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石丸幹二が選ぶ名演(2)ベストパフォーマンス

投稿日:2020年05月30日 10:30

先週のベストソング集に引き続き、今週は石丸幹二さんがセレクトしたベストパフォーマンス集。国内外で活躍する多彩な顔ぶれのアーティストがそろいました。
 高嶋ちさ子さんは12人のヴァイオリニストとスーパーチェロ8のみなさんと共演。チェロの江口心一さんによる「熊蜂の飛行」ならぬ「ぐるん蜂の飛行」はインパクト抜群でした。ヴァイオリンの速弾き曲として人気の高い「熊蜂の飛行」をチェロで速弾きするだけでもすごいのですが、まさか電動立ち乗り二輪車上で弾いてくれるとは! エルガーの行進曲「威風堂々」第1番では、耳だけでなく目も楽しませてくれる華やかなステージがくりひろげられました。
 ラン・ランはクラシック音楽界のスーパースター。オレンジを使ったショパンの「黒鍵のエチュード」にはびっくりしましたね。この秘技をラン・ランに教えてくれたダニエル・バレンボイムは、ピアノと指揮の大巨匠。近寄りがたい雰囲気のあるバレンボイムにそんな茶目っ気があったとは意外です。発表会で人気の「エリーゼのために」を世界的ピアニストが弾くという場面も貴重でした。
 坂本龍一さんは自身が音楽監督を務める東北ユースオーケストラを率いて、Merry Christmas Mr. Lawrence を演奏。子供たちのピュアな表情が印象的でした。同楽団は東日本大震災の被災県の子供たちを中心に結成されたオーケストラです。ウィルス禍でことごとく演奏会が中止・延期となっている今、改めてオーケストラのすばらしさを痛感せずにはいられません。
 最後に登場した2CELLOSはステファン・ハウザーとルカ・スーリッチのふたりのチェリストによるユニット。チェロふたりでユニットを組むという発想が斬新です。このカッコよさはチェロのイメージを一変させたと言ってもいいのでは。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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石丸幹二が選ぶ名演(1)ベストソング

投稿日:2020年05月23日 10:30

今週は石丸幹二さんがセレクトしたベストソング集。これまでに登場した多彩なボーカリストたちの歌唱をふりかえりました。どれも記憶に残る名演でしたね。
 ディズニー公式アカペラグループのディカペラが歌ったのは「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー」&「雪だるま作ろう」。ボイスパーカッションが効果的で、アカペラとは思えないほど豊かな表現力があります。声に透明感と清涼感があるところも魅力です。
 「美女と野獣」の「ひそかな夢」を歌ったのは山崎育三郎さん。とてもエモーショナルな歌唱で、野獣の内面の葛藤がひしひしと伝わってきました。
 RPGゲーム「ファイナルファンタジーVIII」の「アイズ・オン・ミー」では、ソプラノの森麻季さんとギターの村治佳織さんが共演。こちらは番組55周年を記念してサントリーホールで収録された演奏です。国際的に活躍する山田和樹さんが55周年祝祭オーケストラを指揮しました。このオーケストラのメンバーがありえないほど豪華! 名だたる国際コンクールで受賞した気鋭のソリストたちがずらりと顔を並べています。ゲームミュージックがトップレベルの音楽家たちによって演奏されること自体がひとつの事件といっても過言ではありません。
 「マイ・ウェイ」を歌ってくれたのは、イタリア人男性オペラ歌手3人によるユニット、イル・ヴォーロ。3人の個性がうまくひとつに融合するユニットですが、ここに石丸さんがまったく違和感なく溶け込んでいることにびっくり。
 最後に登場したイル・ディーヴォは男性ボーカルユニットの先輩格。こちらは4人全員の出身地が違う多国籍ユニットです。「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」で披露してくれた輝かしい声は圧巻。この日の収録では、いつにも増して客席に熱気が渦巻いていたのを思い出しました。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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夢をかなえた音楽家たちの休日

投稿日:2020年05月16日 10:30

どんな音楽家にも初めての演奏体験があったはず。今週は現在大活躍中の5人の音楽家に初めての発表会や、プロへの第一歩について語っていただきました。
 反田恭平さんがギロックの「ガラスのくつ」を弾いたり、村治佳織さんが「ちょうちょう」を弾く場面は新鮮でした。子供が発表会で弾くような曲でも、やっぱりプロが弾くとなにかが違います。吉田誠さんは本職のクラリネットではなく、3歳で始めたというピアノを演奏。びっくりしましたが、管楽器の場合はある程度身体の成長が必要なので、先にピアノを学んでいるケースも少なくないのでしょう。上野耕平さんの初舞台が「水戸黄門」だったというお話がおかしかったですね。
 反田恭平さんのデビューのきっかけについてのお話も印象的でした。桐朋学園の学生たちが出演するカフェで演奏したところ、デビューの声がかかったということでしたが、デビュー前から反田さんに注目していた人はたくさんいたはず。私が反田さんの演奏を聴いたのは、おそらくその学生カフェの場面だったと思うのですが、客席に音楽業界関係者がたくさんいて驚いたことを記憶しています。そこから、瞬く間にコンサートデビューやCDデビューが決まり、反田さんの快進撃が始まりました。
 その反田さん、吉田さん、宮田大さんの3人によるトリオが、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第4番「街の歌」で実現しました。高度な技術を持った3人ならではの親密で精彩に富んだ演奏を堪能できました。一般にピアノ三重奏といえば、ピアノ、ヴァイオリン、チェロの編成ですが、この曲はピアノ、クラリネット、チェロという珍しい編成で書かれています。本日お聴きいただいたのはその第1楽章。この曲の第3楽章では当時の流行歌のメロディが使われています。街で流行の歌を使っているということから、付いた愛称が「街の歌」。機会があったら、ぜひ全曲を聴いてみてください。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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Toshl ディズニーをオーケストラで歌う音楽会

投稿日:2020年05月09日 10:30

今週は先週に引き続き、Toshlさんが原田慶太楼指揮東京フィルと共演。フル・オーケストラをバックにディズニーの名曲を歌ってくれました。Toshlさんのパワフルな歌唱と大編成のオーケストラならではの重厚なサウンドの組合せがゴージャスでした。
 「アラジン」の「ホール・ニュー・ワールド」は、アラジンを石丸さん、ジャスミンをToshlさんが歌うという新鮮な男声デュオ・バージョンで。石丸さんの温かみのある声とToshlさんの輝かしい声の組合せは絶品です。
 「美女と野獣」からは、ロウソクの燭台ルミエールが歌う「ビー・アワ・ゲスト(おもてなし)」と、主題歌「美女と野獣」の2曲をお届けしました。これも名曲ですよね。指揮の原田さんから「昔のディズニー・ソングはシンプルだったけど、今のディズニー・ソングは歌唱力がないと歌えない」というお話がありましたが、ディズニーの名曲はどれも親しみやすいだけではなく、音楽的にも聴きごたえがある曲がそろっています。
 これには「アラジン」「美女と野獣」をはじめ、数々のディズニー映画に曲を書いてきた作曲家アラン・メンケンが大きな役割を果たしたことはまちがいありません。もともとブロードウェイのミュージカルで活動していたアラン・メンケンを起用したことで、ディズニーの音楽は新しい時代を迎えました。
 「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」は、「アナと雪の女王2」で登場した名曲です。Toshlさんの伸びやかな声で聴くと、今まさに未知の旅へと赴こうとする高揚感が伝わってきます。前作の「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」に続いて、この「イントゥ・ジ・アンノウン」もインパクト抜群。いずれも作詞・作曲はクリスティアン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペスの夫妻です。ロペス夫妻は次代のアラン・メンケンになるかもしれません。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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Toshl オーケストラで歌う音楽会

投稿日:2020年05月02日 10:30

今回はToshlさんがフル・オーケストラと共演するという豪華企画。原田慶太楼さんが指揮する東京フィルとともに、名曲の数々を歌い上げてくれました。指揮の原田さんは数多のオーケストラから引っ張りだこの気鋭です。Toshlさんと原田さんの相性はぴったり。互いにリスペクトしあっている様子が伝わってきました。
 「残酷な天使のテーゼ」はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマとして一世を風靡した名曲。「エヴァンゲリオン」自体もさまざまな形で語り継がれる名作ですが、この曲もアニメソングの枠を超えて歌い継がれています。Toshlさんの歌声は気持ちがいいほどパワフル。圧倒的な高揚感がみなぎっていました。
 Toshlさんと石丸さんが共演した「闇が広がる」はミュージカルの名作「エリザベート」からの一曲。オーストリア皇后エリザベートの息子である皇太子ルドルフと、黄泉の皇帝トートが対峙します。トートとはドイツ語で「死」の意。石丸さんのトートがToshlさんのルドルフを誘惑するという男声同士の二重唱は迫力満点。ヴェルディの「オテロ」でのヤーゴとオテロの二重唱に相通じるものがありますね。
 そしてクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」は、Toshlさんがロックシンガーを目指すきっかけとなった曲。ひとつの曲の中にいろんなスタイルの音楽が混在する難曲で、原田さんいわく、「オペラのようにいろんな物語がある」。Toshlさんは名曲から起伏に富んだドラマを紡ぎだしてくれました。
 収録は3月9日、東京オペラシティのコンサートホールで行われました。本来であれば、曲が終わったところで客席がドッとわき上がるところですが、この日は無観客での収録。できることならこのすばらしい歌唱を客席のみなさんと一緒に聴きたかったと思わずにはいられません。一日も早いウィルス禍の終息を願うばかりです。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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