドラえもん交響楽(シンフォニー)の音楽会

投稿日:2024年03月09日 10:30

 今週は現在公開中の『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)』とのコラボレーション企画をお送りいたしました。映画では「音楽」をテーマに、ドラえもんとのび太くんたちが大冒険をくりひろげます。
 石丸幹二さんも「ワークナー」役で声で出演。オペラ口調で話す役柄なのですが、オペラの大作曲家ワーグナーをもじっているんですね。ほかにもベートーヴェン風の「ヴェントー」、モーツァルト風の「モーツェル」、滝廉太郎風の「タキレン」といった作曲家にちなんだ名前の登場人物が出てきます。
 歌姫ミーナ役の声優を務めるのは芳根京子さん。この映画をきっかけに全国から参加者を募集して結成された子ども楽器隊「ドラドラ♪シンフォニー楽団」といっしょに、フルートを演奏してくれました。曲は「夢をかなえてドラえもん」。元気いっぱいに演奏する子どもたちの姿を見ると、元気がわいてきます。
 映画では、のび太くんが苦手なリコーダーを練習しているところに、不思議な少女ミッカがあらわれます。そこで今回の収録では、客席のみなさんにリコーダーを持参してもらい、栗コーダーカルテットといっしょに「リコーダーの課題曲「白鳥のエチュード」」を演奏していただきました。子どもたちにとっては学校の授業でおなじみのリコーダーですが、大人にとっては懐かしい楽器。もうすっかり指使いを忘れてしまったという方も多かったことでしょう。なんと、東京交響楽団のみなさんもリコーダーで参加してくれました。大人数で吹いたリコーダーの音色はすごく爽やかで温かみがありますね。
 ミッカ役は平野莉亜菜さん。透き通るような清澄な声がすばらしい! おしまいの「地球交響楽〜1楽章」では、作曲者服部隆之さん自身の指揮のもと、東京交響楽団の重厚なサウンドに、平野さんの歌、栗原正己さんのリコーダー、林周雅さんのヴァイオリンなど、さまざまなソロが加わって、雄大な楽想を堪能させてくれました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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小林愛実が“即興曲”を弾く音楽会

投稿日:2024年03月02日 10:30

 今週は演奏家が名曲に題名をつけて演奏する好評シリーズ企画の第6弾として、ピアニストの小林愛実さんをお招きしました。小林さんは2021年のショパン国際ピアノ・コンクールで第4位に入賞。同じコンクールで第2位に入賞した反田恭平さんと結婚し、出産を経て、ステージに帰ってきました。
 今回、小林さんが選んだ3曲は、すべて「即興曲」です。クラシック音楽の世界で「即興曲」といえば、主にロマン派の時代に好まれた性格的小品(キャラクター・ピース)の一種で、即興的な性格を持った小品を指します。実際に即興をするのではなく、決まった形式を持たない自由な発想で書かれた作品という意味合いなんですね。
 その即興曲の分野で名曲を残したのがシューベルト。小林さんはシューベルトの即興曲Op.90-2に対して、「7歳の思い出」と名付けました。これは小林さん個人の思い出にちなんでいるわけですが、ピアノ学習者の方には、7歳とは言わずとも、発表会等でこの曲に思い出を持っている方も少なくないことでしょう。
 ショパンの「幻想即興曲」も広く親しまれている名曲です。「即興曲」の前に「幻想」と付いていますが、これは作曲者の死後に他人が付けた題名です。クラシックの名曲ではよくあることですが、他人が付けた題名がそのまま定着しました。小林さんがこの曲に付けた題名は「オルゴール」。オルゴールのふたを開けて感じる懐かしさに、作品に込められたショパンの祖国への思いを重ね合わせたところからの連想でした。たしかにこの曲にはノスタルジーを感じます。
 3曲目はシューベルトの即興曲Op.142-2。小林さんが付けた題名は「包まれて」。これはよくわかりますよね。冒頭のメロディから聴く人を包み込むような優しさが伝わってきます。出産後は「どの作品を弾いても子どものことを思い出してしまう」と語る小林さんの言葉通り、慈愛に満ちたシューベルトでした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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