今週は高嶋ちさ子さんをお招きして、ドラえもんの音楽をお楽しみいただきました。まさか高嶋さんがあんなにドラえもんをお好きだったとは! ドラえもんカラーの衣装でヴァイオリンを弾き、ジャイアンになりきって「おれはジャイアンさまだ!」を歌い、しずかちゃんが弾く恐怖のヴァイオリンをまねるなど大活躍。「きらきら星」といえば、ヴァイオリン入門者が最初に挑戦する曲として知られていますが、しずかちゃんはいつになったら上達するのでしょうか……。
「ドラえもん オープニング曲 メドレー」では、歴代のオープニング曲として「ドラえもんのうた」「ぼくドラえもん」「ハグしちゃお」「夢をかなえてドラえもん」が演奏されました。世代によって懐かしく感じる曲はそれぞれだと思いますが、やはり「ドラえもんのうた」になじんでいる方が多いのではないでしょうか。なにしろ昭和54年から平成17年までと、たいへん長期にわたって使われています。「ドラえもんのうた」は曲も印象的なんですよね。前奏で三連符の連続を聴くと「あ、ドラえもんだな」と思います。ちなみに、この曲、チャイコフスキーの交響曲第5番のフィナーレを思い出させるということで、クラシック音楽ファンには有名です。チャイコフスキーのフィナーレを指して、「ドラえもん」なんて呼ぶ人もいるほど。
こうしてテーマ曲を並べてみると、「ハグしちゃお」からは昭和のアニメソングとは曲調が違ってくるのを感じます。洗練されて、今風になってきているといえばいいのでしょうか。
最新作「映画ドラえもん のび太の月面探査記」からは、メインテーマ「異説バッジ」と平井大さんの歌による主題歌「THE GIFT」をお届けしました。こちらはかなり大人っぽい曲調になっています。時代とともに、ドラえもんの音楽もずいぶん変化していることを実感します。
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高嶋ちさ子のわがまま音楽会~ドラえもん編
劇場で生まれた名曲の音楽会
今週は劇場から誕生した名曲をお聴きいただきました。バレエ、ミュージカル、オペラ、オラトリオ。実にさまざまなジャンルの曲が並んでいますが、共通点は作品にストーリー性があるところ。
劇場の音楽では、先にストーリーがあって、そこに作曲家が場面場面にふさわしい音楽を作ることになります。一瞬で登場人物の心情が伝わるような明快さが求められるからなのでしょうか、この分野の名曲にはとてもキャッチーな曲が多いように感じます。
劇場から生まれた音楽が、劇から独立して単独でコンサートホールで演奏されることも珍しくありません。たとえば、今回お聴きいただいたワーグナーの歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕の前奏曲は、本来は5時間以上かかる長大なオペラのオープニングテーマとして作曲されたもの。しかし、オペラだけで演奏するのはもったいないほどの傑作ですので、オーケストラのコンサートでこの前奏曲だけを取り出して演奏することもよくあります。前奏曲だけでも一曲のなかに起承転結があって、十分に完結した音楽として鑑賞することが可能です。
オペラやミュージカル、バレエに比べると、オラトリオという言葉にはなじみの薄い方も多いでしょう。オラトリオとは主に宗教的あるいは道徳的な物語を扱った大規模な声楽曲を指す言葉。オペラとよく似ているのですが、演技や衣装はなく、合唱の活躍が目立つことが特徴です。舞台装置も衣装も不要ですので、オペラほど予算や準備期間がかからないことがオラトリオの大きな利点です。
オペラ作曲家として評判を呼んでいたヘンデルは、晩年にオラトリオの分野に力を注いでさらなる名声を築きました。「メサイア」はそんなオラトリオの大傑作。演技や衣装がなくても、音楽そのものが持つドラマが聴く人に深い感動を与えてくれます。
ギターの秘密を知る休日
今週はジャンルの垣根を超えたトップギタリストのみなさんをお招きしました。同じギターといっても、その演奏スタイルは三者三様。冒頭の「3ギターズ・名フレーズ・メドレー」で、クラシックの村治佳織さん、ジャズの渡辺香津美さん、ロックのROLLYさんが、そのジャンルを代表するような名曲、名フレーズを弾いてくれました。ジャンルの違いがよく伝わってきたのではないでしょうか。
村治さんが弾いた「アルハンブラの思い出」はトレモロ奏法の代名詞のような名曲。この哀愁の漂うトレモロは、まさにクラシック・ギターならではの魅力。渡辺香津美さんのジョン・コルトレーン「インプレッションズ」、ローリーさんのT.レックス「20センチュリーボーイ」などなど、それぞれに違ったカッコよさがありました。ギターって、どのジャンルであっても、憧れを感じさせる楽器だと思うんですよね。
ギターへの入り方にもそれぞれの分野の違いがよくあらわれていたと思います。村治さんは早くも3歳から、お父さんとの遊びの一環でギターを始めたといいますから、生まれながらのギタリストといった感があります。14歳で国際コンクールに優勝するという並外れた経験をお持ちながら、学校ではふつうの学生生活を送っていたというお話には、なんだかほっとしますね。
渡辺香津美さんのギターとの出会いは小学6年生から。アドリブの魅力を突きつめていくとジャズに到達したというお話には納得です。
ローリーさんは楽譜ではなく、耳から覚える習得法。「ギターは楽しくなったら弾けるようになる」は名言かもしれません。それにしてもローリーさん、もう55歳だと聞いてびっくりしました。それであの体型としなやかな体の動きを保っているとは驚異的です。
最後の「ムーン・リバー」では、普通はまず考えられないような異種ギター共演が実現! カラフルで情感豊かな「ムーン・リバー」でしたね。
ウィーン&ベルリン・フィル! スーパースター軍団の音楽会
今週は世界二大オーケストラの精鋭たちによる凄腕アンサンブル、フィルハーモニクス ウィーン=ベルリンの演奏をお届けしました。いやー、本当に楽しかったですよね。なによりプレーヤーたちが自ら楽しんでいる様子がよく伝わってきました。
フィルハーモニクス ウィーン=ベルリンの特徴のひとつはジャンルにこだわらないこと。彼らは普段、ウィーン・フィルやベルリン・フィルで正統派のクラシックの演奏をしているのですが、このアンサンブルではいろいろな音楽に挑戦します。
もうひとつの特徴はオリジナルのアレンジを聴かせてくれること。これが実に遊び心にあふれているんですよね。とりわけ「ボヘミアン・ラプソディ」は彼らの面目躍如。クイーンの原曲自体にバラードやオペラ、ハードロックなどの融合といったコンセプトがあるのですが、フィルハーモニクス ウィーン=ベルリンはこれをバッハ/グノー編曲の「アヴェ・マリア」で始めて、レゲエ風、アイリッシュ風とスタイルを変遷させてゆきました。アイディアがおもしろくて、しかも演奏のクォリティは抜群。最上質のエンタテインメントといっていいでしょう。
ウィーン・フィルとベルリン・フィルは同じドイツ語圏のオーケストラでありながら、対照的な性格を持っています。両方に所属したコンツさんの「ベルリン・フィルは短距離走者、ウィーン・フィルは長距離奏者」というたとえには、なるほどと膝を打ちました。ベルリン・フィルはコンサートのためのオーケストラですので、一回の公演は2時間前後。しっかりリハーサルをして、緻密な音楽を作りあげるのが得意なオーケストラです。一方、ウィーン・フィルのメンバーはウィーン国立歌劇場で連日長時間のオペラを演奏しなければいけません。歌手に合わせて、その場その場で臨機応変に音楽を作りあげる柔軟さが持ち味。フィルハーモニクス ウィーン=ベルリンはそんな両者の「いいとこどり」をしたアンサンブルといえるかもしれません。