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意外と知らない!?クラリネットがわかる休日

投稿日:2021年05月29日 10:30

なじみ深いようでいて、実はあまり知られていないのがクラリネット。今回はそれぞれ異なるフィールドで活躍する、吉田誠さん、谷口英治さん、瀬戸信行さんの3名のクラリネット奏者のみなさんに集まっていただきました。なんといってもクラリネットの特徴はジャンルの広さ。クラシックでもジャズでも民族音楽でも重要な役割を果たしてきました。
 実はクラリネットはほかの木管楽器に比べると歴史の浅い楽器です。クラシックのオーケストラでも新参者ですので、モーツァルトやハイドンのような古い時代のオーケストラ曲では、クラリネットが使われていないケースがよくあります。モーツァルトは晩年になって(といっても35歳で亡くなっていますので、まだ若いのですが)、ようやくクラリネットの作品を書くようになり、クラリネット協奏曲やクラリネット五重奏曲といった大傑作を残してくれました。
 ですので、モーツァルトのクラリネット曲が晩年に偏っているのには理由があるのですが、吉田さんがおっしゃるようにブラームスやサン=サーンス、プーランクなど他の作曲家たちも晩年になってクラリネットの曲を書いているのは意外でした。
 プーランクのクラリネット・ソナタはジャズ・クラリネットの巨匠ベニー・グッドマンにより初演されました。クラシックでのグッドマンの功績はこの曲だけではありません。たとえばコープランドのクラリネット協奏曲はグッドマンが委嘱した作品。谷口さんが「クラリネットのジャズは一度死んだ」とおっしゃっていましたが、おかげでクラシックのレパートリーが増えたともいえます。このあたりのジャンルの交流がおもしろいですね。
 クレズマーは東欧系ユダヤにルーツを持つ音楽。瀬戸さんの「こぶし」、なんともいえない濃厚な味わいがありました。マーラーのようにクレズマー風の曲想を交響曲に取り入れた作曲家もいますが、ここまでの「こぶし」はクラシックではまず聴けません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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オーケストラの黒幕楽器を知る休日

投稿日:2021年05月22日 10:30

「黒幕」とは辞書によれば「表面には出ないで、指図をしたり、はかりごとをめぐらしたりする者」(デジタル大辞泉)。本日はオーケストラを操る黒幕楽器として、ヴィオラの須田祥子さん、ファゴットの長哲也さん、ユーフォニアムの外囿祥一郎さん、テューバの山岸明彦さんに集まっていただきました。
 「メロディが生きるか死ぬかは私たち次第」とおっしゃるのは、ヴィオラの須田祥子さん。ヴィオラの「刻み」の例として、モーツァルトの交響曲第40番が紹介されていましたが、そういえばこの曲は冒頭でヴィオラが一足早く登場して、ヴァイオリンを先導しています。
 ファゴットは木管アンサンブルを支える土台。弦楽器とファゴットがいっしょに演奏する場面として、モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」序曲の冒頭が例に挙げられていました。この部分、とても軽快でチャーミングなのですが、ファゴットの少しくすんだ音色が効いています。全体の音色に深みを与えるとともに、喜劇のはじまりにふさわしいほのかなユーモアも漂わせています。
 ユーフォニアムは表にも裏にも回れるユーティリティ・プレーヤー。ユーフォニアムが目立つ曲といえば、ホルストの吹奏楽のための第2組曲。朗々と歌うような落ち着いたメロディが印象的ですが、実はあそこは裏から表に瞬時に早変わりするという、意外とあわただしい場面だったんですね。
 テューバは最低音域を担当。リズムを刻んで曲のキャラクターを表現します。まさにキング・オブ・黒幕。他の楽器への影響力はわたしたちが思っているよりずっと強いようです。
 最後に演奏されたのはベルリオーズ作曲の「幻想交響曲」より。本来なら100名規模の大編成によるカラフルでド派手な曲を、あえて黒幕楽器だけで演奏してしまうという逆転の発想です。一大スペクタクルが親密な音楽に変身していました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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7人制吹奏楽!ブリーズバンドの音楽会 第3弾

投稿日:2021年05月15日 10:30

今週は番組発の新しい合奏スタイル、7人制吹奏楽ブリーズバンドの第3弾。今回もおなじみの名曲が多彩なアレンジで生まれ変わりました。聴かせどころ満載で、本当にカッコよかったですよね。楽譜は番組ホームページより無料でダウンロードできます。
 一曲目は「白雪姫」の「ハイ・ホー」。ブリーズバンドは曲ごとの編成におもしろさがあります。木管楽器中心の編成で、とても軽やかで透明感のあるサウンドが印象的でした。ピッコロとフルート2本の高音が効いていましたね。しかも7拍子。7人編成、7人のこびと、7拍子という7づくし。新鮮味がありました。
 二曲目はあいみょん「裸の心」。こちらは金管楽器中心の編成で、ふっくらとした厚みのある響きで奏でられました。ブリーズバンドでは全員が主役、低音楽器のテューバにもソロが用意されています。柔らかいブラスの響きがノスタルジーを喚起します。この楽器編成だからこそ生まれる味わい深さがありました。これぞ編曲の妙でしょう。
 三曲目は「カルメン・クライマックス!」。原曲はビゼーの超名作オペラ「カルメン」です。スペインを舞台に、魔性の女カルメンがマジメな男ホセの運命を狂わせるという悲恋の物語。情熱の国スペインのムンムンとしたムードが管楽器のアンサンブルから伝わってきます。思わず膝を打ったのはユーフォニアムの活躍。なんと、カルメンが恋の気まぐれさを歌う「ハバネラ」のメロディを奏でるではありませんか。一見、意外ですが、ユーフォニアムの深く豊かな音色は、信念の人カルメンにぴったりなのでは。ホセの恋敵を表現する「闘牛士の歌」では、木管楽器と金管楽器の熱いバトルも。これは楽しい!
 演奏する人にとっても聴く人にとっても楽しい編曲がそろいました。ブリーズバンドは決してコロナ禍だけのものではないはず。少人数だから可能な新しい吹奏楽の楽しみ方だと思っています。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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本気でプロを目指す!題名プロ塾第2弾~最終審査

投稿日:2021年05月08日 10:30

今週はいよいよ「題名プロ塾第2弾」の最終審査。加藤光貴さん、嶋田雄紀さん、堀内優里さんの3名が最終選考に挑みました。百戦錬磨のトッププロたちを従えてソリストとして演奏するのは、たいへん貴重な機会だったと思います。見る側にもヒリヒリとした緊張感が伝わってきたのではないでしょうか。
 課題曲は「情熱大陸」。まずは先輩塾生として、第1回のオーディション通過者である林周雅さんがお手本演奏を披露してくれましたが、これが堂々たる弾きっぷり。以前、受講生として登場した頃と比べて、すっかりたくましくなった姿を見せてくれました。
 受講生のトップバターは加藤光貴さん。勢いのある演奏で、オブリガートがとてもカッコいいと思ったのですが、プロ側からは「オーケストラのリズムと合っていない」「オブリガートで音の数が多すぎる」という指摘が。しかし、こういったアドバイスを即座に消化して、自分の演奏に反映させることができるのが加藤さん。二度目の演奏はぐっと洗練されていました。
 二番目に演奏したのは一般企業で働きながらヴァイオリンを演奏する嶋田雄紀さん。前回もポップスのリズムに苦労する様子がうかがえましたが、今回もやはりリズム感についての指摘がありました。それでも葉加瀬さんのステップを踏みながら演奏するというレッスンを受けると、格段の進歩を見せます。嶋田さんは音楽にまっすぐな力強さがあるのがいいですよね。オブリガートは壮大かつ華麗で、聴いていてワクワクしました。
 三番目は堀内優里さん。歯切れよく軽やかなソロとバランスのよいオブリガートを、澄んだ音色で披露してくれました。プロ側からは、ここでもリズム感についての指摘が続きます。しかしアンサンブル能力の高さ、音色の美しさが高く評価されて、見事にオーディションを通過しました。これからの活躍が本当に楽しみです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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本気でプロを目指す!題名プロ塾第2弾~1次審査後編

投稿日:2021年05月01日 10:30

今週は先週に引き続いて、「題名プロ塾」第2弾の1次審査後編をお届けしました。今回のテーマは、直前に渡された譜面をいかに弾きこなせるか。5人の受講生のみなさんが、それぞれ多彩なアレンジが施された有名曲に挑みました。メインのメロディを奏でるのはピアノで、ヴァイオリンの役割はオブリガート(対旋律、裏メロ)。全員が異なる課題を与えられていましたが、葉加瀬さんのアドバイスで、演奏ががらりと変わるのがおもしろかったですよね。
 嶋田雄紀さんが演奏したのはバラード・アレンジによる「イエスタデイ」。けれんのないまっすぐな演奏でしたが、葉加瀬さんのアドバイスを受けた後は、ぐっと彫りの深い表情の音楽になりました。
 雑賀菜月さんはジャズワルツ・アレンジによる「星に願いを」。葉加瀬さんはクラシック音楽にはないリズム感を求めます。なるほど、スイングというのはこういうことなんだなと腑に落ちたのではないでしょうか。
 加藤光貴さんは16ビートシャッフル・アレンジの「アメイジング・グレイス」。最初からとても精彩に富んだ演奏で、葉加瀬さんからは「使えるねえ」の一言。見事でした。
 小柴千明さんの16ビート・アレンジ「ロッキーのテーマ」では、葉加瀬さんの「ミシミ ミシミは喜ばないと」というアドバイスが印象的でした。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲にも似た場所がありますが、これがカッコいいんですよね。クライマックスとは別に用意されたもうひとつの見せ場とでも言いましょうか。
 堀内優里さんのブルーグラス・アレンジ「カノン」では、葉加瀬さんいわく「アイリッシュは、アップビートをダウンで弾く」。リズム楽器がなくても踊れる音楽でなくてはならないといいます。
 葉加瀬さんのレクチャーを聞いていると、単にヴァイオリンの奏法に留まらない、音楽の仕組みや成り立ちに触れることができて、本当に刺激的です。音楽の奥深さを痛感せずにはいられません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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