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本気でプロを目指す!題名プロ塾第2弾~1次審査前編

投稿日:2021年04月24日 10:30

今週は本気でプロを目指す人のための「題名プロ塾」第2弾。前回、オーディションで合格した林周雅さんは、葉加瀬太郎さんのコンサートで無事デビューを果たし、その後も活躍の場を広げています。今回は新たに5人の受講生が集まりました。
 1次審査前編では5人の受講生が課題曲「情熱大陸」に挑戦。葉加瀬さんのアドバイスを受ける前と後では、見違えるほど演奏が変わるのがおもしろかったですよね。ああ、音楽を教えるって、こういうことなんだな、と実感できたのではないでしょうか。5人ともしっかりした技術を持っていて、最初から個性を反映した演奏を披露してくれているのですが、それでも葉加瀬さんのわずかなアドバイスで、音楽がぐっと生き生きしたものに変化します。
 葉加瀬さんが教えるのは「食べていけるためのヴァイオリンの弾き方」というだけあって、どれも実践的で具体的。そして、やはりポップスとクラシックのアプローチの違いが随所にあらわれていたように思います。
 たとえば、加藤光貴さんには「オンビートに意識が行き過ぎている」。クラシックでは4拍子の1拍目と3拍目に意識が向きがちですが、葉加瀬さんは「2拍目と4拍目を感じるように」と教えます。これで演奏ががらりと変わりました。教えてもらったことを、すぐに実践できる応用力もすばらしいですよね。
 嶋田雄紀さんには、Aメロの終わりでわずかに遅れるという指摘がありました。クラシックではフレーズの終わりにわずかな「タメ」を入れることで自然な呼吸が生まれることもありますが、ポップスではビートに乗るのが基本。葉加瀬さんのアドバイスを受けて、とてもグルーヴ感のある演奏になりました。
 5人の受講生のバックボーンはまちまち。音大生、医大生、社会人と意外なほど多彩です。今回はいったいだれがオーディションを勝ち抜くのでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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ジャズ界のレジェンドピアニスト・小曽根真 クラシック界の若き天才ピアニスト・藤田真央 夢の初共演の音楽会

投稿日:2021年04月17日 10:30

今週は小曽根真さんと藤田真央さんの夢の共演が実現しました。小曽根さんはジャズ界のレジェンド。藤田さんはチャイコフスキー国際コンクール第2位、クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝の俊英。ジャンルは違えども、ともに国際的に活躍するピアニストです。
 藤田さんが7歳のとき、クラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」で初めて小曽根さんを聴いたというお話にはびっくり。近年の小曽根さんはクラシックの分野でも大活躍しています。小曽根さんがクラシックのオーケストラと共演した公演をこれまでに何度も聴いていますが、客席は常にわきあがります。クラシック音楽ファンにとっても小曽根さんは特別な何かを持ったピアニストなんですね。以前、アメリカからデトロイト交響楽団が来日した際、ソリストとして小曽根さんが共演したことがありました。オーケストラの音楽監督で世界的指揮者のレナード・スラットキンは「以前から小曽根のファンで、ニューヨークのブルーノートで何度も聴いている」と語っていて、小曽根さんの人気ぶりを痛感しました。
 小曽根さんのモーツァルトには、常に即興の要素があります。クラシックでは楽譜に忠実に弾くのが基本。しかし、モーツァルト本人は即興の名手だったはず。当時の演奏習慣として即興はごく一般的なものでした。名人の即興が楽譜に記録されて後世に残った、という作品も少なからずあることでしょう。そう考えると、小曽根さんがモーツァルトに即興を盛り込むのは不思議なことではありません。
 モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」では、小曽根さんと藤田真央さんの遊び心が爆発していました。最後にはふたりの完全な即興によるカデンツァ風の見せ場も登場して、まさに自由自在。即興部分から本来のモーツァルトに戻った瞬間のおふたりの表情が最高にすばらしかったですよね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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今、注目のニュータイプの音楽家を知る休日

投稿日:2021年04月10日 10:30

今週は今、注目を集めるニュータイプの音楽家、廣津留すみれさん、角野隼斗さんの魅力に迫りました。音楽界には常に新しい才能が登場していますが、おふたりは単に「すぐれた若手」というだけに留まらない稀有な存在です。多くの若手演奏家は、有名な音楽大学に入り、国際コンクールで入賞して、やがて檜舞台で成功を収める……といった段階を経て名を知られてゆくものですが、廣津留さんも角野隼斗さんも従来とは違った形でキャリアを築いています。
 廣津留さんはハーバード大学とジュリアード音楽院の両方を首席で卒業。それだけでも聞いたことのない話ですが、そこから音楽家として活動すると同時に、起業したり、本を書いたり、講演会を開いたり、テレビのコメンテーターを務めたりと、多岐に渡る活動をくりひろげています。いったいどんな時間の使い方をすれば、そんなことができるのかと思ってしまいますよね。バッハ・コレギウム・ジャパンでヴァイオリン奏者として演奏している姿が映っていましたが、まさかそんなところでも弾いていらっしゃったとは! バッハ・コレギウム・ジャパンは古楽の分野で国際的に高く評価されるトップレベルのアンサンブルです。
 角野隼斗さんのことを、本名よりも先にYouTuber かてぃん(Cateen)の名で知った方も多いのではないでしょうか。インターネットの世界ではずいぶん前より人気を集めていましたが、今やチャンネル登録者数は70万人以上。クラシックの演奏家でこの人数は驚異的です。東京大学大学院の情報理工学系研究科卒業という経歴ですから、いろいろな人生の選択肢があったと思いますが、こうして音楽家として羽ばたいている姿を見ると、うれしくなってしまいます。
 ふたりとも共通してクラシック音楽の魅力を広く伝えたいとおっしゃっているのが心強いですね。これから先、きっと予想もつかない活躍を見せてくれることでしょう。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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一流の音楽家が夢のマッチング ドリーム・デュオ第5弾

投稿日:2021年04月03日 10:30

今週は好評のドリーム・デュオ企画、第5弾。日本を代表するトップレベルの奏者たちが、斬新な組み合わせによるデュオを披露してくれました。
 近年、協奏曲やリサイタルで大活躍中の気鋭のヴァイオリニスト、辻彩奈さんが共演を熱望したのは、「色っぽいギターを弾く」という大萩康司さん。クラシック音楽ではもっぱら主役を務めるヴァイオリンと、さまざまな民族音楽をはじめあらゆるジャンルで用いられるギターでは、あまり共演機会はありません。ところが、この両者の珍しいデュオのためにパガニーニが曲を残しています。パガニーニといえば「悪魔に魂を売った」と噂されたほどの超絶技巧で知られるヴァイオリニスト。その作品の大半は技巧的なヴァイオリン曲ですが、実は彼はギターも嗜み、ときにはギターの奏法をヴァイオリンに応用することもありました。一世によればギター奏者の愛人がいたため、ギター曲を書いたといいますが、なるほど、この「カンタービレ」は甘美でやさしさにあふれています。
 ピアソラの代表作「リベルタンゴ」を演奏してくれたのは、ホルンの福川伸陽さんとバンドネオンの三浦一馬さん。ホルン自体、デュオを聴く機会のまれな楽器ですが、バンドネオンとのデュオは前代未聞かもしれません。福川さんのホルンのまろやかな音色と、三浦さんのバンドネオンの明るくシャープな音色が組み合わさって、絶妙な味わいが生み出されていました。タンゴの革命児と呼ばれたピアソラは、今年生誕100年を迎えます。ピアソラの音楽はタンゴの世界にとどまることなく、あらゆる楽器で演奏されていますが、また新たな可能性が開かれたように思います。
 最後は伊賀拓郎さんのピアノと伊波淑さんのラテンパーカッションによる、幼なじみデュオ。まさか「さくらさくら」が、こんなに楽しい音楽になるとは。歯切れよくスピード感にあふれた「さくらさくら」は新鮮でした。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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