今週は静岡県磐田市にあるヤマハ豊岡工場を訪問しました。ヤマハの管楽器製造の拠点である豊岡工場では、トロンボーンやサクソフォン、トランペット、フルートなどが作られています。
音楽ファンのための工場見学といった趣でしたが、これはもう驚きの連続だったのではないでしょうか。まさか、あそこまで職人の手作りで楽器が作られていたとは!
トロンボーンの製造工程では、まずイチョウ型をした真鍮の平らな板が出てきました。てっきりあれを機械で変形するのかと思いきや、よもやの手作業。職人が手で二つ折りにして、つなぎ目を溶接して、ハンマーで叩きながら丸い形に成形する。なるほど、これは職人技です。そして、楽器ごとにひとつひとつ個性があるということにも納得。手作りである以上、完全に同一の楽器はどこにもありません。
サクソフォンの表面に彫刻が施される場面もおもしろかったですよね。こちらも機械化されているのかと思ったら、まったくの手作業。自作の工具まで使って、グリグリと表面を彫り進めます。「もしも失敗したらどうなってしまうんだろう……」とドキドキせずにはいられません。楽器工場では異色の工程といいましょうか、まるで工芸品を見ているかのようです。
最大の驚きは、トロンボーンのスライド管をまっすぐに調整する力技。長さ70cmの管がわずか0.2mm曲がっただけでもNGという繊細さが求められる場面で、太腿を使ってグイッと手で曲げて、わずかなズレをなくしてしまいました。これは熟練の技でしょう。到底まねできるものではありません。
最後は中川英二郎さんと上野耕平さんと豊岡工場のみなさんが「聖者の行進」を演奏してくれました。楽器を奏でる人と作る人との共演。なんだかいい雰囲気でしたよね。
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管楽器職人に会いに行く休日
有名作曲家のひねりすぎた楽曲を楽しむ休日
今週は作曲家たちがとびきり独創的な工夫を凝らした楽曲をご紹介いたしました。
ハイドンの交響曲第45番「告別」は演奏される機会の多い人気曲です。ゲストの作曲家川島素晴さんが解説されたように、これは一種の「ストライキ」。長期出張中の楽員たちが家族のもとに帰りたがっていることを雇い主である侯爵に伝えるために、ハイドンは曲の終楽章にひとりひとり退出する仕掛けを作りました。ちなみに、このメッセージは正しく侯爵に伝わり、すぐに楽員たちには休暇が与えられたそうです。ホワイトな職場でよかったですね。
アンディ・アキホのピンポン交響曲「リコシェ」は2015年に作曲されたばかりの作品。作曲者は1979年、アメリカ生まれ。以前、スティーヴ・ライヒが来日した際のトーク・セッションで、注目すべき若手作曲家として彼の名前を挙げたことがありました。そのライヒの古典的名曲が「クラッピング・ミュージック」。今回は拍手ロボット「ビッグクラッピー」が演奏してくれました。リズムのおもしろさという点で、ライヒとアキホの両作には一脈通じるところがあります。
バッハの「逆行カノン」は、「音楽の捧げもの」と題された曲集のなかの一曲。バッハがフリードリヒ大王に面会した際、大王から与えられたテーマに基づいて作られたという曲集です。「逆行カノン」でもその大王のテーマが題材となっています。バッハの作曲技法にもびっくりですが、テーマをさらっとバッハに与える大王も相当な音楽的教養の持ち主なんですよね。
ジョン・ケージの「Organ²/ASLSP」は怪作です。ASAP(As Soon As Possible)ならぬASLSP(As SLow aS Possible)。理論上は無限に遅く演奏できることになります。それにしても演奏に何百年もかかるとは。いったいだれが聴くんでしょうね……。
低音楽器女子の休日
大きなサイズの低音楽器は、男性が演奏するものと思われがちです。ところが最近では低音楽器を演奏する女性奏者が珍しくありません。今回はそんな低音楽器の女性奏者たちに集まってもらい、楽器の魅力や特徴、低音楽器ならではの苦労について語っていただきました。
通常、ソロでもアンサンブルでも目立つのは高音楽器です。弦楽器ならヴァイオリン、木管楽器ならフルート、金管楽器ならトランペット。オペラでも主役はテノールかソプラノ。それなのに「目立ちたいから」という理由でコントラバスを選んだのがYu-Kaさん。ヴァイオリン奏者は大勢いるから、あえてコントラバスを選ぶという逆転の発想です。コントラバスは地味な楽器という先入観を覆して、華やかな演奏を披露してくれました。ボッテジーニの「夢遊病の女」による幻想曲での鋭く機敏な演奏にはびっくり。コントラバスって、ソロ楽器としても魅力的だったんですね。
ふだん、ソロ楽器として聴くチャンスがないのはテューバも同じ。テューバの福本恵子さんはユーフォニアムの新井秀昇さんといっしょに「グリーンスリーブス」を演奏してくれました。低音楽器だからゴツい雰囲気になるのかと思いきや、マイルドで暖かみのある音色がノスタルジックな曲想とマッチしていて、新鮮な感動がありました。
サクソフォンのなかで低音部を担うのはバリトンサックス。高尾あゆさんのお話にあったように、メロディと伴奏のどちらでも活躍できるという強みを持っています。豊かで深い響きが魅力的です。
ファゴットも低音楽器でありながら、意外とソロの活躍も多い楽器と言えるでしょう。低音を生かしてユーモラスな味わいを出すこともできれば、愁いを帯びたメロディを奏でることもできます。福士マリ子さんが演奏してくれたのは、父親であり高名な作曲家である福士則夫作曲の「竜夢」。ファゴット一本だけでこれだけ多彩な表現が可能なんですね。
題名のない音楽会55周年 令和スペシャルコンサート(3)
今週は番組開始55周年を記念した「題名のない音楽会」令和スペシャルコンサートの第3回をお送りいたしました。テーマとなったのはゲームやJポップなど、日本のポップカルチャー。さまざまなポップカルチャー由来の楽曲が、豪華アーティスト陣によって演奏されました。
一曲目は植松伸夫さん作曲の『ファイナル・ファンタジーVIII』より「Eyes On Me」。ゲームソフトのテーマ曲として作られながらも、曲のCDが50万枚を超える大ヒットを記録したという名曲です。これを森麻季さんのソプラノ、村治佳織さんのギターを中心に、若い世代を代表する日本の名手たちが共演しました。ソプラノとギターによる情感豊かな演奏が、ノスタルジーを喚起します。
よく、オペラなどでは、劇中のアリアや序曲が本体のストーリーを離れて、単独で演奏されるようになることがあります。たとえばマスネの「タイスの瞑想曲」とか、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」のように、本編から切り離されて、特定の楽曲が演奏され続けるケースも珍しくはありません。同じようにゲームの音楽が、楽曲としてずっと残ることも十分にありうるのではないでしょうか。
二曲目は3人の女性ヴァイオリニストたちによるパフュームの「ポリリズム」。川久保賜紀、南紫音、小林美樹という超強力な三重奏に山田和樹指揮55周年祝祭オーケストラが加わって、上質のアンサンブルが実現しました。弦楽器の潤い豊かでしなやかな響きが絶品! こんなに耽美な「ポリリズム」がありうるとは。
最後は山下達郎作曲の「アトムの子」。手塚治虫へのトリビュートソングとして作られた曲です。こちらは西洋楽器と日本楽器が融合した、スター勢揃いの大合奏で。日本的でありながらも、国籍を超えた音楽になっていました。名手たちが次々とソロを聴かせてくれて、楽しかったですね。
題名のない音楽会55周年 令和スペシャルコンサート
今週は番組開始55周年を記念した「題名のない音楽会」スペシャルコンサートの第2回をお届けしました。和洋それぞれの楽曲が日本を代表する名手たちによって演奏されました。
一曲目はヴィヴァルディの有名な「四季」のメドレー。ヴィヴァルディがヴェネツィアの四季折々の情景を描写した協奏曲集です。本来は「春夏秋冬」の順で演奏されますが、今回は萩森英明さんの巧みな編曲によって、「夏」の嵐から始まり、豊穣の「秋」、寂寥とした「冬」を経て、最後は晴れやかな「春」で終わるという趣向になっていました。
本来、この曲ではひとりのヴァイオリン奏者がソロを務めますが、なにしろ今回の「55周年祝祭オーケストラ」はメンバーのひとりひとりが主役級のソリストばかり。ヴァイオリンだけでも川久保賜紀さん、小林美樹さん、周防亮介さん、成田達輝さん、南紫音さん、山根一仁さん、米元響子さんといった超強力メンバーがそろっています。とてもだれかひとりをソロに選ぶことなどできません。そこで、次々とソリストが交代しながら演奏するというスタイルになりました。
それにしてもこの「55周年祝祭オーケストラ」が作り出す響きの美しさと来たら! あれだけの潤いと艶やかさ、精緻さをもったサウンドはめったに耳にできるものではありません。
二曲目の「伝統から革新への序破急」では、邦楽器の分野で独自の道を切り開くアーティストたちが集まって、これまでにないアンサンブルを実現させました。リハーサルは談論風発といった様子。伝統的書法による「序」、現代的な発想による楽器法や奏法が用いられた「破」、祝祭感あふれる「急」からなる三部構成で、全体を通して聴くとひとつの大きな物語が浮かび上がってくるような作品になっていました。