今回はバラエティに富んだダンス・ミュージックの数々をテレビ朝日夏祭りサマーステーションのステージよりお届けいたしました。暑さを吹き飛ばすような迫力満点のステージでした。
どんなジャンルの音楽でもそうだと思うのですが、ダンスと音楽は切っても切れない関係にあります。民謡やポップ・ミュージックだけではなく、クラシック音楽でも名曲と呼ばれる音楽のほとんどはダンスのリズムと密接に結び付いています。バレエ音楽や舞曲はダンスそのものですし、交響曲にもメヌエットのようなダンスに由来する楽章が入っていたりします。バレエの分野で目にした言葉で「踊れない音楽はない」という一言がありますが、至言ではないでしょうか。
今回はエリック・ミヤシロさんがトランペットにアレンジにと大活躍でした。あの抜けるようなハイトーンは本当に爽快ですよね。
「南中ソーラン」と「エビカニクス」は今の子供たちにとっては大定番のダンス・ナンバー。「南中ソーラン」は小中学校を中心に、最近では保育園や幼稚園でも盛んに踊られています。ソーラン節がこんな形で子供たちの世界に定着するとは。世代を超えるって、こういうことなんでしょうね。「エビカニクス」はもっと下の年齢のお子さんの人気曲。年少さんでも踊れるシンプルで楽しい振付が人気の秘密でしょうか。もしかすると今の子供たちが最初に覚えるダンスが、この「エビカニクス」かもしれません。会場でもお子さんたちがいっしょに踊ってくれました。
西城秀樹さんが歌った「ヤングマン」は、1979年に社会現象といってもいいほどの大ヒットを記録しました。あの名曲を石丸さんが歌ってくれたことに感激です。この曲のヒットも「YMCA」の振付があってこそ。歌とダンスが一体になったときのパワーを改めて感じました。
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ダンス・ダンス・ダンスの音楽会
オーケストラの打楽器奏者を知る休日
今週はオーケストラの打楽器奏者に焦点を当てて、その奥深い世界をご紹介しました。奏者それぞれの工夫やこだわりが垣間見えて、新鮮な驚きがありましたよね。
打楽器奏者がほかの奏者と異なるのは、ひとりでたくさんの種類の楽器を演奏しなければならないところ。小太鼓や大太鼓、シンバル、マリンバなど、いろいろな楽器を演奏できなければいけません。しかも、福島喜裕さんが披露してくださったように、シンバルひとつとっても楽器によって特徴がさまざまに異なるというのですから驚きます。
さらに打楽器奏者は「なぜこれが打楽器なのか?」と思うような楽器まで受け持ちます。レスピーギの交響詩「ローマの松」における鳥笛をはじめ、ホイッスルやホースのように、叩かないタイプの楽器であっても、打楽器奏者が担当します。ルロイ・アンダーソンの「タイプライター」に登場する機械式タイプライターや、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」で使われる車のクラクションのように、本来は実用品だったものが特定の名曲のおかげで楽器になったという例もあります。
特定の曲との結びつきが強い打楽器といえば、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」の終楽章で登場するハンマーを挙げないわけにはいきません。大きな槌を振り下ろす様子は視覚的にも迫力満点。舞台に近い客席にはかなりの衝撃が伝わります。特に舞台奥側にも座席があるタイプのコンサートホールでは、ハンマーのすぐそばで聴いているお客さんが思わず身構えてしまうこともしばしば。知らずに聴いて、こんなにびっくりする交響曲もないでしょうね。
ちなみにこのマーラーの「悲劇的」ではハンマー以外にもグロッケンシュピール、カウベル、むち、鐘、シロフォン、シンバル、タムタム他の打楽器が用いられます。20世紀以降、オーケストラで使用される楽器の種類はぐんと増えました。打楽器奏者の役割は広がるばかりです。
変幻自在な作曲家サン=サーンスの音楽会
今週はフランスの作曲家サン=サーンスのバラエティに富んだ名曲をお楽しみいただきました。のびやかなメロディが心地よい「白鳥」から、エキゾチックな「バッカナール」まで、サン=サーンスの多面的な魅力が伝わったのではないでしょうか。
たいていの大作曲家は幼少時から並外れた楽才を示すものですが、3歳で作曲したというサン=サーンスの神童ぶりは際立っています。わずか10歳でピアノ協奏曲を演奏してデビューを果たし、アンコールには「ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲のうちからどれでも一曲を暗譜で演奏しましょう」と申し出たといいます。少しイヤミなくらいの才能ですよね。
これだけ才能に恵まれていたのですから、サン=サーンスがフランスの音楽界をリードする存在になったのは必然です。当時、フランスで交響曲や協奏曲といえば、もっぱらベートーヴェンなどドイツ音楽が演奏されていたのに対し、サン=サーンスは自ら交響曲や協奏曲を書いて、この分野にフランスの伝統を築きあげました。交響曲第3番「オルガン付き」を聴いた作曲家グノーは、サン=サーンスを「フランスのベートーヴェン」と呼びました。
幼い頃から神童と騒がれたのはモーツァルトと同じですが、サン=サーンスとモーツァルトには一点、大きな違いがあります。モーツァルトは35歳で人生を終えたのに対して、サン=サーンスは86歳まで長生きをしました。
おかげで、若い頃は時代をリードする存在だったサン=サーンスも、晩年には保守派の代表とみなされるようになります。サン=サーンス自身、若い世代の音楽には共感できなかったようで、新時代の旗手ドビュッシーを敵視したり、ストラヴィンスキーの「春の祭典」の初演に立ち会って作品を酷評したり。天才の割に神格化されなかったのは、そんな晩年のふるまいが影響したのかもしれません。
指揮者が愛する「新世界より」の音楽会
今週は気鋭の若手指揮者、川瀬賢太郎さんの大切な一曲、ドヴォルザークの「新世界より」をお届けいたしました。
新世界、すなわちアメリカへとドヴォルザークが旅立ったのは1892年のこと。アメリカにも本格的な音楽院が必要だと考えた富豪の夫人ジャネット・サーバーが、ニューヨークに音楽院を設立し、その院長にドヴォルザークを招いたのです。当初、ドヴォルザークはこの話には乗り気ではなかったようです。しかし、サーバー夫人が破格の報酬を申し出たこともあり、交渉を重ねた末にドヴォルザークはアメリカ行きを決意しました。
なにしろ19世紀のことですので、現代のようにジェット機で飛んでいくことはできません。ヨーロッパからアメリカへ、船で12日間を要する船旅でした。
アメリカに渡ったドヴォルザークは、黒人霊歌や先住民の音楽に出会い、大きな関心を寄せました。そんな音楽的な刺激から誕生したのが「新世界より」。第2楽章のノスタルジックなメロディはよく知られています。まるで民謡のように自然で滑らかなメロディですよね。これがアメリカ風と言われればそんな気もしますし、一方でドヴォルザークの故郷であるチェコ風と言われればそうなのかなとも思えます。日本では「遠き山に日は落ちて」(家路)といった歌詞で唱歌として愛唱されているように、日本語ともよくなじみます。アメリカでもGoin’ Homeの題で歌詞付きで出版されています。望郷の音楽というものは全世界共通なのかも?
ドヴォルザークは鉄道マニアとしても知られていました。蒸気機関車に魅せられて、駅を訪ねてはその様子を何時間も眺めたり、列車の時刻表や運転手の名前まで暗記していたといいます。川瀬さんが第4楽章冒頭を蒸気機関車が発進する音楽とおっしゃっていましたが、これには納得。徐々にスピード感を増していく様子が実にスリリングです。当時の最新テクノロジーへの憧れが反映されているのでしょうか。