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吹奏楽ならではの音楽会

投稿日:2017年04月30日 09:30

今週は「吹奏楽ならではの音楽会」。先週、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」ではオーケストラの基本的な編成をご紹介しましたが、今回は吹奏楽の編成に注目してみました。同じように大人数の楽器で編成されるアンサンブルですが、オーケストラと吹奏楽の違いを実感していただけたのではないでしょうか。
 とくに楽器の種類についていえば、ユーフォニアムとサクソフォンの役割の違いが大きいんですよね。これらは吹奏楽では重要な役割を果たす楽器であるのに対し、オーケストラではあまり使われない楽器です。どちらも先週のブリテンの「青少年のための管弦楽入門」には出番がありませんでした。
 でも、オーケストラでまったく使われないかといえばそんなことはありません。比較的歴史の新しい大編成の作品では、ときどき用いられることがあります。たとえば、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」やホルストの組曲「惑星」には、テナー・テューバと記されたパートがあり、これらはしばしばユーフォニアムで演奏されます。また、サクソフォンはラヴェルの「ボレロ」やビゼーの「アルルの女」などに使用されるほか、グラズノフのように「サクソフォン協奏曲」を書いた作曲家もいます。
 どちらも比較的歴史の新しい楽器ですので、もしベートーヴェンやモーツァルトの時代から楽器が存在していれば、オーケストラのなかに定位置を獲得していたかもしれません。
 オーケストラに親しんでいる方から見ると、吹奏楽でのクラリネット・セクションの人数の多さに驚かれるのではないでしょうか。番組内で、オーケストラでいう「第一ヴァイオリンの役割」を果たすと解説がありましたから、これは重責ですよね。
 吹奏楽とオーケストラ。似ているようでずいぶんと違いがあるものです。

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青少年のための管弦楽入門の音楽会

投稿日:2017年04月23日 09:30

20世紀イギリスを代表する作曲家といえば、まっさきに名前が挙がるのがベンジャミン・ブリテン。代表作にオペラ「ピーター・グライムズ」や「戦争レクイエム」、日本の皇紀2600年を祝うために委嘱された「シンフォニア・ダ・レクイエム」といった作品があります。これらは非常にシリアスな作風の曲ばかりですが、本日ご紹介した「青少年のための管弦楽入門」はとても親しみやすくて明快な作品です。オーケストラへのガイドとして、これほど世界中で親しまれている曲はないでしょう。
 この「青少年のための管弦楽入門」が非凡なのは、入門者へのガイドとして実用的な機能を持つ一方で、純粋に音楽作品として鑑賞可能な芸術性も兼ね備えているところ。大人向けの通常のコンサートのプログラムで演奏されることも珍しくありません。その場合は、本日の石丸さんのようなナレーション役を置かずに、オーケストラのみで演奏されます。ナレーションなしでも、ちゃんと曲として完成されているんですよね。各奏者のソロの妙技を堪能できて、スリリングでパワフル。ブリテンの巧みな手腕を感じます。
 番組中で池辺晋一郎さんがおっしゃっていたように、最大の聴きどころは終盤でフーガ主題に冒頭主題が重なる場面。あまりのカッコよさに鳥肌が立ちます。
 「青少年のための管弦楽入門」の冒頭主題は、イギリス・バロック期の作曲家、ヘンリー・パーセルの劇音楽からとられました。20世紀のブリテンから見れば、ずっと古い時代の先輩作曲家から主題を借りてきたということになります。どこか厳かで典雅な雰囲気が漂っています。
 このパーセルの主題はゲーム音楽にも登場します。ロール・プレイング・ゲームの古典的名作「ウィザードリィV」のオープニングテーマは、この主題を変形したものでした。ベテラン・ゲーマーの方にはご記憶の方もいらっしゃるのでは?

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世界が描いた日本の音楽会

投稿日:2017年04月17日 08:50

今週は日本を題材とした曲や、日本文化に触発された曲をお届けしました。
 この分野の代表作は、なんといってもプッチーニのオペラ「蝶々夫人」でしょう。舞台は長崎。中村恵理さんによるドラマティックな「ある晴れた日に」、すばらしかったですよね。アメリカ人の夫ピンカートンの帰りを信じて待つ蝶々さんの純朴な心情が歌われます。でも、ピンカートンは帰ってくるつもりなんてありません。彼にとって蝶々さんは日本で形ばかりの結婚式を挙げた遊び相手。本当の妻はアメリカにいます。それなのに蝶々さんは、夫が帰ってきたら「嬉しさのあまり死んでしまいそう」と歌っているのです。
 ピンカートンってとんでもない男ですよね。もちろん、この話は悲しい結末を迎えます。プッチーニはずいぶん日本女性を酷い目にあわせてくれるなと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、プッチーニのオペラでは「蝶々夫人」に限らず、いつもヒロインは過酷な運命にさらされます。こんなに「泣かせるオペラ」を書いた人はいません。
 今回番組で演奏された曲のほかにも、さまざまな作曲家たちが日本を題材に作品を書いています。オペラの世界では、マスカーニの「イリス」とギルバート&サリヴァンのオペレッタ「ミカド」が日本を舞台にしています。「イリス」では大阪とか京都という名前の登場人物が出て来たり、「ミカド」では日本の都がティティプーという不思議な名前だったり、私たちから見ると珍妙なところもありますが、なにしろ19世紀の作品ですからしょうがありません。
 20世紀にも日本を題材とした作品がいくつも書かれています。ストラヴィンスキーは日本の和歌に曲を付けた「日本の3つの抒情詩」を作曲しました。また、メシアンには「7つの俳諧」という曲があります。これはメシアンが来日して、奈良や軽井沢を訪れた際の印象を音楽で表現したもの。作曲は1962年。この頃になると、もう日本ははるか彼方のミステリアスな国ではなく、実際に足を運べる国になっていたわけです。

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ディズニーを支える作曲家の音楽会

投稿日:2017年04月09日 09:30

ディズニー映画は名曲の宝庫。初期から現代にいたるまで、途切れることなく名曲が生み出されているのがすごいですよね。今週の「ディズニーを支える作曲家の音楽会」では、そんなディズニー映画の作曲家に焦点を合わせて、名曲をお楽しみいただきました。
 今のディズニーを語るうえで欠かせない作曲家がアラン・メンケン。「リトル・マーメイド」以来、「美女と野獣」「塔の上のラプンツェル」「アラジン」など、次々と名曲を書いたメロディメーカーです。
 メンケンは1949年、ニューヨーク生まれ。歯科医の父親のもとに生まれ、自らも歯医者さんになるべくニューヨーク大学に入学したものの、在学中から音楽活動を始め、音楽の学位をとって卒業しました。両親ともにブロードウェイ・ミュージカルの熱心な愛好者だったといいますから、音楽への道はメンケンにとって自然な選択だったのかもしれません。
 メンケン以前にも、多数の作曲家たちがディズニーの歴史を彩ってきました。「ハイ・ホー」を作曲したフランク・チャーチルもそのひとり。1930年頃にディズニースタジオに入社して活躍しました。「いつか王子様が」や「狼なんか怖くない」といった曲もよく知られています。
 一方、「ビビディ・バビディ・ブー」はディズニー外部の才能から誕生した名曲といえるでしょう。ウォルト・ディズニーは「シンデレラ」の作曲家を探すためにニューヨークに出かけたところ、ラジオで当時人気だった「チババ・チババ」を耳にします。ディズニーはこの曲を作ったソングライター、アル・ホフマン、マック・デイヴィット、ジェリー・リヴィングストンに会って曲を依頼しました。もしかすると、ウォルトは「チババ・チババ」のような曲を書いてほしいと頼んだのかもしれません。というのも、「ビビディ・バビディ・ブー」と「チババ・チババ」にはよく似た雰囲気があるんですよね。

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劇場支配人の音楽会

投稿日:2017年04月02日 09:30

名音楽家あるところに名プロデューサーあり。才人にはしばしばその真価を見抜いて世に知らしめてくれるパートナーがそばにいるもの。今週は「劇場支配人の音楽会」。新たに司会に就任した石丸幹二さんが、これからの番組で魅力あふれる作品やアーティストを見出していきたいという思いを込めて、初回はこのテーマでお送りいたしました。
 歴史に名を残した芸術プロデューサーとして、まっさきに名前が挙がるのがディアギレフでしょう。ディアギレフが主宰したロシア・バレエ団(バレエ・リュス)は当代随一の画家や音楽家も巻き込みながら、パリで大成功を収めました。ディアギレフはサンクトペテルブルクで演奏されたストラヴィンスキーの最初期の小作品「花火」「幻想的スケルツォ」を聴いて感銘を受け、彼にロシア民話の火の鳥の題材とした大規模なバレエ音楽を書くように依頼します。「火の鳥」作曲時のストラヴィンスキーは28歳。この若者がその後20世紀音楽の中心的人物として次々と傑作を残すことになったわけです。まさしく慧眼ですね。
 あのザルツブルク音楽祭の設立にもかかわったマックス・ラインハルトも名プロデューサーのひとり。ヨーロッパで早熟の天才として知られていたコルンゴルトをハリウッドに招き入れました。
 コルンゴルトは近年、再評価が進んでいる作曲家です。オペラ「死の都」が2014年に新国立劇場で上演されて話題を呼んだのは記憶に新しいところ。また、番組で小林美樹さんがすばらしいソロを披露してくれたヴァイオリン協奏曲は、この10年ほどの間に演奏頻度がぐっと高まってきているように感じます。別の言い方をすれば、この曲をレパートリーとするヴァイオリニストが増えてきたといえるでしょうか。
 今回は第3楽章が演奏されましたが、機会があればぜひ全曲を聴いてみてください。むせかえるような濃密なロマンとみずみずしいポエジーにあふれた大傑作だと思います。

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