今週は名手6人による3組のデュオをお届けいたしました。デュオのおもしろさは、ふたつの個性がぶつかり合って、ひとつの音楽を作り出すところ。どんな化学反応が起きるかわからないという点で、ソロとはまた違った期待感があります。
最初はギターの村治佳織さんとチェロの宮田大さんの共演による久石譲作曲「君をのせて」。ほかの楽器に比べるとギターは音量の小さな楽器です。一方、チェロはオーケストラをバックにソロで朗々と歌い上げることもできる、豊かな響きを持った楽器。一見、アンバランスに見えますが、宮田さんは繊細な表現でギターにぴたりと寄り添ってくれました。
一方、ヴァイオリンとピアノの組合せは王道のデュオ。レパートリーも豊富にあります。辻彩奈さんと反田恭平さんが選んだのはフォーレの「夢のあとに」。ともにスケールの大きな音楽を作り出せるおふたりがいっしょになって、深々としたエモーショナルなフォーレを演奏してくれました。
ありそうでないのがクラリネットとサクソフォンの組合せ。同じ木管楽器ではあるのですが、サクソフォンはほかの楽器に比べると歴史が新しく、また音量も大きいため、このふたつの楽器のデュオを聴く機会はまずありません。ところが上野耕平さんと吉田誠さんのデュオで聴くと、この組合せがとても自然で調和しているように聞こえます。1曲目はフランスのバロック期の作曲家、ルクレールの「2つのヴァイオリンのためのソナタ」。2曲目は20世紀フランスの作曲家プーランクによる「2本のクラリネットのためのソナタ」。つまり、どちらも原曲は同じ楽器のデュオのために書かれていて、掛け合いのおもしろさを楽しめる作品です。上野さんと吉田さんの息の合った演奏が、楽曲の持つユーモアや機知を存分に伝えてくれました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)